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12/15

互いの思惑

二人はそれぞれ決意します


12話です

「それって……」

「まだ正確には分からないんだけどね……。冗談交じりで父さんに訊いてみたの。『私に双子の姉妹がいないよね』って。そしたら顔が止まって」

「……そうだったのか」

「そして問い詰めても答えないから怒って出てきちゃった」

「……」

「優しくて真っ直ぐだと信じてたのに……今まで嘘ついてたなんて……信じらんない……」


 彼女はポタポタと涙を流す。何をどう言えば良いのだろうか。慰めの言葉が浮かばない。


「……おじさんにも何か訳があったんじゃないかな?」

「それでも嘘は駄目よ!」

「……」


 これ以上僕は言葉が出ず、愛衣はただ泣くだけだった。

 そして夕方、おじさんと話をする為に僕は日野家に向かう。今日は日曜日だから家に居るはずだ。

 ピンポーン。


「はい」

「宮田です」

「……どうぞ」


 家に入った。


「うちの娘が世話をかけて申し訳ない」

「……いえ」


 いつも優しいおじさんの面影はなく、少しやつれて暗くなっていた。僕達はダイニングに行き、そこで対座する。


「で、話は……」

「愛衣の姉妹の話です」

「……やはりその話か。愛衣から聞いたのだね」

「いえ、僕が偶々麻衣さんに会ったんです」

「! ……そうだったのか」

「はい……」

「愛衣と麻衣はね、もう分かってると思うが双子の姉妹なんだよ」

「……」

「麻衣が姉で、愛衣が妹だ」

「……やはりそうだったんですね」

「あぁ」

「……ではどうして愛衣に一人っ子だと言う嘘を?」

「それは、だね……」


 僕は帰りしな、彼の言葉を反芻する。


『……娘は自分に姉妹がいると分かったら、会いたいと思っただろう。それを言われるのが嫌だった。離婚したのに態々妻に会おうとは思わなかった、いやそうじゃないな……。私は妻に未練があったんだ。それらを断ち切る為に愛衣に嘘をついたんだ……。私のエゴの為に娘に嘘をついた。私の責任だ』


 彼は少し後悔した様に俯いて言っていた。


『これは自分の言葉で言うから愛衣には黙っといてくれないか?』


 僕はこれ以上何も言わず出て行った。


「ただいまー」


 そしたらぱたぱたと明るい顔で愛衣が来る。


「お帰りーっ」


 エプロン姿の彼女にドキッとする。初々しい新妻みたいで何かむず痒い。


「大丈夫か?」

「うん。なんか泣いたらすっきりしちゃった」

「そうか……」

「どこ行ってたの?」

「え? あぁそれは……」


──これは自分の言葉で言うから愛衣には黙っといてくれないか?


「ちょっと近くをぶらぶら歩いてただけだ」

「ふーん、そ。そろそろ料理出来るから待っててねっ」


 嬉しそうに奥に行く彼女の後ろ姿に僕は少し切なく感じた。

 ごはんを食べ終わり、部屋でくつろいでいると、麻衣ちゃんからメッセージが来る。


『電話良いかな?』

『大丈夫だよーっ』


 そして彼女から電話がかかる。初めての電話でどきどきする。


「はい、もしもし?」

『もしもし晴君?』


 晴君?? 


「は、晴君!?」

『あ、ごめん。嫌だった??』

「嫌じゃないよ?!」


 晴君来たーーーーーーー!!! いやっほーい!!


「で、どうしたんだい!?」

『お母さんに聞いたの。日野家のこと』

「……」


 まぁ気になる話だよな。


「……で、どうだった?」

『それが……協議離婚したくらいしか教えてくれなくて』

「そ……か」

『……うん』

「……」

『……』

「気になるかい? 日野家のこと」

『え? まぁ、知らない父だけど自分の父方だからね』

「そ……か」

『……うん』

「お父さんに会ってみたい?」

『え?』


 僕ははっとする。な、何を言ってるんだ。僕はなに余計なことを……。


『会えるの!?』


 彼女らしくない言い方だった。まるで愛衣みたいなテンションになっていた。


「あ、会いたければ、会えることもないが……」

『そ、そっか……知ってるんだ』

「家族ぐるみで昔からの付き合いだから」

『……ふーん』


 ちょっとつんけんした声になった。


『分かったわ。会う予定を決めましょう。大体いつごろいるの?』

「大体夜と休日は家にいるかな?」

『そ、分かったわ。次の休みにするわ』

「そうか……」

『……ところでさ』

「?」

『愛衣さんは元気にしてる?』

「う、うん元気だよー」


 愛衣がうちに家出して泊まっているのをなんとしてもバレないようにしないと。


『……なんか変な喋りになってない?』

「なってないっ、なってない」


 なんか鋭いなー。どうしたんだろうか。


『もしかして……』

「!?」

『元気ないの!?』

「そ、そんなことない。元気だよっ」


 家出するくらいは元気だよっ。


『そっか……、それなら良かったわ……』


 何か姉らしさを感じほっこりした。


『それでさもし良かったら、次の日の土曜日に……』

「晴樹ーっ。何独り言言ってるの?」

「!?」

『!?』

「……こんな時間に誰と電話してるの?」

「あ、いや別に……」

『ちょっとなんでこの時間に愛衣さんがいるの!? 今二人はどこにいるの!?』


 二人に挟まれた。なんかやばいっ!


「あの、また用件は次の日に連絡しますので、またっ」

『あ、ちょっ、晴く……』


 僕は無慈悲に電話を切った。


「で、どうした愛衣? ノックくらいしてほし……」

「話があるの」

「?」

「もう一度麻衣さんに会わせてくれないかしら?」

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