#8仮借軽
目を合わせられない程の圧によって、視界が狭まっていく。彼は、そんなことを気にせずに店員を呼んでいた。
お兄さんは何にします。
ぐっっえっえだまめで。
あっあとウーロン茶‥‥おねがいします。
一杯だけだと言われたが、頼めなかった。
店員が去った後、何もない時間が流れていく。
手持ち無沙汰で、ポケットにあるスマホを取り出したが、充電はなかった。
一定のリズムで真っ黒の板を突く。新しい客が入ってくる音がした。
お兄さんっていくつですか。
いきなり話しかけてきた。スマホを突いていればいいのに。
今までの行動、言動から推測すると、知らない奴を連れ回すとはどれだけ無神経で図太いのだろうと未知のものを探る気分になる。
20‥‥3か4です。
へぇ、僕今年で21なんですよ。
お兄さんやっぱりおにさんなんですね。
僕今___大行ってて、今日も友達遊びに誘ったのに先に帰られて、そんな時にお兄さんを駅で見つけて、いやこれ運命じゃないですか。
生き生きと話している。やはりこれは異世界の住民だ。
こちらお飲み物になりまーす。
空間を壊すように横から手が伸びてきた。
目の前に飲み物が入ったグラスが置かれた。
ほらっお兄さん、かんぱーい
笑みを浮かべた顔で、手に持ったグラスをジリジリと近づける。
互いの衝突によって、小さく乾いた音が鳴った。
彼を見ると、一度傾けただけで中身が三分の一減っていた。
こちらお食事になりまーす。
狭いテーブルに次々と皿が並べられていく。
卵焼き、刺身、厚揚げ、イカリング、フライドポテト、大盛りの白米。
先ほど入っていなかったものが、いくつか増えている。
自分の頼んだ枝豆は、そこに彩を添えるようにして置かれていた。
お疲れ様です。タケノハラです。
私はポテトフライが好きです。




