第6話 「見下していた元仲間が手のひら返ししてきたが、もう遅い」
「……おい、あいつ……本当にレインなのか?」
ざわめきが止まらない。
さっきまで“役立たず”と呼ばれていた俺を見る目が、完全に変わっていた。
「すげえ……」「完全に別人じゃねえか……」
そんな声が、あちこちから聞こえる。
——当然だ。
俺自身が、一番驚いてるんだからな。
「レイン……!」
振り返ると、受付の女性が駆け寄ってきた。
「さっきの討伐……本当にあなた一人で……?」
「ああ」
軽く答える。
「フェンもいるけどな」
「ワン!」
フェンが元気よく鳴く。
その姿に、周囲がどよめく。
「やっぱりあの神獣……」「とんでもないな……」
「……レイン」
低い声が、背後から響いた。
振り返るまでもない。
「レオンか」
ゆっくりと振り返る。
そこにいたのは、明らかに余裕を失った男だった。
「……さっきのは、確かに認める」
「へえ?」
意外な言葉に、少しだけ眉を上げる。
「だが、お前一人でここまで強くなれるはずがない」
疑うような視線。
——まあ、そうなるよな。
「で?」
俺は腕を組んだ。
「何が言いたい?」
一瞬、沈黙。
そして——
「……戻ってこい」
ギルドが静まり返った。
「は?」
思わず聞き返す。
「俺たちのパーティーにだ」
レオンが言う。
「お前の力は認める。あの神獣も含めてな」
まるで“上から”の言い方。
だが、その奥にあるのは——焦りだ。
「今なら、前のことは水に流してやる」
……はは。
思わず、笑いが漏れた。
「何がおかしい?」
レオンが眉をひそめる。
「いや……」
俺はゆっくりと顔を上げた。
「誰が戻るって?」
空気が凍る。
「お前らが俺を追い出したんだろ?」
一歩、近づく。
「装備も全部奪って、役立たず扱いして」
さらに一歩。
「それで、今さら“戻ってこい”? ふざけてるのか?」
「……っ」
レオンの顔が歪む。
「なあ、レオン」
俺は静かに言った。
「俺にはもう、相棒がいる」
「ワン!」
フェンが誇らしげに鳴く。
「お前らなんかより、よっぽど頼れるな」
その一言で——
レオンのプライドが、完全に砕けた。
「……調子に乗るなよ」
低く唸るような声。
「お前が強くなったのは、その神獣のおかげだろうが」
「だったら何だ?」
即答した。
「力を使いこなせない奴より、よっぽどマシだ」
「……!!」
言葉を失うレオン。
周囲の視線も、完全に変わっていた。
「レイン!」
別の冒険者が声をかけてくる。
「よかったら、俺たちと組まないか?」「うちのパーティーにも来てくれ!」
次々と声が上がる。
——完全に立場逆転だ。
「……」
レオンが何か言おうとするが、言葉が出ない。
もう、誰もあいつを見ていない。
「悪いな」
俺は軽く手を振った。
「しばらくは一人でやる」
「ワン!」
フェンと目を合わせる。
それだけで、十分だ。
「レオン」
最後に、もう一度だけ声をかける。
「忠告しておく」
振り返らずに言った。
「もう俺に関わるな」
一拍置く。
「次は——容赦しない」
その言葉に、誰もが息を呑んだ。
そして俺は、その場を後にする。
もう振り返ることはない。
後ろに残るのは——
完全に置いていかれた、元仲間たちだった。




