3話
入学式が終わり、新入生たちはそれぞれの教室に向かう。ちなみに楓のクラスは1年2組だった。
教室に入ると黒板に席順が書かれた紙が貼っており、楓の席は廊下側で一番前の席となっている。
新学期最初の座席は出席番号順になっていることが多く、あから始まる苗字を持つ彼女はこの席になることが多い。
楓はそのことに不満を持っている。そのためこの時期はいつも早く席替えしないかなと思うことが多いのだ。
しかし、今回の座席について彼女は満足していた。
なぜなら楓の隣の席に座っていたのがとびきりの美少女だったからだ。
その少女は茶髪をミディアムボブにした、明るそうな雰囲気の女の子で、出来ればお近づきになりたいと楓は画策している。
「朝比奈さんだよね? 私は新山美咲! よろしくねー」
彼女がそんなことを考えいると、隣から声をかけられた。
「うん、よろしく」
まさか向こうのほうから声をかけて来てくれるとは想像していなかった楓。新学期早々に幸先のいいスタートを切れたことに彼女は喜んだのだった。
・・・
「ねぇねぇ! あれが噂になってる堂林くんじゃない!?」
「カッコいい!」
「連絡先聞いちゃう!?」
「え! 私も聞く!」
「あれ? なんか外が騒がしくない?」
楓が美咲と雑談をしていると、教室の外からは女子生徒たちの賑やかな声が聞こえてくる。
「あー、あれじゃない」
「あれ?」
「隣のクラスの堂林明照くん」
「有名なの?」
「すっごいイケメン」
「へー」
(くっ…イケメンめ…女の子たちにチヤホヤされやがって)
「朝比奈さんは堂林くんに興味なさそうだね」
「んー、そうだね。というか、苗字じゃなくて名前で呼んでいーよ」
「了解。じゃあ私のことも美咲って呼んでね楓」
「分かった。あ…」
「どうしたの?」
「ううん、なんでもない」
(廊下でチヤホヤされてるの、さっき私にぶつかってきたイケメンじゃん! 入学初日からモテやがって! 私も一度でいいからあんな体験したかった!!)
あまりの羨ましさに、楓は心の中で血涙を流した。
「本当にー? なんか怪しいなー」
「本当に。なんでもないよー」
「というか、いま廊下の方を見てなかった? 口では興味ないと言いつつも、本心では堂林くんに興味ある感じ?」
「いや、ただ凄い人気だなって見てただけ。そういう美咲はどうなの?」
「確かに堂林くんはイケメンだと思うけど…」
「思うけど?」
「私……彼氏いるから…」
(可愛いなおい! こんな美少女を独り占め出来るなんて彼氏ずるすぎでしょ! 足の小指タンスにでもぶつければいいのに!)
恥ずかしげに頬を赤らめる美咲の可愛いさに楓は心を撃たれ、そして本日二度目の血涙を流すのだった。




