第13章 病理検査の結果は最悪だった
さちよがICUに来たのは手術の次の日の昼だった。「ありさ、どうでしたの?連絡貰った時びっくりしたよ。頭に包帯巻いちゃってさあ?大丈夫なの?」さちよはありさの目をじっと見つめた。「脳腫瘍があって昨日手術した。」ありさはさちよの目をじっと見つめた。「脳腫瘍?冗談でしょう?まさか、あんたが脳腫瘍だなんて?ストレス溜まっていたか?」さちよはありさの顔をじっと見つめた。そんなやりとりもあり、ありさはICUを3日で出て一般病棟に帰っていた。手術から1週間が経った、朝の高橋医師の回診の時病理検査の結果が出たのでお母さんが面会に来られた時に結果を知らせるとの事だった。「はい。分かりました。」ありさは高橋医師の目をじっと見つめた。「明神さん。また、後でお呼びします。ゆっくりしてくださいね。」高橋医師は病室を出て行った。高橋医師の目をじっと見て良性か悪性か探ろうとしたが流石プロ、表情には出さなかった。ありさは探りに失敗したと落ち込みスマホでパズルゲームをはじめた。窓の外を見ると快晴であった。検査結果を聞くまではありさの心は晴れなかった。12時になり、看護師がコンテナをゴロゴロ引い食事を運んで来た。食事の内容は毎日あまり変わらなかったが不味くは無かった。ありさはいつも完食していた。「ごちそうさまでした。」合掌して箸を置いた。ありさは、少し歩いて自動販売機でジュースを買って飲んだ。ありさは近い距離なら自分で歩けた。入院患者にはリハビリをしている人もいた。車いすの人もいた。ありさの隣のベッドの斎藤幸恵さんは30歳で1カ月前に脳梗塞で倒れもう1カ月も入院していて、毎日、リハビリの先生が来てリハビリで歩いていた。最初の1週間は歩くこともままならずトイレに行くにも看護師が付き添って車いすで行ってたらしい。今はリハビリのおかげで一人で歩いてトイレに行っている。午後2時になると母親が来た。それを待っていたかのように看護師がありさを呼びに来た。「明神さん。高橋医師より検査結果の報告がありますのでこちらへどうぞ。」看護師が二人の顔を見た。ありさはベッドを降りて靴を履いた。二人は看護師の後を歩くとナースステーションの中に入った。高橋医師がデスクに座っているのが見えた。「明神さんこんにちは。どうぞ、こちらにお座り下さい。病理検査の結果が出ました。報告致します。」高橋医師が二人の目をじっと見つめた。二人は身構えた。ありさは膝の上に拳を握り身体を前向き話を聞いた。「検査結果は膠芽腫で脳梗塞の中で非常に悪い部類に入ります。悪性でグレード4になります。このまま、放射線治療をしても余命は1年から2年です。やらないともっと短くなりますから治療をお勧めいたします。治療がんばれば根治もありますから、気を落とさずにして下さい。余命は最悪の場合なのでそれだけは避けたいです。私どもは全力を尽くして治療にあたります。落としてから希望をもたせる。医者が使う常套手段です。申し訳ありません。」高橋医師は二人の目を見つめた。ありさの目から涙がホロリと流れたのを高橋医師は見ていた。母親の充希はうなだれ、ありさを抱きしめた。母親は泣かなかった。覚悟は出来ていた。「我々はやれる事はやりきります。最長2年は必ず生きましょう。放射線治療を本日から始めましょう?この後3時から予約してあります。ちゃんと前を向いて生きましょう!大丈夫ですね。ありささん。」高橋医師はありさの目をじっと見つめた。「はい。頑張ります。よろしくお願いします。」ありさは高橋医師の目をじっと見つめニコリ笑った。張り裂けそうなチカラで出した笑いだった。「それでは3時に会いましょう。今日から抗がん剤の投与を始めます。以上です。」高橋医師はありさの顔をじっと見て優しく微笑んだ。「先生ありがとうございました。」ありさと母親は覇気のない声で言って立ち上がり「先生、外へ散歩に行ってもいいですか?」ありさは高橋医師の顔を見て優しく微笑んだ。「良いでしょう気分転換してください。お母さんも付き添って下さい。」高橋医師は二人の顔を見て優しく微笑んだ。「あんた、パジャマのままで行くの?外寒いからジャケット取ってくるね、ロッカーの中かしら?」母親は病室からジャケットを取って来た。ナースステーションにいた、ありさにジャケットを羽織ると二人は廊下を歩いてエレベーターで1階まで下りて正面玄関から外へ出て遊歩道を東へ歩いた。風が冷たかった。「ありさ、余命2年だって?あんた、どうするの?好きな事やりなさい!なんか人生って辛いわね。まだ、26歳だよ。2年で28歳か?早すぎる。お父さんに連絡しなきゃいけない!帰ってからでいいや!どこまで行く?隣の松見公園まで歩くか?」母親はそう言ってありさを見た。ありさは泣きながら歩いていた。「お母さん、ごめんなさい。二人より、早く逝っちゃって、生きてる間、親孝行するからさ?三人で旅行行こう。車売れば何千万円にもなるからさ!徐々に売りに出すから。」ありさは母親の横顔を見た。「良いの売っちゃって?生きがいだったんでしょ?私、仕事辞めるからありさの側にいるよ。」母親はありさの横顔を見た。「車は良いよ。散々やったから、あとは1台、1台.手放すよ。お墓までもってけないから?今乗ってる、ベンベターボだけは私の形見にお父さんかお母さんに譲るね。」ありさはそう言って母親の横顔を見た。二人は松見公園に着いた。池の辺りのベンチに座って池の中の鯉を見てると「ありさがまだ小さな頃この公園に三人で来た事あるんだよ。覚えてないかな?その塔にも登ったんだよ。登って見る?」母親はありさの顔を見た。二人は入場料を払って展望台に登った。学園都市が360度見渡せる。筑波山も綺麗に見えた。ありさの病室も見えた。「昔、この塔から飛び降り自殺をした人がいるのよ。この前の飲み屋街で殺人事件があったのは15年前の事だわ。」母親が遠くを見て言った。「寒いから一周して帰ろうか?」母親が言った。「うん。帰ろう。」ありさが返事をして二人は下に下りて公園内を歩いて病院に戻った。正面玄関から入ってコンビニでファミチキとカルピスウォーターを買って一番奥まで歩いてエレベーターで4階にあがり病室へ入った。隣のベッドの斎藤幸恵が「おかえりなさい。遅かったわね。結果はいかがでした。」斎藤はありさに聞いて来た。「最悪、悪性だった。余命ももって2年だって言うんだよ。がっかりして隣の松見公園まで散歩に行って来た。ついでにファミチキ買って来た。食べていい?」ありさが斎藤に断った。「遠慮なく!どうぞ。」斎藤は笑顔でありさを見た。ありさはファミチキにかぶりついた。カルピスウォーターを飲みながら。母親はそれを見てホッコリ笑顔でありさを見ていた。「斎藤さんにも買ってくれば良かったかしら?気が利かなくてすいません。」母親は斎藤に頭を下げた。「いえいえ、そんな気を使わないでください。」斎藤は笑顔で充希を見た。そこへお昼が遅れたからとさちよがナース服のままで病室に入って来た。「こんにちは。ご機嫌いかが?」さちよがありさの顔を見た。「最悪だよ。悪性だって!余命宣告受けたよ。2年だってさ!悲しよ。さちよ。私の旧車コレクション売るから水戸の旧車仲間に声をかけてくれない?良心価格で売るから。お願いします。」ありさはさちよの顔を見た。「悪性?余命宣告受けたってマジ?車の件は任せてマージン貰うけど?」さちよはいけしゃーしゃーと言ってニヤリ微笑んだ。「でも、マージンなんていらないから焼き肉御馳走してよ。」さちよはありさの顔を見てニヤリ微笑んだ。「それでこれからどうすんのよ。放射線治療と抗がん剤投与か?退院したら通院するのか?多分そうなる。ガン患者はうちの内科病棟でもそうだから。間違いないかな。」さちよは知識をひけらかした。「ありさ、おいしそうなの食べてんじゃん。そんなの食って大丈夫?」さちよはありさの口元を見て言った。「食べもの制限ないから大丈夫だよ。」ありさはさちよの顔を見てニヤリ微笑んだ。「そうか?内科じゃ禁止だぞ!そんなギドギドの油ものは?ありさは糖尿病じゃないよな?脳腫瘍が出来る原因を調べたが遺伝子の突然変異と家族からね遺伝やモロモロだわな?生活習慣やストレスなどもあるって。あんた、ストレス多そうな仕事してっからさあ?キャバクラとか看取り施設とか!霊達と会話したりちゃてからさあ!」さちよはベラベラと離した。「悪いベラベラやりすぎた。内科病棟帰るから、車の件はまかせな。お大事に!またね。」さちよは本当にベラだった。手を振りながら病室を出て行った。脳外科病棟のナースステーションに挨拶をして帰って行った。3時になると看護師が呼びに来た。「明神さん。放射線治療に行きますよ。1階のラジエーションハウスです。私についてきて下さい。」看護師はありさの顔を見た。ありさは歯を磨いていた。ファミチキを食べたから。口をゆすぎ看護師の後を歩いた。エレベーターで1階に下りてラジエーションハウスへと看護師の後を歩いた。部屋に入るとMRIのデカいのが置いてあった。その機械の中に寝ると顔にマスクをかぶされた。10分くらいで終わった。看護師は帰っていたから、ありさは一人で病室へ戻った。そこへ看護師が点滴とガートル台を持って病室に入って来た。「明神さん。これから抗がん剤入れますね。」看護師が言いながらありさの左腕に消毒して点滴針を差した。ありさは本格的に始まったと思った。そこへありさが働く施設の理事長が見舞いにフルーツバスケットを持って来てくれた。「ありさ、どなた?」母親が聞いた。「施設の理事長だよ。」ありさが母親に答えた。「明神さん。この度は、びっくりしました。ご機嫌いかがでしょうか?宮代さんも宮本さんのも施設の利用者も全員心配しています。明神さんが休んでいる間は私が変わりに入りますから急がずゆっくり治して下さい。こちらつまらない物ですがどうぞ。」理事長はありさの顔を見た。「理事長わざわざすいません。有り難く頂戴致します。」ありさは理事長の顔を見て優しく微笑んだ。すると母親が立ち上がり「ありさの母です。ありさがいつもお世話になっております。今回、ご迷惑をおかけして申し訳ありません。病名ですが膠芽腫の脳腫瘍と判明致しました。余命宣告されました。後1週間くらいは休ませてください。」母親は理事長の顔を見て頭を下げた。「脳腫瘍でしたか?全快するまで休んでもらって結構ですよ。膠芽腫とはなんでしょう?」理事長が質問して来た。「膠芽腫とは脳腫瘍の中で一番悪性な物らしいですね。余命は長くて2年だそうです。」母親は理事長の顔を見て静かに微笑んだ。「2年ですか?根治は出来ないのですか?」理事長は母親の顔を見た。「それがなかなか難しいと言う事です。しばらくは退院しても、通院しないといけないみたいで。」母親は理事長の顔を見た。「理事長、退院したら、仕事復帰するから心配しないでください。うじうじしてたら気が滅入るから。是非働かせてください。」ありさが口を挟んだ。「そりゃあ、頼もしい。でも無理は禁物だよ。明神さん本人が一番辛いでしょうが良くなってください。宮代さん宮本さんにも君の病気の事伝えていいかな?」理事長はありさの顔を見て微笑んだ。「良いですよ、」ありさは理事長の顔を見て静かに微笑んだ。「わかった。見舞いにこらせるからみんな心配していたから。話をしておく。こりゃあ、長いは禁物だ。顔を見れたから退散するか?お大事に!失礼するわ。元気でな。さよなら。」理事長がありさの顔を見て立ち上がろうとすると「理事長、わざわざ見舞いすいませんでした。こんな豪華な物まで頂いて。宮本さん宮代さんには手ぶらで来て下さいとお伝えください。」ありさはベッドの上から理事長を見送った。




