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門番、魔王軍と交渉する〜ハズレジョブでも、話を聞く奴が世界を動かす〜  作者: ハル
第23層との交渉

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第101話「封印層への道」

道の中は、暗かった。


 入口から数十歩で、外の光が届かなくなった。スキルが照明代わりになる——というわけではないが、状態表示が灯りのように空中に浮かんでいた。


【迷宮管理Lv.8:封印層接続——確認中】


「暗い」とゴブが言った。


「そうだな」


「前に来たときとは違う気がする」


「通路設計が通ったから、構造が変わった部分があるかもしれない」


「いい方向に変わったのか」


「わからない。ただ——」


 俺はスキルの数値を見た。


【第七迷宮 現在状態】

封印強度:41%(微増)

封印消失まで:推定不明


「封印強度が上がっている。わずかだが」


「わずかって、どれくらいだ」


「昨日は39%だった。二ポイント上がっている」


「それは、通路設計のせいか」


「可能性がある。当事者全員の合意が、封印の安定に影響しているかもしれない」


 ゴブが「ふん」と言った。感想とも疑問ともつかない声だった。



 



 迷宮の内部は、外から見るより広かった。


 十五層まで来たことはある。でも今日はそれより深く行く。


 スキルが示す方向に従って歩いた。二十三層——ヴォルトたちがいる層——ではなく、もっと下だ。


 Lv.8の新機能が、「封印層」への経路を示し始めていた。


「どこまで行くんだ」とゴブが聞いた。


「スキルが示す限界まで」


「限界で何がある」


「わからない。でも——」


 俺は少し止まった。


 何かを感じた。正確には「聞こえた」という感覚に近い。音ではない。でも、何かが届いた気がした。


「今、何か感じたか」


「感じた」とゴブが言った。「なんだ、これ」


「俺もわからない。スキルが何か拾っている」


【迷宮管理Lv.8:封印層——外部信号を検知。性質:不明】


「外部信号」


「スキルにそう出ている。外から、何かが来ている」


 ゴブが俺の横に並んだ。


「調停者」


「何だ」


「これが——外の脅威か」


「まだわからない。でも——」


 俺はスキルに聞いた。応答はなかった。ただ、数値が動いた。


【封印強度:41%→40%(低下中)】


「また下がった」


「何かが押してるのか」


「押している——というより、触れている。そんな感じだ」



 



 もう少し下りた。


 ヴォルトに接続した。


「今、封印層の近くにいる」


「——感じている。来ているのか」


「来ている。外部信号というものを感じた。これが、外の脅威か」


「——そうだ。それが、ずっと向こうにいる」


「距離は」


「——遠い。でも触れている。手が届く距離ではないが——意識はこちらに向いている」


「意識、か」


「——知性体だ。ただし——話を聞く種族ではない、と私たちは思っていた」


「思っていた、という過去形は」


 ヴォルトが少し黙った。


「——あなたが封印の外を感知できるなら——もしかしたら、向こうも感じているかもしれない」


「向こうも、俺を」


「——そうだ。今まで、封印の外を感じた「内側の者」はいなかった。あなたが初めてだ」


 俺はその言葉を聞いた。


「つまり——今まで誰も、外に呼びかけなかった、ということか」


「——呼びかける手段がなかった」


「俺には、あるかもしれない」


 ゴブが「調停者」と言った。念を押すような声だった。


「わかってる。無茶はしない」


「無茶の定義が俺と違う気がするんだが」


「聞いてみるだけだ。聞かないと損だろ」


 ゴブがため息をついた。



 



 俺はスキルを使って、外部信号に向かって、一言だけ送った。


「聞こえるか」


 返事はなかった。


 でも——封印強度の数値が、一瞬止まった。


【封印強度:40%(変動停止・一時)】


「止まった」とゴブが言った。


「ああ」


「何かに気づいたのか、向こうは」


「わからない。でも——」


 数値がまた動き始めた。今度は、下がらなかった。


【封印強度:40%(安定)】


「安定した?」


「した」とゴブが言った。「それは——いいことか」


「悪くない」


 俺はスキルの表示を見つめた。


「次は——もう少し、近づいてみる」

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