33・ヤマダ(仮)のアシスト
「まぁ、貴様に封じられた初めの頃は、流石の我も怒り心頭ではあったがな。」
「ふむ、なるほど。その後はヤマダ(仮)ちゃん、マジサイコーと思った訳ですね。わかります。」
「何その、前向き思考……我、怖いんだけど。」
ありったけの術符を貼り終え、出入り口の扉の前に立つヤマダ(仮)。
手元の魔王(仮)に問う。
「貼り終わりましたね。さて後は術符を起動させて、ここを木っ端微塵するだけですか。その魔力はどうしましょう?私には無理ですし、魔王(仮)さんは、もう限界ですよね?」
「………ヤマダ(仮)よ。我をここに置いて、即刻、魔王国を出よ。」
魔王(仮)は、いつものおどけた様な口調を改めて、芯の通った声で言った。
魔王(仮)の本来の強大な力は、神珠に体ごと封じられている。
先ほど、残った微力な魔力を限界以上まで使い、何とか瘴気を集める術式を起動させたばかりだ。
いつもと変わらない様におどけていたが、魔王(仮)玉の光が弱々しい。
そんな状態の者が、最後に取る行動は……。
「まさか、自分の身を犠牲にするおつもりですか。もしや始めからそのつもりで?」
「仕方あるまい。神珠の表面に出ている、我の魂と精神力全てを魔力に変換して、ここに貼られた術符を起動させる。カーデンの王の子には無理を言って、とびきり強力な術符を用意させたからな。まぁ、この場所も外部から隔離された場所にある故、多少、大爆破しても微害は出まい。」
「……魔王(仮)さんはその後、どうなりますか?」
ふふっと、魔王(仮)は小さく笑って、その問いには答えない。
「世話になったな、ヤマダ(仮)よ。とんでもないとばっちりで封印された気がするが、そのお陰で我の悲願が達成できた。貴様に出会えた事は、我にとってこの上ない僥倖であった。礼を言う。ありがとう、ヤマダ(仮)。貴様がこの世界に来てくれてよかった。」
「………。」
一方的な別れの言葉。
「貴様の嫌う搾取者の様に、利用させてもらった部分はある。まぁ我もけっこう酷い目に遭わされていた気がするから、ここは相殺で……ん?おい、変な音がするぞ?……やめよ、おい、我を握りしめるな!貴様なら神の作ったこの神珠さえも、砕きそうで怖い!」
「ええ、全く。どいつもこいつも勝手すぎて、困ります。そういうの無策って言うんですよ。魔王(仮)さんはそれで満足なのですか?」
両手でミシミシと音が鳴る程、魔王(仮)を握りしめるヤマダ(仮)。
分厚いメガネ越しでもわかる程、目が怒っている。
「満足も何も、それしか……その方法しかあるまい……」
「何故そこで、ヤマダ(仮)ちゃん何か良い案なぁい?と、聞いてこないんですか!………魔王(仮)さんは見たくないのですか?」
「な、何を……?」
ヤマダ(仮)の気迫に怯えつつ、問いかける魔王(仮)
ふふんと、得意げに鼻を膨らませてヤマダ(仮)は言った。
「もう瘴気に犯されることのない世界ってヤツですよ!」
さぁってやりますかぁと、ポケットに魔王(仮)を放り込むと、部屋の奥にある祭壇に戻って行く。
「……?……??……っっ!?はぁ!?どう言う意味だ、ヤマダ(仮)!いや待て、何だそれは?」
我に返った魔王(仮)が、いそいそと服から何かの“道具”を出すヤマダ(仮)に問いかける。
ヤマダ(仮)は、出した物を次々と祭壇の金の術式が収まっている、藍色の魔石に仕掛けていく。
「これは…即席爆弾とでも言いますかね。詳しくは、良い子が真似をしてしまう危険性があるので伏せますが。駄目ですよ〜ネットなどで調べては!ヤマダ(仮)との約束です。」
「ばく……だん?」
「ああ、魔法があるこの世界の人には、馴染みがないですよね。う〜ん、何というか、魔法のない私の世界にとっての兵器というか、爆発系の魔法の代わりというか。先ほどの初代さんの、研究所で薬品保管庫を見つけまして、私が知っている薬品も多々、保管されていたので少々、拝借しました。いや〜、純度が私の世界の物より良すぎて、とんでもない威力が出そうで怖いです。」
ヤマダ(仮)のポケットの中で、絶句している魔王(仮)。
何からツッ込んだら……と、声を出そうとして時、出入り口の扉にヒトの気配を感じる。
「おや、先ほどの人達が、戻ってきてしまいましたね。ある程度の時間が経つと、爆発する仕掛けにしてしまったのですが……」
「……どのくらいだ?」
「あと5分程度で……300つ数えた後、この周辺がドカーンと木っ端微塵です。魔王(仮)さんの在籍期間と合わせてみました。」
「合わせんでいいわ!とっとと脱出するぞ!」
「了解です。では、魔王(仮)さん扉を開けてください。強行突破しましょう。」
扉の外の者達も、室内の気配に気づいたいのだろう、緊張感が伝わる。
しかし、この魔王(仮)の魔力でしか扉が開かない為、待ち伏せする形となる。
魔王(仮)が、わずかな魔力を絞り出し、扉を開く。
ガコンっという音と同時に、勢いよく扉が開き、護衛の兵士達が武器を手になだれ込んでくる。
しかし、見渡す限り誰も居らず、臨戦態勢だった兵士達が戸惑う。
「ふむ、この程度の人数なら何とかなりますね。」
天井に張り付いていたヤマダ(仮))が、扉付近の兵士の頭上、首目掛けて落下する。
思いっきり体重をかけて落ちた為、潰れた兵士は首があらぬ方向に曲げて倒れた。
そのまま、外の兵士や白衣を着た者達の足元を転がるヤマダ(仮)。
「ヴっ!」
「ぎゃあ!」
天井から着地したと同時に、短刀を引き抜いていたヤマダ(仮)は、転がりすれ違う隙に、相手の足の腱や脛を深く斬り付けていった。
反動をつけて、逃げ腰の白衣のカエルのような男に巻き付く様に倒した。
その首に刃を当てようとした時、
「待てヤマダ(仮)!……聞け、ここはすぐに吹き飛ぶぞ。オーサー、身を守れ!」
「!、そのお声は4代目様……?」
ヤマダ(仮)は、パッとその男から転がり起きると、正面の兵士の太ももを刺し、前屈みになった顎を蹴り砕く。その兵士を白衣を着たトカゲの吐く火炎の盾にする。
そのまま、兵士ごとトカゲを突き飛ばすと、一気に階段を駆け上る。
「魔王(仮)さんたら、甘々ですねぇ」
「たまにはな。」
ヤマダ(仮)は、家屋や外にいた数人の兵士達を、昏倒させつつ全力でその場を離れて行く。
そして、反動をつけて高い塀を駆け上り、外に転がり出る。
更に離れようと走り出した時、背後からとてつもない力の衝撃が走った。
視界が真っ白になり、全ての音が消えたような感覚になる。
ヤマダ(仮)が吹き飛ばされ、その勢いでポケットから魔王(仮)が飛び出す。
衝撃に遅れて爆音が轟いた。




