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その召喚聖女はちょっとヤバめです。  作者: ハラ カナウ
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17・ヤマダ(仮)を探せ

 カーデン王国の中枢となるこの王都は、この世界において1、2を争う程、大きな都市である。

 近年、魔物の凶暴化や作物の不作などの瘴気の被害に、国と民を守る為、王家と一部の筆頭貴族、有事の際に備える冒険者ギルドは緊迫した状況にあった。

 更に、多額の税を使いながらの聖女召喚とその聖女を召喚失敗により、死なせた事への批判の対応に追われていた。


 そんな王都の冒険者ギルド。

 このカーデン王国の町や村にある、全てのギルドを総括するカーデン支部本部であり、荘厳な佇まいをしている。

 またその大きさに見合う、大勢の働く職員と利用する冒険者や依頼主で、ギルドは常にごった返しており、賑わっていた。

 そのギルドを統括するギルド総長の執務室には、王都付近の小さな町のギルド長アシュトンが訪ねていた。


「それで?貴殿のいうヤマダ(仮)という娘が、何だと言うんだ?アシュトンギルド長。こっちは、聖女の件がやっと鎮静化してきたとはいえ、暇では無いんだぞ。」

「申し訳ありません。しかし、どうしてもギルド総長のお力をお貸しいただきたく……そのヤマダ(仮)は、まだ鉄ランクの新人の冒険者ではありますが、瘴気に侵され凶暴化したワーウルフ2体を単独で討伐するなど、驚くべき将来性と才能の持ち主なのです。」

「ほう、鉄ランクでワーウルフを。それも2体か。そいつはまた……。」

「この銀ランクのコーラクが証人です。」


 アシュトンの後ろに控えていた、銀ランクのコーラクも同意と頷く。


「本当の話さ、エンラク兄貴。ヤマダ(仮)という娘は、相当な手練だ。」

「ここでは“ギルド総長”と呼べ、バカ者。それで、その将来有望な冒険者が行方不明と?……まさか、痴情のもつれとか言うんじゃねーよな?」

「とんでもない!確かに私の見た目と血筋で、勘違いしてしまう女性冒険者は多い……ですが、私は純粋に彼女の(裏仕事向きの)才能を伸ばし、ゆくゆくは(私の出世の為に)上位ランク保持者に育て(利用し)たいのです。そこにはなんら疚しい気持ちはありません!」


 ギルド総長は、手元のヤマダ(仮)の手配書と、キメ顔をするアシュトンを胡散臭そうに見る。

 チラッとアシュトンの後ろに控える実弟を見ると、困ったように肩をすくめて見せた。


「私の元でしっかりと育てようとした矢先、意見の食い違いと言いますか……悲しい誤解があり、彼女は行方をくらませてしまったのです。」

「なるほどねぇ。それで、自費で賞金をかけて探そうと。貴殿も知っていると思うが、来る者拒まず去る者追わずが冒険者ギルドの掟だ。ま、来る者は才能の無い者を入れる訳にはいかんから、多少は選別するがな。……それをわかっていて、尚この娘を探す、と。」


 俺を巻き込んでまで、何を企んでやがると、ギロリと睨みを効かせる。

 大怪我で引退したが、現役時代は白金ランクまで上り詰めた猛者である。その眼光にアシュトンはたじろいだ。

 ギルド総長にとっても、アシュトンは彼が新人時代から知っている古馴染みであり、故に彼の性質をよく知っていた。

 ナルシストで自信家、出世欲が強いくせにどこか抜けている男。

 末端だが貴族の出であり、親の力を借りてその若さで小さな町ギルドだが、ギルド長に抜擢された。

 それなりに有能だが、いかせん自滅しそうなタイプだったので、お目付け役として銀ランクになったばかりの弟を付けたのだが……。


 さてどうしたものかと、頭を悩ますギルド総長、そこに控え目にドアがノックされた。

 声をかけると、慌てた様子の受付嬢が入ってくる。


「どうした?」

「すみません、ギルド総長。あの、アシュトンギルド長にお客様が見えてらして……。」

「私に……ですか?」

「ヤマ……ダ?とおっしゃる方……「何ですって!?」あ!」


 ヤマダと聞いて、アシュトンは受付嬢を押しのけて、部屋を飛び出していく。

 ヨロけた受付嬢を、コーラクが支える。


「大丈夫かい?全くあいつは……。」

「あ、ありがとうございます。あの、私の判断なんですけど……ギルド総長も一緒にお会いした方が良いかと……そのお客様のお持ちになった物が…」


 受付嬢からその内容を聞き、ギルド総長とコーラクは、同時にため息を吐いた。

『ああ、面倒くさい事になった……。』



 ギルド総長達がアシュトンの後を追い、受付前まで移動すると、立ち尽くすアシュトンの後ろ姿を見つけた。


「おい、ギルド長。ヤマダ(仮)はいたのか……。」


 アシュトンの向こう側、受付前に立つ小柄な少女に目を奪われる。

 コーラクやアシュトンだけでは無い。

 ギルド内の冒険者達や、後からきたギルド総長も釘付けになる。


 ギルド中の視線が集まるその中心には……。

 この世のモノとは思えない程、美しい少女が立っていた。



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