第29話 「観測者の正体を追え——新たな街で“世界の裏側”に踏み込んでしまいました」
「……とりあえず、戻るか」
俺はそう言って歩き出した。
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「そうね」
リリアも頷く。
「ここにいても、あの“観測者”の情報は出てこなさそうだし」
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「ワン!」
フェンも元気を取り戻している。
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崩壊しかけた領域を抜け、元の世界へと戻る。
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「……やっぱり、こっちの空気の方が落ち着くわね」
リリアが深く息を吐く。
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「ああ」
俺も軽く肩を回す。
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「で、これからどうするの?」
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「情報集めだな」
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「観測者、か……」
リリアが少し難しい顔をする。
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「正体も目的も分からないって、かなり厄介よ?」
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「だからこそ、だ」
俺は前を見据える。
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「知らないまま進むのは危険すぎる」
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「……確かにね」
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少し歩いたところで——
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街が見えてきた。
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「……あれ?」
リリアが目を細める。
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「こんな場所に街なんてあった?」
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「いや……俺も初めて見るな」
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高い壁に囲まれた街。
門の前には、武装した人間たち。
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「警備、やけに厳しくない?」
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「何かあるな」
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近づくと、門番がこちらを睨む。
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「止まれ」
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「この街に何の用だ」
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「情報を探してる」
俺は正直に答える。
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「観測者って言葉、聞いたことあるか?」
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その瞬間。
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門番の表情が、変わった。
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「……どこでそれを聞いた」
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「やっぱり知ってるな」
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「答えろ」
一歩前に出てくる。
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空気がピリつく。
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リリアが小さく呟く。
「……これ、ヤバいやつじゃない?」
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「かもな」
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だが、引く気はない。
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「会った」
俺ははっきり言った。
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「そいつに」
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沈黙。
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門番たちが、顔を見合わせる。
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そして——
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「……入れ」
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「は?」
リリアが驚く。
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「ただし——」
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門番の目が鋭くなる。
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「勝手な行動はするな」
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「……どういうことだ?」
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「中で説明する」
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門が、ゆっくりと開く。
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街の中に足を踏み入れる。
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その瞬間——
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「……なんだこれ」
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違和感。
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人々の視線が、すべてこちらに向けられている。
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「歓迎、って感じじゃないわね……」
リリアが小声で言う。
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「むしろ——」
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「監視されてるな」
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その時。
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「こちらです」
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黒い服を着た男が、声をかけてきた。
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「上の者が、お待ちです」
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「上?」
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「観測者について、知りたいのでしょう?」
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「……!」
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俺とリリアが顔を見合わせる。
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「……話が早いな」
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「ええ」
男は静かに頷く。
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「この街は——」
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「“それ”を扱う場所ですから」
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意味深な言葉。
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「行くぞ」
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俺たちは、その男の後を追う。
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街の奥へ。
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さらに深く。
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「……近づいてるな」
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世界の裏側に。
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確実に。




