#7支指高
商業施設を出たら、日が沈んでいた。
長い間店を回ったのに、二人とも手提げ袋を持っていない。ただ店を回っていただけだ。
お腹空きましたね。居酒屋とかどうです。
腹は減っていないが、首を縦に振った。
食に興味がない。
あれに自分の足りない部分を補えるとは思っていない。
腹を満たすことはできない。
酒、タバコ。それらに含まれている物質だけが、頼りだ。
すぐそこにある居酒屋に入った。まだ仕事終わりの社会人はいない。
入った途端に、活気に満ちた声を浴びせられた。
前にいる彼の背中でも、受け止めきれないほどだった。
端の方の二人用の席に案内された。
向かい側に回った後にコートを脱いでいる。
彼は、店の雰囲気とアンバランスな存在感を放っていた。
皿がすぐに居場所を無くしそうなくらい狭いスペースを挟んで、向かい合う。
あーお腹すいた。何食べます。
メニュー表を差し出してきた。
受け取って、特に食べたいものはないが、メニュー表をめくる。
ビニール同士が離れて、新しくひっつく感触が、伝わってくる。
自然と、ドリンクの名前が連なったページを開いていた。
目に飛び込んでくる酒類に誘発されて、唾液が出る。
今すぐにでも飲みたいが、
どれも自分の手持ちの金額では払えない。
諦めるしかない。
自分に呆れて顔を上げた。その瞬間に目が合った。
よほど空腹なのか目が開き切っている
僕はこの刺身と唐揚げイカリング白米大盛りあと生頼みます。
お兄さんは何食べるんですか。
早口で自分の回答をせかしてくる。
自分は、あのっその‥
てっ手持ちがないので、君が食べ終わるまで待ってます。
何言ってるんですか、お兄さんにお金がないの知って連れてきたんですよ。僕が奢るんで食べてください。
食べてないから、そんなけったいなオーラ出してるんでしょ。
言い終わるのと同時に、戻そうとしたメニュー表を押し返してきた。
けったいなオーラとはなんだ。と言い返したくなったが、奢られる立場で言うのは良くない。
彼が年下だとしても、奢ってもらうなら割り切って下手に回ろうと思った。
最速でドリンクのページを開いて、なんの酒類を頼もうか吟味する。アルコールをとにかく入れたい。
目の前に手が飛び込んできた。人差し指を立てて、自分の視線を上に誘導してくる。
一杯だけですよ。
眉をひそめていた。人差し指の先が光を帯びている。そこにピントを合わせると目の前にいるはずの彼は自分には見えなかった。
お疲れ様です。タケノハラです。
居酒屋はワクワクします。




