10話
「起きてる?」
「うん、起きてるよ」
「じゃあうどん持ってくるわね。お皿も適当に使うわよ」
「了解。ありがとね」
楓は寝室から台所に戻ってうどんをお皿によそう。
実はうどんを作り出してから、麺つゆがこの家にあるのかどうか知らないことに楓は気がついたのだ。
そのため楓は大慌てで麺つゆがあるかを確認をした。
そして無かった場合は、彼女の家にも麺つゆはないので、自分の家にある小分けにされた鍋の素を使おうと楓は考えていた。
ちなみに味はとんこつ醤油である。病人に与えるにはどうなのかと彼女は思ったが、幸いなことに堂林家には麺つゆが存在したので楓は安堵したのだった。
「ほら、持ってきたわよ」
楓はそう言って部屋のドアを開けて中に入る。
「ありがとう。美味しそうだね」
「それはどうも」
そのまま彼女はうどんを乗っけたお盆を明照に手渡した。
「じー……」
渡されたうどんを食べずになぜか彼女を見つめる明照。
「な、なに? 変な声出して」
その視線に耐えきれず、怪訝な表情を浮かべた楓は彼に質問する。
「いや、食べさせてくれないのかなーって」
「は? 嫌よ」
「うわー、即答か」
「ふざけたこと言ってないで早く食べて」
「冷たいなー。他の女の子なら喜んでやってくれるのになー」
(は!? モテ自慢ですか!? というか病人のくせに元気だな…! ホントに38度もあるのかよ…)
「残念ながら私は他の女の子とは違うので。別に貴方こと好きじゃないし」
くたばれイケメンと彼女は内心で思った。
「あー、そっか」
「なによ」
「あーんは恥ずかしいもんね。朝比奈さんにはハードルが高いよね」
「いくらなんでもそんな安い挑発には乗らないわよ」
「あーん」
「ちょっと! なに無視してんのよ!」
「いいじゃん。減るもんでもないし、これでも病人なんだから甘やかしてよ朝比奈さん」
「それとこれとは別だから。というかそんなに元気なら私帰っていいわよね」
「えー。このままじゃせっかく作ってもらったうどん食べれないよ」
「なんで急にわがままになってんのよ……普段はそんなんじゃないじゃない!」
「病人だからかな。どこかの誰かに傘を貸したら風邪を引いちゃったんだ」
「さっきまで大丈夫とか言ってたじゃない…」
「いやー、好きな女の子が看病してくれるんだから、どうせなら甘えようかなって」
「本当に帰るわよ……!」
(誰が「あーん」なんてそんなことするか!)
「残念だけど自分で食べるよ」
「そうして」




