4話
「ほーれ、席につけ」
「俺の名前は山田次郎。お前らの担任を務めることになった。1年間よろしくなー」
全員が席に着いたのを見て、このクラスの担任が話し始める。
「それじゃあ席順に自己紹介でもしてもらうかー。それで今日は解散なー」
またかと楓は思った。席順と同じく自己紹介も彼女から始まることが多く、何より彼女は自己紹介が苦手なのである。
楓は心の中で特に話したことなんかないやいと毒づいた。
「じゃあ朝比奈から頼む」
「はい」
しかし、今年の彼女は一味違う。高校生活で最高のスタートを切るため、前日から自己紹介で話す台詞を考えてきたのだ。
「朝比奈楓です。好きな食べ物は甘いもの、嫌いな食べ物は辛いものです。1年間よろしくお願いします」
(よし、無難に乗り切った! 中学の時みたいな失敗はしなかった!)
楓から始まった自己紹介は順調に進行し、最後の生徒の番が終わる
そうして担任の山田が少し話すとホームルームが終わり、楓の高校生活1日目が終了した。
・・・
(疲れたー)
家に帰るなり楓は着替えることもせずにベッドに飛び込んだ。
彼女は高校生になってから一人暮らしをしている。
もともと1人で過ごすのが好きな楓にとっては快適な時間なのだが、家にずっと誰もいないということに少し寂しさも感じていた。
「お腹が空いた…」
そのままのんびりとベッドの上で携帯をいじっていたのだが、楓の身体を突如として空腹感が襲う。
「なにかあったっけ?」
彼女は食料を求めて冷蔵庫を開ける。しかし、無情にも簡単に食べれる物は入っていなかった。
「なんか買いにいこ…」
めんどくさいなと思いながらも、空腹には勝てず、楓はしぶしぶベッドから起き上がる。
そして制服から私服に着替え、エコバッグを持って家を出る。
「あ」
彼女が家を出て鍵を閉めていると、ふと横から声が聞こえてくる。
その声に反応して楓が振り向くと、そこには学校で彼女とぶつかった男子生徒の姿があった。
「貴方は朝の」
(学校で女子にモテまくってたイケメン野郎)
「あ、さっきの子。あの時はぶつかってごめんね、怪我とかしてない?」
(ちゃんと前を見とけよ! 美少女たる私が怪我でもしたらどうすんだ!)
「いえ、大丈夫です。私の方こそちゃんと前を見てなかったので」
内心では怒りながらも、表面上は丁寧に返事をする楓。
「でも驚いた。まさか君がお隣りさんだったなんて」
「そうですね。私も驚きました」
(最悪だよこの野郎)
「君の名前は? 俺は堂林明照。これからはお隣りとしてよろしくね」
「私は朝比奈楓です。よろしくお願いします」




