第4日
第4日
「いつまで寝てんのさ!」ゴンッ。僕はアトラのげんこつで目が覚めた。もうっ、昨日ご飯を食べてないからお腹がすいて仕方がないのに。外に目をやると、もうすでに明るくなっている。次に鼻に意識を向けると、いいにおいが漂っている。あ、ご飯は作ってくれたんだ。少し上から目線でそう思う。
「ご飯食べるよ。いらないならいらないって言って」アトラは少し意地悪そうに言う。
「食べるに決まってるって」また僕たちの朝が始まった。
「今日のご予定は?」僕は少しの期待を込めて言ってみた。
「う〜ん、ここの探索と、あとご飯探し」あ、いつも通りだ。今日は何か面白いことがあるといいな。
今いる場所は昔、一軒家だったらしい。少なくとも自分の能力はそう言っている。
「ここにご飯が残ってたら奇跡だよ」そうだ。普通、一軒家は非常食などを残して出ていくことはない。でも、たまに出ていく前に「アレ」の影響で先に住民がいなくなるときがある。その場合は、ある可能性が高まる。残念ながら、昨日はここにご飯があるかまでは調べていないし、ある可能性がないとは言い切れなかった。能力を使うのは面倒くさいし。
「よしっ、準備完了!」朝の支度を終えたアトラがやってきた。
普通、アトラは一番下の階か、自分がいる一階下から探索し始める。理由は特にないらしい。いまは安全のため二階にいる。つまり、一階から探索し始めるだろう。腐りかけた階段を慎重に降りた後、一番近い部屋に向かう。どうやら元々リビングだったみたいだ。
「え〜、椅子が4つにテーブルが1つ、合計5600円となります」僕は少しふざけて家具店の店員さんのまねをした。
「それなら椅子を一つ返却で」アトラもそれに乗ってふざける。こういう時間は僕の楽しみの一つだ。
ふと近くにあったタンスを見ると、非常用の袋が乗っている。やった!
「あれ見て、あれ」近くのアトラに声をかけると、振り向いて袋を取ってくれた。
「これ、ちょっと重いな。たぶん入ってる」
「それ、僕のおかげ。感謝して」たぶん僕が見落としていてもアトラが見つけてくれるだろうけど、僕は自慢げに言う。
「でも、開けるのは後でのお楽しみ」アトラはそう言い、僕もそれに賛同した。お楽しみはすぐなくなったらもったいないからね。
リビングを探索し尽くし、次は隣の部屋に向かう。ここはなんの部屋だろう? 物悲しげで、まるで引っ越した後の自分の家のようだ。引っ越しはあり得ない。なぜなら、先ほどのリビングには家具が残っていた。となると考えられるのは一つ、「アレ」だ。「アレ」の影響として物体の消滅が挙げられる。どこに消えたのかすらまったくわからず、ただなくなるだけだ。そのほとんどが辺り一帯の消滅で、このような場所を何度も目撃したことがあった。もっとも被害がひどかったのが、ビルの消滅なんてのもあった。あれは本当に悲惨だった。何かを訴えるように、そのすべてが更地になっていたのだから。アトラは何もないこの部屋を後にし、別の部屋に向かう。次はキッチンのようだ。キッチンには冷蔵庫があるため、非常用袋すら置いていったこの家の住民が、冷蔵庫の中身を持ち出すはずがない。絶対に何か詰まっているだろうが、それが食べられる可能性は低い。普通は電気が止まっているものだから。アトラは冷蔵庫を開けるかどうかを少し迷っているらしい。
「これ、開けたほうがいい?」案の定、僕に聞いてきた。経験上、これは絶対に開けないほうがいい。腐ってるもん。
「絶対だめ」僕は即答した。
それからしばらく家を探索したが、これといったものは見つからなかった。
僕らは2階に戻り、先ほど見つけた非常用袋を開いて顔を輝かせる。中には二人(といっても一人と一匹なのだが)が4日は食べられる缶詰が入っていたからだ。確かによく考えれば、一人三日分の食料が入っているとして、椅子が4つあったことから4人程度の家族が生き延びられる分は、二人に換算して約6日分。その他の道具もあるので、4日分というのはもっともである。缶詰以外にも四日分の水、それに、どこぞの100円均一ショップで売っていたであろうサバイバルナイフ、懐中電灯とその電池が転がっていた。サバイバルナイフはもう十分といっていいほどあるため置いていくが、その他の荷物は袋ごと持っていくことにしよう。
「…チェ、せっかくなら海波用の銃弾もあればよかったのに」アトラはそんな身も蓋もないことを言ったが、一応うれしそうではあった。
「そんなのあるわけないじゃん」一応、僕はアトラの冗談に付き合ってあげる。僕としては、あんな音はもう聞きたくないから弾切れがうれしいんだけど。だからといって本当に弾切れを起こされたら一番困るのも僕だ。アトラはその圧倒的戦闘能力(というか、あれは戦闘狂に等しいが)のおかげで助かっているが、僕に関してはそんな能力はゼロなため、アトラの援護がなければ、いまごろこの世界の住民ではなかっただろう。そのため僕は思ったことを言うのをやめた。言霊って怖いし。
とかなんとかの会話を楽しんでいると、外はもう日が暮れている。アトラは自前の調理用バーナーを取り出し、上に鍋を置く。僕の楽しみの一つが始まった。今日はマグロの缶詰とトマト、デザートにパイナップル。贅沢は精神を保つのにいいらしい。アトラは手際よくトマトを鍋に放り投げ、その間にもマグロを開けて盛り付ける。トマトが十分煮えたら完成だ。僕らはひとときの安らぎを感じ、そのまま昨日の部屋で眠った。
楽しみにしてくださっていた読者様へごめんなさい!投稿が大変遅れてしまいましたこれからこういった事があっても暖かな目で見守ってくださると光栄です。




