第十四話 英雄の凱旋
「さぁて…と」
上空から颯爽と飛び降りてきた師は、獰猛な笑みを浮かべ敵軍を見渡す。
「さぁて…とじゃないです。
恰好付けている場合じゃないんですよ」
「お、言うようになったな小僧」
「ありがとうございます」
「そこは疑問形にしろよ」
師はカラカラと笑う。
「師よ、お帰りお待ちしておりました」
「うるせぇ!馬鹿弟子!戦況は!」
「は、帝国軍その数凡そ一万。わが軍は千程度になります」
「一人十殺」
師が兄弟子と同じことを言っている。
元凶はやはりこの人か…
「それは既に命じております」
「ならよし、敵将捕縛もしくは殺せ」
「はっ」
全くもって物騒な師弟だ…
師が参戦して戦況は一気に王国に傾いた。
原因は”竜”の出現による混乱か、老鬼の出現か?
若騎士三人がマセイ男爵を捕らえ、雑に師の前に放り投げる。
「ふぇ、ふぇ、フェルド・アイゼンンんん!!」
「誰だこのハゲ」
あ、これ本気で覚えてないな…
「帝国貴族のコーザ・カ・マセイ男爵です」
「え?雑魚・噛ませ?お前酷いこと言うなぁ…」
はぁ、とため息をつく。
「師が聖竜戦争時に恫喝したとか……」
「あぁ、小便漏らしか!今日は予備の下帯は持ってンのか!?」
「ぶぶぶ無礼な!!誰ぞ儂を助けろ!この者を殺せ!」
地面に這いつくばりながら帝国兵に向けて叫ぶ。
しかし、誰一人動かない。否、動けない。
「人望ないなぁ雑魚男爵…ベスラ」
捕縛しろと言う意味だろうか?縄を渡してくる
「自分でやってください」
「やだよめんどくせぇ」
仕方ない、ここは僕がやるしかない…か。
「は、は、離せ!儂を誰だと心得る!!」
「雑魚…?」
「疑問形じゃないだろそこは、言い切れよ」
顔を真っ赤にして怒り狂うマセイ男爵。
「静かにしろ!」とか「黙れハゲ!」とか言いながら騎士団が運び出す。
「……帝国兵諸君に告ぐ!指揮官たるコーザ・カ・マセイはこの私、”竜滅者”フェルド・アイゼンの弟子、このベスラ・ビノが捕らえた! 抵抗は無駄である!武器を捨て降伏せよ!!」
戦場に響くように叫ぶ。
本来なら師がやるべきだが、多分やらないだろうから僕がやっておこう。
あぁ、面倒になりそうだ。
指揮官を捕らえられた帝国兵は誰一人として抵抗することなく、全員が武器を地面に投げ捨てた。
「骨が無いねぇ」
「そんなものですよ」
問題はこの量の兵士や将校をどう処理するのか…
それはまぁ、陛下がやってくれるだろう…
***
「……我が軍、大勝利にございます!また、フェルド・アイゼン卿もご存命!」
門前の陣営に連絡兵が飛び込んでくる。
疑っていなかったが、やはり死んでいなかったか。
あのクソ剣士…戻ってきたら酒でも奢らせるか
「ベスラ・ビノ卿より陛下へご伝言との事です」
兵は一枚の手紙を差し出す
「捕虜が一万近くいます。後はよろしくお願いします」と書いてある。
あのクソ剣士の弟子もやはりクソだな!
笑いが込み上げる。
まったく―――
―――なんて日だ!!




