第11章 ありさが倒れた
月曜日、腰に下げたキイをいつものごとくガシャガシャと鳴らし施設に出勤した。「おはようございます。ご苦労さまです。」中番の宮代に挨拶をした。「おはようございます。お疲れ様です。ありささん。今晩は顔色悪いね。何処か具合悪い?私が引き続きやるから今日は帰りなさい!」宮代がありさの顔を見て言うと「今日は朝から頭が痛くて家寝てました。キャバクラは休んだんですが?ここは休めなかった。誤魔化しながらやります。具合が悪くなったらベッドに寝てますから、宮代さんとは帰って下さい。薬も飲んだしやりますよ。」ありさはぎこち無い笑い顔を見せ宮代の顔を見た。「私に気を使わないで帰って頂戴!私、今、一人者だから家に帰っても誰もいないから。内緒にしてたんだけど先月旦那と別れたのよ。45歳になってね。恥ずかしいですが?そんなこんなで気にしないで帰って頂戴。何かあってからじゃ遅いからね。」宮代はありさの顔を見て優しく微笑んだ。「すいませんが今日は帰ります。明日はなるべく来ます。それでは失礼します。宮代さん、ありがとう御座います。」ありさは宮代に頭を下げた。キイをガシャガシャと鳴らしながら施設を出て行った。ベンベターボに乗り込んで、約30分の帰路に着いた。ありさは車を降りて玄関のドアを開けて「ただいま、かえりました。」と玄関先で叫んだ。「はーい。ありさ、帰って来たのやっぱり駄目だったか?」母親が血相を変えて出て来た。「うん。駄目だった?宮代さんが交代するから帰れって言ってくれた。なんか、気持ち悪くなってきた。お母さん。救急車をよんでくれないかな?ひどいんだ頭の中がズキズキ、グルグルとして、そして、吐き気でしょう。今までこんなの無かったからお願いします。」ありさはそう言って廊下に倒れた。「救急車1台お願いします。」母親は救急車を呼んだ。「ありさ大丈夫?救急車呼んだから!」母親はありさに呼びかけた。「うん。大丈夫だけど頭痛いよ。気持ち悪いよ。」と言った。「あっ!意識はあるね。とりあえず大丈夫ね。深刻な頭の病気じゃなさそうね。」母親はありさに話かけた。10分くらいで救急車が来た。救急隊員がストレッチャーに二人がかりてありさを乗せると救急車に運び入れた。救急車はすぐに出発した。「お母さん。今、受け入れ先が2件あります。土浦の協同病院とつくばのメディカル病院です。どちらがよろしいでしょうか?」隊員が聞いて来た。「私の仕事場がつくば市なのでメディカル病院でお願いします。」母親は隊員の顔を見て言った。30分かかってメディカル病院に着くと看護師と医者が待っていた。病院のストレッチャーに載せ替えられ、ありさはMRI準備室に入って母親がありさの身につけている。金属を全て外した。ありさはMRIに入った。母親はMRI準備室で医者に問診を受けた。「今朝から頭が痛いと言って仕事場には行ったんですが、相当痛かったのかすぐに帰って来て玄関先で気持ち悪いと言って倒れた。意識はありました。話ました。過去にそういう病気になった事ありません。」母親が医者の目を見て言った。「ありがとう御座います。だいたいわかりました。意識があったという事なので脳梗塞や脳出血とは考えにくいので、結果を見てから判断しますが個人的に脳腫瘍の可能性があると思います。」高橋医師は母親の目をじっと見つめた。「脳腫瘍ですか?」母親は目を丸く大きく見開いて先生の顔を見た。MRI室内のゴンゴンという音がしなくなり、検査室からラジエーション技師が高橋医師を呼んだ。高橋医師はMRI室内に消えた。二人は画像を眺めながら「高橋先生どうでしょう?脳腫瘍かと思います。」ラジエーション技師が高橋医師に告げると「うん。間違いない。だいぶやっかいな所にあるなぁ?入院だな?」高橋医師が言った。「患者を出してくれ!」高橋医師がラジエーション技師に頼んだ。すると技師が二人でありさをストレッチャーに乗せた。高橋医師と一緒にストレッチャーに乗ったありさがMRI室から出て来た。「お待たせ致しました。終わりました。隣の部屋へどうぞ。」高橋医師は母親の顔を見た。三人は処置室に入って、高橋医師と母親は部屋に入って画像を見た。「こちらが娘さんの脳内の画像です。この白く写るのが脳腫瘍です。これを手術してとります。今晩から入院していただきます。明日、手術になります。」高橋医師は母親の目をじっと見つめた。「あら!嫌だ!主人に連絡してよろしいでしょうか?」母親は高橋医師の目を見た。「はい!結構です。ここでは使えないので外でお願いします。」高橋医師が母親の顔を見た。母親は救急車入り口から外へ出て電話した。すると40分くらいで旦那さんが来た。指定した。パジャマ、下着、タオル、歯ブラシ、化粧品を持って来てくれた。旦那はストレッチャーの上に寝ているありさの顔を眺めながらブツクサと言った。母親は入院手続きを終えた。ありさは、ストレッチャーのまま看護師二人に押され4階の脳外科病棟に移った。部屋のベッドへ移るとありさは目を覚ました。「お父さん、お母さん、ここは何処?」ありさが目を開けて二人の顔を見て尋ねた。「病院だよ。つくばメディカル病院脳外科病棟だよ。入院したのよ。」母親が言った。「私、そんなに悪かったの?」ありさが母親の顔を見て尋ねた。「ありさ、あなた、脳腫瘍だって?明日手術になるわよ。そして、病理検査をして詳しく調べるみたいよ。」母親がありさの目を見て言った。そこに高橋医師が問診に現れた。「明神さん、目を覚ましましたか?おかわりありませんか?主治医の高橋進次郎です。よろしくお願いします。明日手術になります。開頭術になります。頭に傷が残りますがこちらの方が適切かと思います。なんせ、重要な血管の近くにあり難しい手術になるので。手術時間は10時間をみております。朝9時からになります。それでは明日、ゆっくり寝てください。失礼いたします。」高橋医師は真顔でありさを見て部屋を出て行った。「何か飲みもの買ってくる?お腹は大丈夫?」母親はありさの目を見て優しく微笑んだ。「ミネラルウォーターを2本とパン買って来てくれない。」ありさは母親の顔を見てニコリ笑った。母親は1階のコンビニまで行ってミネラルウォーターとパンを買って帰って来た。「ありさ、お父さん、お母さん、帰るから。一人で大丈夫?何かあったらナースコール押しなさい。これだから。」母親はナースコールを教えた。「わかった。ここの病院、メディカル病院って言ったよね。さちよの居る病院だ?」ありさが母親と父親に向かって言って笑った。「さちよさんって、あんたの旧車仲間のさちよさん?そうなのね。会えるかな?」母親はありさの顔を見た。「お母さん達帰るわよ。明日朝8時にはくるから。ありさ、お大事に。じゃあね。また、明日。さよなら。」母親がありさの目を見てニコリ笑い手を振って病室を出て行った。「お父さん、お母さん達に心配かけるね、バイバイ!」ありさも思いっきり笑顔で手を振った。すぐに看護師が「おかわりありませんか?消灯ですよ。」と病室を覗いた。ありさは電気を消して眠りについた。




