第1章 幼児期 第1話 変えられるもの
第1章 幼少期
第1話 変えられるもの
目覚めると、金髪の若い女性が嬉しそうに、こちらを見つめていた。患者が無事で喜ぶ医者は医者の鏡だろう。
ところでなぜ俺は助かっているのだろうか。あれは死んだのではなく、一時的な気絶だったと言う事なのか
だとしたら少し意識があったのも納得できる。
それとも、誰かが、お金を使い手術をしてくれたのか。
どちらにしろ今は生きていることが、恥ずかしい。
だが俺には、治療費を払ってくれる人間などは正直居ないし、極めつけには、あの状況で病院に連れていってくれる人すらも居ないだろう。
いま唯一考えられる事としては、一応高校生なので、住んでいた街の方針で、高校生までは医療費が無料になっていたはず。だがそれくらいだ。
ということは、誰かが病院へ連れていってくれたのだろうか。裸の俺を抱えて。店員の子だったらうれしい。
よく見ると、その横にも喜ぶ茶髪の若い男性がいる。俺と同い年くらいだろうか、だが俺と明確に違うところは、俺が女性ならとても興奮してしまう程の魅力的な大胸筋を持っていること、これは素晴らしい。
でも医師に必要な能力では多分ないだろう。
ところで、この2人の服装は医者の正しい服装なのか?もう少し薄水色のビニールのような服に、白いマスクというイメージがあるが、マスクもしなければ、服は何らかの動物の毛皮や羽毛で作られたもの。
細菌をわざと入れているかと、疑いたくなるような服装である。
「あなた…//」 「よく頑張った!!本当に…(泣)」
ところでさっきから何かを2人で喋っている、英語だろうか。
俺は万年、英語は5段階評定のうちぶっちぎりの1だった。だから正直全くわからないし、喋っている言語が英語なのかもわからない。って…
ん?
英語だと仮定するなら俺はなぜ今、海外にいるのだろうか。金髪の女性や茶髪の男性。上を眺めると、どこか中世のヨーロッパを感じるシャンデリア。
海外の病院なんて、お値段のお高い病院に決まってる。
うーん…
考えられる事として、日本では治せないと判断された。そこまで重大な病気だったとか、そんなところだろうか。
まさか親父が…?
まぁそれはないか。
ところでまだ裸なんだよな、恥ずかしいから、早く着替え…
「そこで俺が見てしまったのは、想像を絶するものだった。」
…小さい というかほぼない
あぁ…なんと言うことでしょう。俺が22年の月日をかけて育ててきたマイブラザーが細長い小石くらいのサイズになっている。治療のための薬の副作用か?そうも思ったが、そういった疑いもすぐに消えた。
俺は気づいてしまった。
多分これは俺がずっと憧れた「転生」というやつだ。
正直、昔ばなしや、神話の話だと思っていたので、想像すらもしていなかったが、明らかな手の小ささや、マイブラザーの小ささ…極めつけには
「んーぁあ...バブゥ…」
俺はこんな可愛い声が出せたのか。じゃなくて
そう、言葉が話せなくなっている。
「あ!泣いたわ!あなた!」
なんだ?金髪の女性がなにかを言っている。言語はわからないが表情を見ると涙が出ている。だが喜んでいるようにも見える。
なぜだろうか、彼女は涙を浮かべながら何度も俺を抱きしめる。 その姿を見ていると、不意に前世の母の顔が頭をよぎった。
前世の母と父は昔、こうやって喜んでくれていたのだろうか。
そんなことは置いといて、今になって少しずつ転生したという実感が湧いてきた。この高揚感、それはそうだろう、これは引きこもり生活4年間ずっと願っていたことなんだから。
といっても言語がわからないと話にならないな…
ほらまたなにかを言っている。
「あなたの名前は「ロイエ」
「あなたは私たちの初めての赤ちゃんよ!だから一生をかけて愛すと誓うわ!」
「そうだなフライエ、俺達にはこの子を守る義務がある。」
「そうね//」
おぉこんなところで熱いキスはやめておくれよ。
ところで言語はわからないがさっきから聞こえる「ロイエ」とはなんだろうか。
この世界の卑猥な言葉だろうか。「2人目が作りたい」や「我慢できない」的な。
(これが自分の名前だったと知ったのは少し後の話であった。)
あれから2ヶ月くらいたったのだろうか。
だが、今のところ、わかったことは、ここがとんでもないド田舎だということ、辺り一面を見渡して見ると、稲を収穫するための小麦色の田んぼか、多分木だけで作られている家しかない。
電気はきっとこの世界にはそもそもないのだろう。異世界あるあるである。
だが異世界なんだ、魔法くらい使えてても良いだろう。
なんてことを窓から外を眺めながら考えていた。
そんな時だった。
「奇襲が来たぞぉー!!」
なんとビックリ、大量のゴブリンの奇襲ではないか。
おぉ本当にいるのか!ゴブリン!
ファンタジーなキャラに、少し興奮している。
どうやらこの村には滅多にモンスターは出現しないが、半年に一回ほど、近くのイルヴァルトの森というところにあるゴブリンの集落から奇襲を仕掛けてくるらしい。
ところで奇襲を報告した門番の人はなぜこちらに向かって走っているのか。いくらなんでもそれは酷すぎやしないか…?それで可愛い子供が死んだらどうするつもりだ。
「行くぞ!!フライエ!!」
「わかったわ!!」
喋るのはまだ難しいが、この2ヶ月でほとんどの言葉は理解できるようになってきた。知らない言語を覚えるなど前世の俺では絶対にあり得なかったことだろう。脳ミソまで転生したのだろうか。
彼はシュベルト、俺の父だ。
彼は前世の父とは違く、俺を心から愛してくれている。彼がこんなところで死んでしまったら俺はしばらく立ち直れないだろう。
「ゲェェウォー!」
ついにゴブリンたちとご対面だ、死なないことを願っ…
「身体強化 力」「身体強化 速」
なにそれ…?
俺はとてもビックリした。シュベルトは謎のスキルを使ってあっさりとゴブリンを倒している。今の俺には速すぎて何をしているのかよくわからないが、ゴブリンを切った時特有の緑の液体がたくさんのところから吹き出ているのはわかる。
4年間の引きこもり中で、もちろん俺は異世界のオンラインゲームなどは腐るほどやっていた。
そんな俺の記憶は膨大である。(勉強には活かせなかった)
俺は、様々なモンスター達の弱点部位をほぼ把握している。だからこそわかるのだ。
シュベルトはゴブリンの首を狙って攻撃をしている。
見ての通り、ゴブリンの死体は首の断面がさっぱりしている。
彼はいったい、何者なんだろうか。
そんな父シュベルトの背中を見つめていた時、もうひとつおかしいことに気づいた。
母フライエがさっきからゴブリン達の近くにいるのに、全く気付かれないのだ。
おぉなんだ…母も強いのだろうか。流石にそんなわけ…
「大いなる灼熱の炎よ、今私に力を与えたまえ!バーニングブラスト!!」
は?
母は周辺にいるゴブリン10体ほどを、全て燃やし尽くした。
いろいろとツッコミどころ満載である。
目で追えない程の剣捌きをする父と、姿を消し、ゴブリン10体を魔法で燃やし尽くす母。
どうやら、とんでもない家族に産まれてしまったようだ。
だが、これは大きな収穫である。俺は確かにこの目で見た。この世界には「魔法」が存在する。
それと同時に「スキル」らしきものも存在するのだろう。
詳しいことはまだわからないが、この先ゆっくりと研究をしていこうと思う。
2人は急いで、家の中に入ってきた。
「おい!ロイエ!怪我はないか??」
「ロイエ…心配させてごめんね…でも安心して、私達が絶対に守るから。」
「そうだなフライエ…」
「まあとにかく今日は稼げたんだ!夜はパーティーだな!
とりあえず魔石とか角とか売ってくるわー!」
「じゃあ私は食材の準備~!!」
父はウキウキで外へ出ていき、母はニコニコしながら食材を探している。
この家族は毎日が笑顔で溢れている。
異世界に来てから何度も思う。俺はこんなに幸せで良いのだろうかと。前世ではずっと辛く、同じような毎日を過ごしていた俺にとって、今は毎日が楽しく、幸せだ。
絶対にこの家族は失わない。
俺が守らなくちゃといけないと
俺はそう深く誓った。




