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53 合流(ルイ視点)

 「殿下!!」

 行方不明に思っていた自国の第一王子が無事に戻って、騎士たちは大きな声出した。


 「殿下!御無事でしたか!」

 「デュフォール嬢は…ご一緒ではないですか?」

 リリアーヌが一緒じゃないことを察知し、騎士たちはザワザワし始めた。


 「リリアーヌは大神官に拉致された」

 「!大神官!?しかしなぜ…デュフォール嬢は確かに稀に見る才能をお持ちだが…戦争のリスクを負ってまで拉致する理由とはならないはずでは…」

 「僕にもその理由はわからないが、とりあえず、大神官は複数種類の魔法を使える人間だ」

 「大神官は人間ですか??それはまた…どうして…」

 「詳しい話は中で話そう」

 騎士たちと同じくらい、僕自身も混乱している。ただ、一つ確かなのは、リリアーヌはフェルナン大神官に拉致された。そしてなぜか、リリアーヌは初めて見るはずの男を、一発でその正体と実名を当てられた。不可解なことが多すぎる。


 「殿下、殿下と同行してこちらにきたエルフの人たちはどうしましょうか?」

 「ああ、彼らは神殿とは別立場の一般人だ、道中襲ってきたら捕獲するつもりだったが、殺傷力もそのつもりもないらしい、森に女子供も隠れているが、とりあえず全員我が軍に引き入れて監視下に置こう、神殿の情報も必要だし」

 「承知いたしました!」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 数日ぶりに食事をとり、湯浴みをした。

 ようやく栄養を取れた体は、少し冷静になれた。

 フェルナン大神官は明らかに桁違いの魔法使いで、エルフの神官らと違って、周囲から魔法質の取り込みを必要としなかった。つまり、彼は人間で、複数の種類の魔法質を持っている。いや、複数だとお互い衝突し合って、魔力衝突症になってしまうから、彼はおそらく全種類の魔法質を持っているだろう。

 全種類の魔法質を持っていると、魔力消費が激しいから、結果的に治癒魔法しか使えなくなるが、もし魔力が桁違いに多ければ、全種類の魔法質を持っている人間は全種類の魔法を使用できるのではないかという仮説は、昔から検討されてきている。


 「桁違いの魔力か…リリアーヌの魔力過多症と似ているな…」

 もしかしたら、リリアーヌの予想通り、このエルフ島には魔力過多症を病気としてではなく、無尽蔵に魔力を使っても体調を崩さない、何か特別なオーラが存在しているかも。

 実際、セレスタンでは車椅子なしの外出すら難しくなっていたリリアーヌが、エルフ島に上陸して以来、一度も体調を崩したことなかった。港に控えさせた治癒魔法師を一度も呼ばずに済むとは、とても想像できなかった。

 そして先日気を失う直前に感じたリリアーヌの魔力は、あれは間違いなく全種類の魔法質を統合した治癒魔力だった。


 「フェルナン大神官とリリアーヌ…二人とも全種類の魔法質を持ち、魔力が無尽蔵に多い…これが…フェルナン大神官がリリアーヌを拉致する理由か…」

 リリアーヌを拉致して何するつもりかはわからないが、二人の共通点は、おそらく拉致の目的と関連しているだろう。


 騎士たちの話では、僕らが拉致されてから10日経った。

事件当日から風魔法師を乗せた高速船がセレスタンに向かい、恐らくあと数週間程度で、セレスタンから戦争規模の軍事力がここに到達するだろう。

大神官が出れば、ここにいる戦力だけでは抵抗しきれないのではないかと不安に思っていたが、今のところ大神官が出てくる気配はない。もちろん、仕掛けられても、全力で守り切るまでのこと、僕が厳選した騎士隊と魔法師隊は、攻撃よりも守りの方に長けた人ばかりだから。


「はぁ…リア…」

10日経ったということは、リアも拉致されて10日が経った。今リアがどこにいて、どんな扱いを受けているのか…考え出すと気が狂いそうになる…

「どうか…無事でいてくれ…」

僕は、リア以外の人と生涯を共にするつもりはない。

待ってて、必ず助けに行くから、それまで…どうか、どうか無事でいてくれ…


僕は神に祈りを捧げた。

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