黒い怪物
───────── バキッ ─────
「…あっ……!」
…おじさんの…
翼が………
『…いいんだ。これくらい……気にするな。』
【ぺっ……まずい。………お前…なぜ…受刑者を庇う?】
『…私の……希望だから。』
【希望………だと?】
────── フワッ ………
『はぁ……はぁ……賢斗……大丈夫か?』
「…おじさん…ごめんなさい。僕が、声を出したから……」
『…君を失うくらいなら…翼なんて無くていい。』
「でも……」
ゴオォォ…ォォオゴオォォ…ォォオオォォ…
【一瞬の隙を狙うとはね……お見事。でも…此処は、我のテリトリー。絶対に…逃げられないですよ?…ヌフフ。】
…逃げる?
僕は……逃げたいわけじゃない。
けれど、こんな怪物と戦えるような力もない。
でも…この存在を知ってしまった以上、放置するなんてできない!
『…賢斗?』
僕は…この怪物が、許せないんだ!
『…ダメだ。怒りでは……何も、解決できない。』
そうかもしれない…
でも…
「逃げられないなら…最後に、聞きたいことがある。」
【ほう…開き直り?…ヌフフ……悪くないよ。……何が知りたい?】
「名を…あなた程の脅威なら、さぞ、立派な名があるのでは?」
【我が名を知って…何の意味がある?】
「僕は、自らの命を絶った愚か者です。」
この怪物について、気がついたことがある。
「そんな僕が…あなたという、壮大な存在を知ってしまった。これは、感謝するべきことだと思いました。」
今までの言動から、感じたことだけど…
【…ほう?………感謝?】
恐らく…長い時間をかけて、ここまでの勢力にしたという…プライドがある。
「そうです。あなたに処刑してもらえるなんて…こんなこと、本来なら有り得ないでしょ?」
だから…
畏敬の念を込めて、対話をすると…
【…ふむ……ヌフフ…】
気分が良くなるのか…
気が緩んで、隙ができるんだ。
「無になるその瞬間まで…あなたの名を脳裏に焼き付けておきたいんです。後悔したくないので…」
【…なるほど……】
その隙に…
こいつの、欲しい言葉を入れてやればいい。
「これは、僕の…懺悔です。」
恍惚としている……
僕の読みに間違いがなければ、名にヒントがあるはずなんだ。
生と死の狭間から、出られる方法が……
言ってみろ!
【…結論を言うとね……我に…名は無い。】
…無い?!
─────────── ゾクッ…
一瞬で、目の前に…!
赤黒い眼が、妖しく光る…
【ヌフフ……だが……極稀に…此処に迷い込む人間に…呼ばれた名があるんだよ……】
「…ゔっ!」
【よく……聞けよ?】
細い舌が…耳をなぞるように……
【嫉妬の悪魔………レヴィアタン…とね…】
………嫉妬の悪魔?
【とても…美しい響きで…気に入ってるよ…ヌフフフ…】
嫉妬…………?




