第1章 幼少期 第2話 幸せ
第1章 幼少期
第2話 幸せ
「ロイエ!1歳の誕生日おめでとう!!」
あのゴブリンの襲撃から約1年がたった。
そして今日こそが俺の1歳の誕生日である。
この家はあまり裕福ではない。両親はかなり名の知れた冒険者だったそうだが、結婚をし普段は平和なこの村での収入は稲の収穫くらいで、あまりお金はないらしい。
だがそれで良い、愛はお金では買えないのだから。
「ロイエ…こんなもので悪いけど、誕生日プレゼントよ」
フライエが本のような物をくれた。
普通の1歳児の子には、センス抜群の絵本であるだろう。
「これはね、魔導書って言うのよ」
まさかの魔導書だった。
まあ異世界漫画ではよく見た展開だ。
「お母さん…これくらいしか持ってなくて…これにはねお母さんが使ってる魔法のやり方が載っているの、ロイエにはまだ早いかもしれないけど、いつか役に立つから持っていて」
あぁ喋りてぇ、ありがとうと伝えたい。相手の言葉は理解できるから多分喋れるはずなんだけどな、多分まだ1歳なのが原因である。
だが普通、1歳児に魔導書を持たせるだろうか。
まあ両親が元冒険者の家系はこうなるのだろう。
ただ魔導書は俺にとってはとても好都合だ、なぜなら俺は異世界漫画の主人公たちみたいに、強くなりたい!
というのもあるが…
今はそれより、愛する家族のため、そしてこの先出会うであろう、大切な人たちを守るために出来るだけ強くなりたいのだ。
といっても今日はもう夜だ、実験は明日にして、今日は寝よう。
これからのワクワクに、あまり眠れないと思っていたが、すぐに寝れた。幼児の体は便利なものである。
夜が明けた。
前世ではニワトリが目覚ましになる。みたいなのがあったが、この世界では、前世には存在しなかったくらいの大きさの鳥が、空の上で鳴いている。ニワトリの数倍はうるさい。
では昨日貰った本を読んでいこう!!
この時期の父と母は稲の収穫に行くため家には誰もいない。そう!実験し放題である、ただ1歳児を家で1人にするなど、前世では恐ろしいことだがこの村には滅多に敵など出てこないので多分大丈夫なんだろう。
さあ魔導書を見ていこう。ついに、俺も魔法を使えるのか。
そんな興奮をおさえながら、魔導書を開いた。
んー…
んー?
俺は忘れていた、字が全くわからない。
よく考えたらそうだ。この世界の文字をまだ見てすらもいなかった。
これは本当に時間がかかりそうだ…
こーゆー時はどうすればいいんだー?……
あ!明日からシュベルトに夜、読み聞かせしてもらおう!
あぁこれはかなり時間がかかりそうだ…
あれから文字を完全に覚えることに約4年程の月日がかかった。
シュベルトはほぼ毎日、俺が寝る前に、読み聞かせをしてくれた。
シュベルトが何を言っているかは分かるようになっていたので、とてもよい勉強になった。
後は自分で文字を書く練習や、日本語にもあった同音異義語のようなものの区別の仕方など…
アレほど必死に勉強したのは前世含め人生で初である。
もう二度とやりたくない。
俺は字を覚えるのに、4年程かかり、前世では幼稚園児くらいの年齢である5歳くらいにはなっていた。
この期間の間にゴブリンの襲撃の回数が少し増えている気がするが、シュベルトとフライエのおかげで平和な日常が続いている。にしてもこの世界にきてから5年もたっていたのか。
前世なら27歳、もし死んでいなかったなら、働いて、家を買って結婚しているくらいの時期だろうか。
俺に限ってそんなことはないだろうが、どちらにしろ二度とあの世界には戻りたくない。
にしても俺はついに文字を覚えたのだ、これで念願の魔導書を読むことができる!
さあ、本のある部屋へ行こうじゃないか。
「ロイエー?どこへいくのー?」
お母さん!魔導書を読みにいくんだ!
「あなた!!ロイエが魔導書を自主的に…将来は魔法使いで決定ね!」
「いやフライエ!剣術も忘れないでくれよ…」
シュベルトが困った顔でこちらを見つめている。
ごめん…!シュベルト…俺は魔法が好きなんだ…
「うーん…」
シュベルトが深く考えた後こう言った。
「どちらもやらせよう!」
「名案だわ!」
えぇ…
色々な漫画でもそうだったが…なぜこう冒険者の家系はこうもどちらもやらせようとするのだろうか。
まぁでも、どちらも覚えて損はない。
どちらも使える主人公なんて、漫画にもあんまりいなかっただろ。
さて、気を取り直して、魔法の研究である。
では初級魔術の練習から…
ん?ファイアーボールの作り方…?当たり前だが魔法を使うのには詠唱が必要なのか…
どうやらこの世界では、どんな魔法でも詠唱が必須ならしい。魔法という、概念へのイメージが定着せず、イメージを膨らませるために、詠唱をするそうだ。
あぁ…異世界漫画を読みすぎて無詠唱が当たり前だと思っていた。ちょっとショックである。
この本に書いていることが間違いとは言わない。
だが、イメージか原因だとするならば、イメージさえあれば無詠唱でもできるんじゃないか。
俺には4年間の引きこもり生活で身につけた魔法への無数のイメージがある。そのイメージを魔力に変換できるなら、無詠唱への可能性は広がる。
だが、まずは詠唱をして使ってやってみよう。
そもそも俺に魔力が使えるかわからないからな。
これを読めばいいのか?、ゴホン…「炎の神の力を借り、炎を作る?ファイアーボール!」
お、おぉー!すげぇ…
俺はここで初めて見た、炎が塊となり、手の上で燃えている姿を。
今も魔力が体全体を循環しているのが伝わる。
これが魔力か…
俺は初めての感覚に感動した。だが感動している暇はなかった。
あぁ…あぁ!やべぇ
夢中になりすぎてここが家だということを忘れていた!
ここは木でできた家だ!このままだと引火する!
えぇっと… そうだ!
俺は焦りながら、魔導書の次のページを開いた。
「水の神よ、いま私に力を与えたまえ!ウォーターボール!」
え、まじかよ、できるの?それ
左手には、ウォーターボール
右手には、ファイアーボール
俺は今ほぼピ○太郎である。
ならできるのではないか?
アァン!
って本当に?くっ付けられたんだが…
今俺が目の前で見たのは、燃える炎の周りに水がまとわりついている景色である。
なんども魔導書を確認してみたが、これは多分おかしい事だということがわかった。
この世界には適正魔術というのがあるらしく、七歳になった子供たちを近くの教会に集め、魔法の適正検査をし、何属性の魔術を使えるかを、特殊な水晶で検査するらしい。
どうやらその検査で出た魔術を生涯かけて極めていくらしい。
だから今の俺はおかしい。違う属性の魔法を2個同時に使えた。もしかしたら俺以外にもいるかも知れないが、それでも特殊な魔法であることは間違いないだろう。
「ロイエー?ご飯よー?」
いま行くよお母さん!!
もうそんなに時間が経っていたのか、他にも試したいことは沢山あるがまあ今日はここまでにしよう。
今日の食卓に並べられたのは普段ではあり得ない量の肉であった。
「ロイエー今日は獲れたてのイノシシなの!お父さんが狩ってきたのよー?」
へぇー父さんはすごいですね!本当に!
「そうだろ~!ロイエー!D級のイノシシなんぞ朝飯前だ!」
こいつの沸き上がる自信はどこから来ているのだろうか。
俺も見習いたいところである。
いつかは俺もシュベルトのように単独で魔物を討伐したいものだ。そのためには魔術の研究と剣術の成長が大切だな。
そういえばこの間剣術を教えると言ったのになぜ教えてくれないのだろう。
まあ良い機会だ、今聞いてみるか。
僕も父さんみたいに強くなりたいです!
そろそろ僕に剣術を教えてください!
「おぉロイエー!良い心得だな!確かにそろそろ6歳だし教えてやりたいんだが…剣がなくてな…」
いつも使っているのは?
「あれは切れ味が良くてな…ロイエに怪我をさせてしまうかもしれないんだ…」
「だから今木剣って言う木で作られた剣を探しているんだ」
木剣か、木剣に使われる木は確か、この西の大陸では生えないんだったか、草属性の魔法を覚えたら作ってみるか。
わかりましたお父さん!それまで木の枝で素振りをしときます!笑
「ロイエは本当に、努力家だなぁ…」
「俺はそんなお前を心の底から愛している。俺はロイエの父親で幸せだ。」
シュベルトは笑顔である。だが、どこか悲しそうにも感じた。
なんだろうか、この言葉を聞いた瞬間、俺の心のモヤモヤが軽くなったように感じた。
多分、前世が悪いと言うわけではない。
だけど俺は今、前世では感じなかった幸せと、温かさを感じている。
お父さん笑!痛いですって!
「お父さんだってたまには可愛い息子をよしよししたいんだ!フライエばっかいつもずるいぞ~!!」
…
「いつもありがとな…ロイエ」
このときのシルヴァルは少し悲しそうな顔をしていた気がする。なんだろうか…今日は少し悲しそうだ。
「じゃあロイエ今日はもう遅いから寝よう!今日はちょっとだけ忙しくて読み聞かせはできないんだ」
わかったよお父さん、じゃあおやすみなさい!
「ごめんよ…!おやすみ」
俺は自分の寝床へ戻った。
だが1つの疑問が頭をよぎる。
今までシュベルトが読み聞かせをできなかった事なんて魔物討伐でいないときくらいだったはずだ。
しかも悲しそうな顔をしていた。ものすごく気になる。
少しだけで良い、話をこっそり聞いてみよう。
ドアを少しだけ開け、耳だけを出して、聞いてみた。
「ロイエはそろそろ寝たかな。アイツが自分から剣術を教えてほしい。なんて言うとはびっくりしたぜ…てっきり魔術を極めていくのかと思っていたから気を遣っていたんだけどな。」
「ロイエはずっと頑張っているからね!私の手伝いとかもしてくれようとしてるの!」
「おぉそれはいいお嫁を連れてきそうだ…」
「そうね笑」
…
「ところでフライエ、大事な話があるんだ…」
「そんな改まってどうしたのよ」
「最近この村だけではなく世界全体で魔物の数が増えてきている、だから稲の仕事を辞めて、冒険者に戻ったほうが良いのかと思ったんだ。」
フライエの体が震えた、これは冒険者への怖さでない。
怒りだ。
「子供の事も考えて言ってる訳?万が一それで私達が死んだらロイエはどうするのよ!?」
シュベルトは歯を食いしばりながらおもいっきり机を叩いた。
「あぁ…そんなことは分かってるよ!!だけどよ…今も魔物が増えることによって沢山の命が失われているんだぞ!?救える命が…消えていってるんだぞ!!」
そうか…この村がたまたま魔物があまりでない村なのであって、ほかの村や町は魔物の被害が数多くでているのか。
「フライエ…俺は1人でもいくぜ……」
「まってよ…!私、お腹には新しい子供もいるのよ!?今日のあなた、なにかがおかしい…」
2人目ができたのか!?俺に弟ができるのか!ってまだ弟とは限らないか、妹かもしれない。
……
「死んだんだよ…」
「みんな……親父も兄も昔のパーティーの仲間も全部。」
「もしかしてラスクの街が!?」
「あぁ…」
「2年後には旅立つ……」
まさか…シュベルトが旅立つのか…?
俺はまだ、まともに外にもでたことが無かった。
だからどんな事が待っているのかなんてわからない。
だが、話を聞く限り、シュベルトがこの家に帰ってこれる保証はない。
「じゃあ…ロイエはどうするのよ…!!!」
「大学に行かせる。」
「どうゆう事よ!?」
「カノア魔法大学に行かせる。」
なぜだろう少し聞き馴染みのある名前な気がする。
多分前世で聞いた単語だ。だが魔法大学なんて、そんなところに行かせられるお金はあるのだろうか。
「アイツには魔法の才能がある。だから、7歳になったら冒険者にし、推薦を貰うんだ。」
そうか、そしたら入学金免除的なのがあるのだろう。
「あなた馬鹿なの!?7歳よ!?」
「知っているさ…だけどこれしか安全な方法はないんだ…カノア魔法大学には寮だってついてるし、入学金免除なら、ご飯だって無料でついてくる…」
「だからそれまでに俺がきっちり鍛えて絶対に入学させてやらないとな…」
「わかったわ…私もできるだけのことはする」
「ありがとう…あとこれはまだロイエには伝えないほうが良い…アイツの事だから考えすぎてしまうかもしれない。」
「わかったわ…」
申し訳ない、全て聞いてしまっていた。
まあ知らないふりをしよう。
にしても魔法大学か、面白そうだな。




