第12話 「黒幕の気配——倒したはずの敵は“まだ終わっていなかった”」
「……消えた?」
リリアが呆然と呟く。
倒したはずの魔物の体は、完全に崩れ——
黒い霧となって、空へと消えていった。
「こんなの、見たことない……」
「俺もだ」
腕を組みながら、空を見上げる。
ただの魔物じゃない。
それは、最初から分かっていた。
だが——
「ここまで異常だとはな」
⸻
「ねえ、レイン」
リリアが真剣な表情で言う。
「これ……絶対に誰かが関わってる」
「ああ」
即答だった。
「自然に起きた現象じゃない」
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フェンが低く唸る。
「グルルル……」
その視線は、ずっと一点を見ていた。
「……あっちか」
俺はその方向を見据える。
森のさらに奥——
いや、それよりもっと先。
⸻
「行くの?」
リリアが聞く。
少しだけ迷いが見える。
当然だ。
さっきの相手ですら、あれだけの強さだった。
その“元”がいるとしたら——
「危険すぎるわ」
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「だな」
俺はあっさり認めた。
「普通なら帰る」
「……なら」
リリアがほっとした表情を見せる。
だが——
「でも」
俺は笑った。
「普通じゃねえだろ、俺たち」
⸻
「……ほんとにね」
リリアが苦笑する。
「付き合うわよ」
その目に、迷いはなかった。
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「決まりだな」
俺は一歩踏み出す。
「黒幕だろうが何だろうが——」
拳を軽く握る。
「全部ぶっ飛ばすだけだ」
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「ワン!」
フェンが元気よく鳴く。
その声が、不思議と背中を押してくる。
⸻
森を抜ける。
さらに奥へ。
空気が、どんどん重くなる。
「……ねえ」
リリアが小声で言う。
「これ、ちょっと嫌な感じしない?」
「ああ」
肌がピリつく。
明らかに、何かがいる。
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その時だった。
——ゾワッ
全身に、悪寒が走る。
「止まれ」
俺は手を上げた。
同時に、フェンが唸る。
「グルルルル……!」
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「……来る」
リリアが剣を構える。
静寂。
風の音すら、止まったように感じる。
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——パチン
何かが、弾ける音。
その瞬間。
空間が、歪んだ。
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「なっ——!?」
目の前に、“それ”は現れた。
人の形をしている。
だが——
明らかに人間じゃない。
黒い霧をまとい、顔は見えない。
「……やっと来たか」
低い声が、響く。
ぞくり、と背筋が凍る。
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「お前が、これをやってるのか?」
俺は睨みつける。
「……さてな」
曖昧な返答。
だが、その態度が答えだった。
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「面白い」
“それ”は、ゆっくりとこちらを見る。
「神獣の気配がしたから来てみれば……」
一瞬、間が空く。
「まさか、人間と契約しているとはな」
⸻
「……!」
リリアが息を呑む。
完全に見抜かれている。
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「お前、何者だ」
俺は問いかける。
すると——
“それ”は、わずかに笑った気がした。
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「名乗るほどの者ではない」
黒い霧が揺らぐ。
「だが——」
一歩、近づいてくる。
圧力が、一気に増す。
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「お前たちが踏み込んではいけない領域に来たことだけは、理解しておけ」
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空気が、凍りつく。
リリアの手が、わずかに震えている。
だが——
「関係ねえな」
俺は一歩前に出た。
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「邪魔するなら、倒すだけだ」
フェンが並ぶ。
「グルルル……!」
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沈黙。
そして——
“それ”が、笑った。
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「いいだろう」
黒い霧が、膨れ上がる。
「ならば——試してやる」
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次の瞬間。
圧倒的な“気配”が、解き放たれた。
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——これは、今までとは次元が違う。
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「……来いよ」
俺は構えた。
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物語は——
“次の領域”へと踏み込んだ。




