第3日
第3日
暗い。まだ暗い。時刻を確認すると、日が昇るまでまだまだ時間がある。もう1回布団に入り寝ようとした。その時だった。ヒュー……パン!大きな音がした。この音は確か、信号弾だったような。信号弾っ!ちょっと待て、信号弾。つまり人がいる。しかも、近い!起きたての回らない頭でさえそれを理解する。音に反応したのか、相棒も起きたようだ。「ふっあー……なんの音?」「……信号弾」自分でもあまりここに人がいることを信じきれていない。「つまり、人ってこと?」「そうなる」人がいるならば気になる、もし何かあれば助ける必要もある。助け合うのが人間という生き物の素晴らしい点だ。海波を担ぎ、寝巻きのまま駆け出す。急がなければ。寝ていた階から一瞬にして階段を駆け下りる。おっと、危ない。転びかけるところだった。それに続いて相棒も駆け出す。さすが元犬だ、足は速い。外に出るが、暗い。どこだ、どこにいる。はやる気持ちを抑えながら辺りを見渡す。ええいやけくそだ。海波を降ろし弾を込める。ドン!上に向かって打ち上げた。ギュー…パンっ!照明弾だ。一時的だが、夜間でさえ最高の視界が得られる。「向こうっ、右見て右!」言われた通り右を見ると人がいる。奴らに襲われている。しかも2匹に囲まれている、最悪の状況だ。持っていた海波をそのまま向ける。弾が入っていることを確認して、引き金に指をかける。ひとつ間違えたら人に当たるが、私がこの距離で外すはずがない。ドドンっ。大きな銃声が2つ、連続して聞こえ、しばらくの残響の後に消え去った。照明弾もちょうど尽きたため、もう1発打ち上げる。「おいっ、大丈夫か?」返事がない。死んだのか?いやそんなはずはない。
「あの人を調べて」
「わ、わかったよ」近くで銃声に驚いていた相棒に声をかける。相棒が前かがみになって1分も経たないうちに情報が入った。「まだ…生きてる、気絶してるだけ」ふぅ、一安心だ。大きくため息をついた私は、その後元いた雑居ビルの3階にこの人を連れ帰った。
「自分が生きている以上、他の人にも迷惑をかけてはダメ。人が困っていたら助けてあげて」その言葉を何度聞いただろうか。懐かしい父の言葉だ。いや本当に懐かしい。
「う、うぅ」先程助けた人が気がついたようだ。「う、うん?」疑問符を浮かべるのも無理はない。さっきまで襲われていたはずなのに急に知らない場所にいるのだから。
「き、君は誰だい?」
「私はアトラ、こっちは相棒の…」と言ったところで遮られた。
「カウツだよ!」もう、私が喋ろうと思ったのに。
「あ、アトラくん?さん?」
「どちらでも大丈夫、呼び捨てでもいい」
「じゃあアトラ、ここはどこなんだ?」
「ここは、今私が住んでいる雑居ビルだった場所だ、まぁ今日のうちに出ていくが」そうだうかうかしてはいられない、今日のうちにも奴らが来る可能性はある。奴らは遅いが待ってるとすぐ来る。だが戦闘時になるとそれが時速100キロメートルまで跳ね上がる。とんでもない速度だ。しかし裏を返せば奴らに会わない限りは逃げ続けられる。奴らは能力に反応する。能力を持っていればどこまででも追いかけてくる。私は集団の奴らに襲われた。100は超えていた。戦うことをやめ、逃げることにした。しかも奴らは一度追いかけ始めたら目標が死ぬか自分が死ぬまで追いかけ続ける、他の動物を途中で追いかけ始めるようなことはしない。今の生活が始まったわけだ。「今日のうちに出ていく…か」助けた人はどこか寂しげに呟いた。
「…ついてきますか?」
「いや私がいても邪魔なだけだ、幸い食料なども持っている」自分のリュックを手で叩きながら自慢げに言った。
「そう…ですか、ではまたいつか会えたら」
「またいつか会えたら」私はそう言った人を後にし、また歩き始めた。
「あの人、死なないといいね」10分後、歩き続けた相棒は私にそう言った。「そうだね、私たちも…生きよう」私は力強く自分に言い聞かせるようにそう言った。
ただひたすらに歩く。時々休む時があるがずっと歩き続ける。限界だ。私は奴らを置いてけぼりにするように歩いた。何時間歩いたかもうわからなくなった。「ねぇねぇってば!」相棒のその声にやっと気づけた。
「歩きすぎだよ、そろそろ日が暮れちゃうよ」確かにもう日が暮れそうだった。
「…休むか、近くになんかない?」相棒はなんの返事もせずに前かがみになる。
「あったよ、すぐ近くに」その言葉通りすぐ近くに泊まれそうな場所があった。そのまま安全を確認すると、私はご飯も食べずにそのまま昏倒するように眠りについた。
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