24・ヤマダ(仮)と和解
魔王(仮)達は、危うく叫びかけた。
寸前の所で、お互いの口(※魔王(仮)の場合は、箱ごと移動していたので箱を閉じた)を塞ぎ、そそくさと書庫を後にした。
コソコソと人目を避けて、王太子の防音の効いた書斎に戻る。
そして……、
「ヤ〜〜〜〜マ〜〜〜〜〜ダ〜〜〜〜〜〜(仮)ィ、貴様というヤツはぁ!!!」
「本当に…本当に!君というヒトはッッ!一体、何を考えて……、これも私が悪いのかッ!」
「最初から持ってんなら、とっとと出せっ!つーか、神珠ってのは2個も3個も貰えるもんなのか!?」
三者三様、キョトンとしているヤマダ(仮)に、お説教をかます。
手に持った、淡く白い光を放つ神珠を転がしながら、ヤマダ(仮)は弁解をし始める。
「これは、神様がですね。私が、最初の神珠を丸飲……いえ、お預かりした際、その様子がたいへん、お気に召したようで、もう一度見たいと、特別にもう1つ下さったのですよ。今回は隠していた訳ではなく、うまく取り出せなかっただけで。大変でした。」
「貴様……、このサイズを2つも……。どおりで旅をしている間、ろくに飲み食いせぬなと思っていたら……。」
「拳と同じ大きさだぞ。」
「あ、私は特別な訓練を受けています。決して真似をしないでくださいね。」
ざわつく男達を他所に、ケロッと答えるヤマダ(仮)。
王太子ははぁ〜〜〜と、深く長いため息を吐くと立ち上がり、手ずから紅茶を入れ直した。
一切飲まないヤマダ(仮)にも、飲む事の出来ない魔王(仮)の前にも、律儀に湯気の立つ紅茶を置く。
「これで、瘴気の対策の目処は立ったいう事かな。……完全に消し去る事ができない以上、応急処置と言った所だけれどね。これからの方針を分かりやすく整理しよう。」
・魔王国に入国し、魔王城に潜入する。
・瘴気を集める術式を、速やかに修繕し起動させる。
・集まった瘴気を神珠を使い、吸収し封印していく。
「まず、魔王国に入る所から難しいね。どこの国も、魔王国との貿易等の交流は禁止されている。魔王国まで行ける船か……。秘密裏に船を出すにも……。」
「そこは大丈夫です。このカーデン王国のユルノ港からも、密輸船が定期的に出ているので、それにこっそり乗っていけば簡単に行けます。それで私も密航しましたし。」
「え?」
「ああ、魔石の密輸船か。魔王国は良質な魔石が採れるからな。あれなぁ〜、色んな国から頻繁に来るし、採石場は荒らされるわ、取締ってもキリが無くて、困っておったのよ。」
「え?」
意外な所で役に立ったわと笑い合う、魔王(仮)とヤマダ(仮)。
顔を青くしてキョドる王太子に、気遣わしげにその肩を叩くギルド総長。
「また1つ、勉強になりましたね。殿下。……因みに、ウチの国の密輸船の裏のオーナーは、大半が貴族ですぜ。」
「はぁ!?父上は……もしや、黙認して……嘘……だろ?まさか、賄賂……?」
「この王子様、勉強は出来る優等生だけど、融通が効かないタイプですね。」
「若いなぁ〜〜〜。我もそんな頃があったなぁ。」
こうして魔王国への行き方は決まった。
しかし、この数時間でちょっと老け込んだ王太子とギルド総長には、これ以上できる事はない。
「魔王国に入ったら、後はヤマダ(仮)と魔王殿にお任せするしかねーな。」
「そうですね、潜入ならば私単独の方が動きやすいですし、それに術式というものは、魔王(仮)さんしか、修理と起動は出来ないでしょう。」
「……初代魔王は、独善的であったが、今でも語り継がれる程、魔力量が高く化け物じみた頭脳の持ち主であった。そんな者の造った術式を我が直せるか、些か自信はないが、やれるだけやってみよう。」
「私達も、できるだけ支援させてもらう。ギルド総長、君の事だから密輸船に知り合い位、いるのだろう?いくら積んでも構わない。資金は私がなんとかするから、安全に魔王国に渡れるよう手配してくれ。」
王太子の命に、頷くギルド総長。
「ヤマダ(仮)、魔王殿、必要な物があれば遠慮なく言って欲しい。すぐに用意する。……こんな事しか出来なくて申し訳ないが。」
「いえ、お気遣いありがとうございます。」
「休む部屋だが、君の存在は極秘だ。申し訳ないが、この書斎の仮眠室を使って欲しい。客室程ではないが、悪い作りではないと思う。自由に使ってくれ。」
そこで、王太子の書斎の扉が控えめにノックされる。
出ようとするギルド総長を制し、王太子自ら、扉に向かいノックした従者に対応した。
眉間を揉みながら、王太子はすまなそうに言う。
「すまない、至急、処理しないとならない事案が出たようだ。今日はこの辺りで。ヤマダ(仮)達はこのまま、休んでくれ。」
「俺も今日はギルドに戻ります。また明日、登城してもよろしいですか?」
「ああ、助かる。すまないが、明日もよろしく頼む。」
王太子は気だるげに、書斎を出る準備をする。
その際、ヤマダ(仮)を見て、少し驚いて動きを止めた。
そして、どこか嬉しそうに微笑み、颯爽と書斎を出ていった。
「さて、俺も行きますか。だいぶギルドを空けちまったから、仕事が溜まってるな……。」
ガシガシと頭を掻いて、ギルド総長も立ち上がった。
おもむろに、ヤマダ(仮)を見て……。
「アルベルト王太子殿下は、その、悪いおヒトじゃねぇんだ。……あんまり大きな声じゃ言えねぇが、今の王は政治や民の事にも積極的なお方ではない。瘴気対策も消極的で、貴族共の言いなりだ。そんな中でも、殿下は民の為になんとかしようと、必死に奮闘されている。色々、まだまだだがな……。」
「はい。」
「聖女召喚の儀式も、殿下が渋る貴族と王をなんとか説き伏せて、やっと漕ぎつけたんだ。儀式後の態度が良くなかったとは何となく分かるが……、許せとは言わねぇ。その……俺も口がうまくねぇからアレなんだが、……殿下を頼む……。」
ヤマダ(仮)に深く頭を下げると、ギルド総長はニカッと笑って書斎を出ていった。
魔王(仮)は、何も言わずにヤマダ(仮)を見る。
ヤマダ(仮)は、カラになったティーカップを静かに置いた。




