12話
12
「いやー、朝比奈さんとデートできるなんて嬉しいな」
楽しげに明照は言った。
「別にデートじゃないから…勘違いしないでよね」
(誰がアンタとデートなんてするか!)
「まあ、そこは感じ方の違いだからね。僕はデートだと思って行くことにするから」
「なにそれ……勝手にして」
「うん、勝手にするよ」
「もうなんでもいいから早く行って」
「え、一緒に行かないの?」
「行かないわよ」
「なんで?」
「貴方と一緒に登校なんかしたら目立つじゃない。自分の人気ぐらい分かってるでしょ?」
「別によくない?」
「よくないわよ」
「朝比奈さんだって男子から凄い人気だよ」
「だから?」
「僕がいなくても充分目立ってるじゃん」
「付き合ってるわけでもないのに、あらぬ疑いがたったら嫌だもの」
「えー、しょうがないなぁ」
・・・
「きゃあああ!」
「カッコいい!」
女子生徒たちの黄色い声が教室内に響く。
入学してから少し時間が経過したが、堂林明照の人気は日に日に上昇している。
彼と同じ1年生だけではなく、上級生までもが見に来ているのだ。
「くそ! なんなんだあのイケメンは!」
「奴になんか欠点ないのか! せめて足が臭くあれ」
「机に足でもぶつけてしまえ!」
「あの男が居なければ俺はモテモテで美少女ハーレムを作れたのに!」
「いや、それだけはない…」
そして女子からの人気とは正反対に、男子生徒たちからの嫉妬も凄いことになっている。
(今日も今日とてすごい歓声。やっぱり一緒に登校しなくて大正解だった)
そして楓はそんなクラスの惨状を見て、自分の選択は間違っていなかったと確信した。
「あそこまでの人気だと大変そうよね」
横の席に座る美咲が口にする。
「そうかも」
彼女からみたら、女子にモテるイケメンというのは他の男子生徒と一緒で憎たらしい存在。
しかし、一方であれだけ目立ってしまうと大変だろうなという気持ちもあった。
実際に楓も男子生徒たちにチヤホヤされて嬉しい反面、しつこく連絡先を聞かれたりとめんどくさい時も多々あるので、明照の気持ちが少し分かるのだ。
そんなことを考えながら楓が女子にチヤホヤされている元凶を見れば、たまたまこららを向いた明照と目が合う。
そして、あろうことか彼女を見ながらウインクしたのだ。
それを見た楓は慌てて目線を隣りに座る美咲に戻した。
「きゃー! 堂林くんが私にウインクしたわ!」
「あー! 尊い!」
「推せる!」
どうやら周りの女子生徒たちは今のウインクが彼女に向けられたものだと気がついていないようで、それが分かった楓はほっとするのと同時に明照に怒りを覚える。
(あの野郎! 危ないことしやがって!)
「う、うん? どうかしたの美咲?」
しかし、1人だけ真実に気がついている人物がいた。
その少女は楓に近づき囁いた。
「今のウインクは絶対に楓だったよね」
「え…ち、違うんじゃないかな? たまたまそう見えただけじゃないかな…」
「この前もそう言ってたけど、今のは絶対に貴方だったわ」
「あは、あははは……」
(ば、バレてる……!)




