第一日
第1日 「あー、よく寝た」私はまだ朝焼けも見られないような時間帯に目を覚ます。寝起きで頭がよく回らない中、枕元を少しまさぐっているとモフモフの物体に触れた。「ぎゃん!」やってしまった。少し強く握ってしまったみたいだ。「ごめんよ」少し反省の意を込めて、相棒にそう言った。もうここで寝続けて3日目だ。もし奴らが予想より早ければ、そろそろやってきてもおかしくはない。
「そろそろここを離れようよ」少し心配になったのか、私の相棒がそう尋ねてくる。その言葉を聞き流しながら身支度をする。私の相棒は少し心配性なのだ。「大丈夫だって。あそこからならここまでに4日はかかる、今から準備してのんびりご飯を食べてからでも間に合うよ」なだめるように私は言い聞かせる。近くに置いてあるシャツを取り、よし、着替えは完了だ。「あとはご飯だけど……」実は、昨日のうちに食料が尽きていた。だが探すのは少し面倒だ。でもこのままだと何も食べられない。
「この近くにあるかな?ちょっと探して」
「了解」そう言い、相棒は前かがみになる。三分後、相棒から近くのコンビニ跡に缶詰が残っているとの情報が入った。 言われた通り、そのコンビニ跡には1人と1匹が5日は食べていける分の缶詰が残っていた。
「やった、大豊作だ」私は缶詰を手に取り、それらが並んでいる様子を見て興奮気味に言う。
「僕の分まであるんだろうね」
「それはちょっと保証できないかな」冗談気味に会話を交わす。それにしてもこんなに多いとは。あの「トキ」にほとんどの食料が人に喰らい尽くされたはずだ。ここには影響が少なかったのか、それとも情報が来る前にアレが起こったのだろうか。どちらにせよ、今目の前に大量の食料が並んでいるのは現実だ。ありがたくいただくとしよう。
「食べてから行く?それともちょっと離れてから食べる?僕は後者をおすすめするよ」
こういう所が心配性の証なのだ。だが私もあまり長居する気はない。「そのおすすめに従うとするよ」呟くような小さな声で相棒にそう告げた。 約2時間後、私は荒廃が進んだビル街を歩いていた。もちろん相棒も一緒だ。「ここも荒廃が進んでるね」ここ30分の沈黙に耐えられなくなった相棒が話題を振る。「でもここの地区はアレからまだ1年しか経ってないはずだよ」アレは世界をこうした、しかも荒廃するスピードも少し早いような気がする。「ねぇアトラ、ここにもいるかな」私の名前を呼びながら相棒は言う。「奴らは各地に散在してるはずだからね、いるところにはいるよ」そうだ、奴らは世界中の至るところにいる。いつ、どこにいたとしてもおかしくはない。
「その時はまた背中のそれで……?」
「そうだよ、どうしたの急に?」背中のそれとは私が担いでいる軍用ライフルだ。世界中、どの軍隊もこれを使っていた。小さく背中に担いでいても、なにか羽織っていれば分からない。「それ、音が大きくて怖い……」ビビりめ。でもそういう所は本当に犬っぽい。そうこうしてるうちにとても大きなビルが見えてきた。「なにあれ、倒れそうだよ」見た感じは倒れそうに見える、だがあれは倒れない。これは色んな荒廃建造物を見てきた勘だが間違いない。「あれは倒れないよ安心して、不安なら能力を使えばいいじゃん」そうだ、私の相棒なら能力を使えば一発でわかる。「む〜、僕が心配性なの知ってるくせに」不貞腐れた相棒はそれから1時間後にビーフジャーキーを見つけるまで口をきいてくれなかった。 「今日は何も無いまま終われそうかな?」もう歩き続けて6時間は経過した。多い日は1日7から8時間は歩くので、少ない方と言えるだろう。そろそろ日が暮れる。私は近くに泊まれそうな建物を探す。6時間といえど子供には重い。くたくただ。見つけるのもめんどくさい。頼むか。
「ねぇ、この近くに泊まれそうな建物はあるかな?出来れば何もいないところがいいけど、いても100m以内の建物なら……」
「僕もめんどくさいよ……わかったよ」相棒は文句だけはいっちょ前だ、それでも言うことをよく聞いてくれる。私は相棒が前かがみになっているのを座って見つめていた。 コトコトコトコト、鍋に入れた缶詰の中身がいい匂いと音を充満させる。しっかり煮えてるだろう。おたまで掬い自分の器に盛る。美味しそうだ。「今日のご飯は?」今にも待ちきれない様子でそう尋ねてくる。
「拾った缶詰を煮たヤツ」
「なんでもいいや、早く食べよ」
「自分で聞いといて……」相棒はおかしいがご飯は全くおかしくない。早く食べて寝よう。ご飯を食べ、満腹になった私は奴らが来ないことを願って眠りについた。




