表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
門番、魔王軍と交渉する〜ハズレジョブでも、話を聞く奴が世界を動かす〜  作者: ハル
第23層との交渉

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

102/171

第102話「外の声」

翌日、カーラに状況を伝えた。


「外部信号というものを感知した。外の脅威が、封印層に触れている」


 カーラが「触れている、とはどういう意味ですか」と聞いた。


「物理的に押しているわけではない。意識がこちらを向いている、という感じだ。封印が壁なら——向こうが壁に手を当てて、中の音を聞こうとしている」


「……攻撃ではなく」


「今のところは。でも、それが続けばやがて封印が削れる」


「それは今も起きていますか」


「今は安定している。俺が呼びかけたあと、一時的に止まった」


 カーラが「呼びかけた」という言葉を繰り返した。


「どういう意味ですか」


「スキル越しに「聞こえるか」と送った。返事はなかったが、外部信号が止まった。向こうが気づいたと思う」


「それは——危険ではないですか」


「わからない」


「わからないで、やったんですか」


「聞かないと損だろ」


 カーラが額に手を当てた。「あなたは本当に——」と言いかけて止めた。



 



 夜、ヴォルトに接続した。


「昨日、封印強度が一時的に安定した。原因の分析はできたか」


「——少し考えていた。外の脅威は、封印の「内側から何かが動いた」ことを感じたのだと思う」


「それが珍しかった、ということか」


「——そうだ。三百年、内側は静かだった。封印されたものが動かないから、外も押すだけで応答がなかった。でもあなたが呼びかけた。外の脅威は、初めて「内側から声が来た」と感じたはずだ」


「反応するかもしれない」


「——反応するかどうかは、わからない。ただ——」


 ヴォルトが少し間を置いた。


「——あなたが「聞こえるか」と送ったとき、封印の向こうで何かが止まった。私も感じた」


「止まった、というのは」


「——押すのを止めた。一瞬だけ。でも、止まった。それは三百年で初めてのことだ」


 俺はその言葉を聞いた。


「三百年、一度も止まらなかった」


「——止まる理由がなかった。向こうも、ただ「在る」だけだったのかもしれない」


「在る、とは」


「——存在している。意思があるかどうかも、私には確認できていなかった。でも——止まった。止めるという判断をした何かがいる」



 



 ゴブがそれを聞いていた。


「知性体、ということか」


「——知性体だと思う。ただし——」


「ただし」


「——話が通じるかどうかは、別問題だ。知性があっても、交渉を拒む知性体はいる」


「ヴォルトたちも、最初はそうだったか」


 少し沈黙があった。


「——そうだった。私も最初、「内側の者に話す必要はない」と思っていた。でもレンが来た。聞いた。それで変わった」


「じゃあ——同じことが、できるかもしれない」


「——できるかもしれない。あるいは——できないかもしれない。ただ」


「ただ」


「——あなたが「聞こえるか」と言ったとき、封印の向こうで何かが止まった。その事実は残る」


 ゴブが俺を見た。


「調停者。次はどうする」


「もう少し近くから、呼びかける」


「危なくないか」


「わからない。でも——距離が遠すぎると、声が届かない」


「どれくらい近づく」


「封印の壁まで」


 ゴブがしばらく俺を見ていた。


「……俺も行く」


「一人で大丈夫だ」


「俺が大丈夫と思えないから行く。それは俺が決める」


 俺は「まあ、そうだな」と言った。



 



 翌日の出発前、カイルから通信が入った。


「レン、第四迷宮でも同じものが出た」


「外部信号か」


「俺には聞こえなかった。でもスキル——カーラから借りた測定器が反応した。第四迷宮の封印層でも、外から何かが触れているという数値が出た」


「タイミングはいつだ」


「今日の朝——お前が呼びかけた翌日だ」


 俺は少し考えた。


「一つではないかもしれない」


「何が」


「外の脅威が。複数いるのか、移動したのか——わからない。でも複数の迷宮に同時に触れているなら、一体ではない」


「……それはまずいのか」


「わからない。でも——情報が増えた。聞ける相手が増えるかもしれない」


 カイルが「お前はそういうやつだな」と言った。


「どういう意味だ」


「まずいかもしれないのに、可能性の方に目が行く」


「まずいかどうかは、聞いてみないとわからない」


「……まあ、そうだな」


 それはゴブがよく言う言葉だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ