第2日
第2日
崩壊した部分の隙間から日が差し込み、自分の姿を完全に照らし出している。被っていた布団を這い出て朝ごはんの準備をする。昨日、朝ごはんを食べられていないので今日はしっかり食べたい。「今日から2日はここにいてもいいかな」誰にも聞こえないような声で呟く。相棒はまだ寝ている。朝ごはんができるまで少し時間があるので、自分がいる階を見てみることにした。まずは隣の部屋だ。「うーん、何もないかな」棚がひとつと机がひとつ、なんの部屋だったのだろうか。よく見ると棚の一番上に何か置いてあるが、この身長127cmの身体じゃ届きそうにない。机を動かし、棚に寄せる。これに乗れば届きそうだ。「うーん……届いたっ!」掴んだものはだいぶ重い。机から降りて見てみるとただのレンチである。なんだ、と思った瞬間。ガゴンッ!何かが落ちる音と「ギャン!」という叫び声がした。相棒がいる部屋からだ。急ぎ足で戻ってみると、相棒がいたはずの場所の床が完全に抜け落ちていた。「うぅ、痛いようぅぅ」そりゃそうだ、ここから下の階まで2mはある。相棒がただの柴犬ならば大怪我をしている所だ。
「……何してるの、自分で上がってきな」
「あっ、酷いっ」見るとあまり痛いわけではなさそうだ。心配する必要もない。と、会話をしていたら鍋が沸騰している。「あ、やば」と、鍋の方に向かう。それが見捨てられたように見えたのか「僕を置いてくなぁぁー!」とても悲惨な声でそう叫んでいた。
しっかり朝ごはんを取ったあとは、このビルの探索くらいしかやることがない。食料はしっかりあるので本当にそれくらいしかない。「今からまた探索?」ご飯をたらふく食べてご機嫌な相棒は、大して気にも留めないようにそう言った。「そうだよ、今度はこの部屋の2つ先の部屋かな?だいぶ広かったような」「探索のしがいがあるね」相棒がそう言っている間にライフルを担ぐ。「それの名前なんだっけ?さいは?」「さいはじゃなくて、海波」海波とはこのライフルの名前だ。理由は特にないが、それが私にとってしっくりくる。「行くよ、探索がまだ済んでない」
相棒によると、5階建ての雑居ビルだったそうだ。横は狭いが縦に長い。横なんかはあって7mだが縦は20mはある。寝ていたのが奴らの襲撃に備えて3階だったので、探索する場所は下に2階分、上に2階分だ。まずはさっき相棒が落ちた1階下だ。「ここ、暗いよ。奴らがいたらどうするの?」チャキ、その音で相棒は理解したらしい。海波を触った音だ。私の海波は相棒よりも長い付き合いだ。アレが起きた時すでに手元にあった。その時だった、ガタン。私は一瞬また相棒が落ちたのかと思った。だがすぐに違う思考に陥る。いた。すぐそこにいたのだ。いや、元々いたわけではない。上を見てわかるようにそれは落ちてきたのだ。私はすぐにその場から後退し、海波を背中から取り出す。あぁ、この感覚だ。戦闘は好きではないが、一番は平和だ。平和があるから戦闘があり、戦闘がありから平和が大事に思える。銃口を奴に合わせる。思わず顔がほころび、にやけてくる。これで終わりだ!その瞬間だった……ドン!銃声が辺りに充満する。硝煙の匂いとともに、安心感が広がる。私が放つ弾はほかのものとは違う。ただの鉛玉ではない。奴は1匹だった、これで終わりだ。少しの時間が経ち、怯えた相棒が出てくる。「終わ……った?」その声は恐怖でいっぱいだ。
「そ、そ、その音……その音苦手なんだってぇぇえええ!」
「いつも聞いてるくせにまだ慣れないの?」少し蔑むように言った。
「むぅ、わかってるくせに」やっぱり相棒は面白い。これが面白くしようと言っているわけではないのでもっと面白い。旅の相棒としては最高だ。
この世界には能力が存在する。だがそれもアレの影響だ。そういえば昔、アレが起こる前、能力を取り扱った漫画やアニメがよく流行っていたような。小さい頃からテレビなんか見ていなかった私は学校で友達が話していたことを少し知ってるだけだ。能力だが、例えば私の相棒は”識別”だ。そのものの状態、場所、用途などの情報がすぐわかる。これが能力だ。どこかで聞いた限りだと、その人の好きな物や特技に準ずるらしい。アレが起きて生きていた人間は全ておのおのの能力を獲得した。生き残った者への特権とも言えるか。そうやって考えていると相棒が話しかけてきた。
「僕疲れたよ、もうご飯じゃない?」
「あ、」完全に忘れていた。カバンから時計をまさぐり出し、時刻を確認する。いつもご飯を食べる時刻を大幅に超えている。探索を済ませていたらいつの間にか時間が経っていたようだった。「何もなし……か、」探索の結果、収穫は何もなかった。何か面倒事がなければ、それでもいい。
この時間はとても好きだ。鍋に入れたものがしっかり料理されている感覚、とてもいい。元々自炊はしなかったがこの状況下では否応なしに自炊を要求される。感慨深さに浸っているといつもの相棒の声が聞こえてきた。「できたー?」どこか無邪気な子供のような声。
「ちょっとくらいは待てないの?」このダメ犬と言いかけたが、危ない。また美味しいものを見つけるまで口をきいてくれなくなるところだった。そうこうしてるうちに料理が完成し、今日のところはあまり心配なく寝ることにした。




