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その召喚聖女はちょっとヤバめです。  作者: ハラ カナウ
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22・ヤマダ(仮)、新しい依頼を受注する

 カーデン王国で、聖女召喚の儀式が行われたのは、およそ五百年前とされている。

 その時も、この世界が瘴気の毒に侵され、魔物の凶暴化と大地の穢れで作物が育たず、飢餓に苦しんだ。


 王太子の祖先である、当時の王家が秘術である“聖女召喚の儀”を行い、異世界より神子である聖女を呼び出した。

 聖女は神より封印の神珠を賜り、瘴気の正体を探った。

 そうして、瘴気は北の大陸に存在する“魔王国”の魔族の王が操っていると突き止め、此れを封印したとされる。


 民達には、最早おとぎ話とされていたが、カーデン王家にとっては“真実の伝承”として代々、語り継がれてきた。

 故に、当たり前のように“瘴気=魔王率いる魔族が原因である”と、先祖代々、刷り込まれてきた。


 だから王太子も、魔王さえいなくなれば、自然と瘴気が消えると信じていた。

 しかし、ヤマダ(仮)の魔王封印の衝撃報告から、だいぶ月日は流れたが、一向に瘴気は無くならず、増える一方である。


 何故、無くならない?どうして減らない?

 なぜ?何故?何故なのだ?


「そうだ。瘴気と我ら魔族、引いては魔王に因果関係はない。」


 王太子の目の前に置かれた、箱の中の魔王(仮)は毅然とした態度ではっきりと言った。


「………確かに、数百年前の魔王は瘴気を集めて良からぬ事をしようとし、貴様達の祖先が召喚した聖女により、瘴気と共に封印された。それは認めよう。……この魔王は魔王国を建国した初代魔王であり、歴代魔王の中で最も強い魔力を持ち、聡明でそして残酷な野心家だった。」


 魔王(仮)と王太子の様子に気付き、ヤマダ(仮)とギルド総長もデスクに集まり、話を聞く。


「初代魔王は、瘴気の正体に気付き、それを利用して世界を手中に入れようと企んだ。聖女率いる王国の者達にそれを阻止されたが……。その時、当時の聖女達も知る事になったのだろう、瘴気の正体……真実に。」

「瘴気の……真実?」

「瘴気とは腐った“魔力”だ。我らヒトが死に、地に埋められると肉が腐り落ち、いつしか大地に還るだろう?しかし、魔力は残る。残って地中深くに集まる。そして時間をかけて澱み腐る。それが溢れて大地から噴き出すと“瘴気”という毒に転じるのだ。」


 魔王(仮)の語る言葉に、誰も言葉を失った。

 ギルド総長が、額を押さえながら唸るように呟いた。


「しょ、瘴気が魔力だと?そんな事がある訳……、いや、あったとしたら、ヒトが魔力を持って生まれる限り、永遠に瘴気は無くならねぇって事じゃねーかよ……」

「王家の書庫にも、そのような話は残っていない……。どうする事も出来ない、都合の悪い事実故、隠ぺいされたというのか?そんな……」


「貴様達が信じようが信じまいが、これはまごう事なき事実である。我ら魔族は、ずっと各国にそう公表してきた。……どの国も信じずに、それどころか、瘴気に関係のない干ばつやら自国の治安悪化まで我ら魔族のせいと言ってきたな。いやはや、あれには困ったものだった。」


 魔王(仮)は、魔王時代の雑務に忙殺されていた日々を思い出し、懐かしむ。

 そんな魔王(仮)をじっと見つめるヤマダ(仮)。


「なんだ?ヤマダ(仮)。」

「いえ、特に何もありません。」

「?、どうした……やめよ!我をコロコロするでない。」


 箱の中の魔王を指で転がすヤマダ(仮)、全く緊張感のない二人に、王太子は肩の力が抜けた。


「随分と、仲が良いのだな。聖女ヤマダ(仮)よ。流石というか、なんというか……。」

「仲が良い?ふむ。魔王(仮)さんはこの状態だと、身動きできませんし、私もこの世界の事に疎いもので。所謂、お互い都合のいい関係というやつです。」

「……何か誤解を生みそうな発言するでないわ。貴様など、我がいなかったら宿に泊まる事も出来んかったくせに……ちょっ、やめよ!コロコロするでない!激しくするでない!」

「……………ふふっ」


 じゃれ合う二人を見て、思わず笑みをこぼしてしまう王太子。

 王太子はヤマダ(仮)を見て、変わったなと感じた。

 召喚されたばかりの頃のヤマダ(仮)は、義務的で感情の起伏がなく、まるで気味の悪い人形の様で嫌悪を感じた。

 しかし今、目の前のヤマダ(仮)は、表情はいつものガラスと布で覆われてわからないが、雰囲気が随分と柔らかくなった。


 魔族とは、凶暴凶悪で対話のできない野蛮な、全ての不幸の元凶である種族と思っていた。

 その為、カーデン王国は魔王国とは殆ど没交渉であり、一生涯相入れない敵であると認識していた。

 しかし、どうだろう。魔族の王たる魔王は、その威厳と恐ろしさもあるが、寛大で理知的な人物だった。

 むしろ、自国の貴族の方がよっぽど、無能で言葉が通じない。


 二人の父娘のような気やすい関係が、微笑ましくすら感じる。

 こんなふうに、ずっと二人で旅をしていたのだろう。


 ……いつか、我々も魔族かれらとあんなふうに……。

『ふふ、すぐそう思ってしまう私は単純すぎるかな?……しかし、変わらなければ、知らなければいけない事が多いのも事実。私達は、凝り固まった認識に振り回され、あまりにも無知すぎた。』


 ふぅと息を吐き、気を引き締める王太子。

 魔王(仮)達から、自分を守るように間に立つギルド総長から、一歩前に出ると静かに頭を下げた。


「魔王殿。聖女ヤマダ(仮)。数々の無礼を、ここに深くお詫びいたします。……無礼を働いた身で、こんな事をあなた方に頼むのは筋違いと、重々承知している。だが、どうか……瘴気を消し去る方法を、共に考えていただきたい!この国、ひいては世界の為に。」


 グッと覚悟を決め、王太子は両膝を絨毯につけ、深く頭を下げた。

 この国の未来の王として、今で出来る精一杯の誠意である。

 ギルド総長も、王太子に倣って躊躇することなく膝をつき、同じように頭を下げた。


「俺も、瘴気のせいで苦しむ奴らをもう見たくねぇんだ。……俺からも頼む。どうか、力を貸してくれ。」


 ヤマダ(仮)は首を傾げながら、どうします?とばかりに箱に中の魔王(仮)を見る。

 魔王(仮)は、そんなヤマダ(仮)を見て、


「やむを得まい、ヤマダ(仮)よ。寄り道延長を希望する。」

「私としても、問題ありません。ただ、今回はキチンと報酬をいただきます。」


 頷きあうのだった。



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