9話
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「ありがとう朝比奈さん」
「いいから寝てて」
「うん」
楓や明照が暮らすマンションは一人暮らしをするには贅沢な物件で、リビングや寝室なども広々としている。
楓はその広大なスペースを物置として使ってしまっているので、部屋はどちらかというと汚い。
しかし、そんな彼女とは反対に明照の部屋はちゃんと整理整頓されており、楓は綺麗な部屋だなと思った。
「それで薬は飲んだの?」
それから彼女は彼の状態を確認するために質問をする。他人の看病をしたことが無い楓は、事前にインターネットで何を聞けばいいのか調べてから来ていたのだ。
「飲んでない。というか家に風邪薬なんてないんだよね」
「そう、熱は測った?」
「朝は測った」
「じゃあまた測って」
「うん」
「ちなみに朝はどれぐらいの体温だったの?」
「38度ぐらいだったと思う」
「全然大丈夫じゃ無いじゃない」
(確かに具合悪そうだったけど……そんなに熱があったなんて…)
体温が38度もあれば高熱の影響で苦しくて,何もする気が起こらない。
楓は自分が高熱を出した時のことを思い出して思った。
「でも朝比奈さんが看病してくれなんて、風邪になってむしろよかったよ」
「よくないわよ。そうだ、これも買ってきたから使って」
そう言って楓は冷感シートを渡す。明照の家に行く前にドラッグストアに寄って色々と買っておいたのだ。
「ありがとう。本当に助かるよ」
「あと、薬も買ってきたから。ご飯は食べた?」
「まだ」
「食欲はある? アイスとかドリンクゼリーも買ってきたんだけど」
「ある」
「それか、うどんとかなら作れるけど?」
「ホントに…! 食べたいな!」
「分かったわ。じゃあ作ってくるから待ってて」
「うん」
「あれよね、調理器具ぐらいあるわよね?」
「あるよ。朝比奈さんの手料理か、今から楽しみだなあ」
「期待してもそんな凄いものは出てこないからね」
「うん。期待してる」
「ホントに大したものは作れないからね。出来たら起こすから、もう大人しく寝てて」
「そうするよ。にしても…」
「何よ?」
「なんだか母さんみたいだなって」
「ちょっと、誰がお母さんよ! こんな大きい子ども産んだ覚えはないわよ!」
「あはは……そうだね。僕的には看病してくれてる彼女だったら最高なんだけどね」
「な、なに言ってるのよ! い、いいから早く寝なさい!」
「はーい」
それから10分程で明照は眠りにつき、楓はうどんを作りに台所へ向かった。
勢いで看病をしに来てしまった楓だが、そんなことをしたことが無い彼女としては、とりあえず何とかなってそうなことに安堵するのだった。




