追跡者
ゴオォォ…ォォオゴオォォ…ォォオオォォ…
…ォォオゴオォォ…ォォオオォォ …ォゴオオォ…
「吉岡さんのことが…好きなの。」
なんでだよ……
なんで…言ったんだよ!
……ォォオゴオォォ…ォォオオォォ…
そんな言葉…
聞きたくなかった。
「そっか…」
…ゴオォォ…ォォオゴオォォ…ォォオオォォ…
変だな…
黒い雲が…
大蛇のように見える。
「いいね……お母さんは……」
大蛇に…気づかれた?
うねりながら…近づいて来る。
「賢斗…?」
車窓に映る、僕のオレンジと…
血液のように赤黒い、大蛇の眼が……
……ォォオゴオォォ…
……重なった。
「…僕が、お父さんに殴られていた時も、お母さんには…その人が……傍に…いたんだもんね?」
沸々と、内蔵が溶かされるように…
熱く…胸が苦しい…
「…なんだよ。やっと、繋がったのに……」
こんなこと、言いたくない。
「僕は…いらないじゃないか!」
…痛い。
胸が…締め付けられる。
僕の全身を…
黒い大蛇が、締め付けているようだ。
息が苦しい……
「そんなこと、言わないで…賢斗…」
また、お母さんを泣かせてしまった。
お母さんの涙が…僕の頬にまで伝わっているのに…
何も感じない。
「車を止めて下さい。…ここで降ります。」
「何言って…」
「賢斗くん。サービスエリアで、少し休もう。高速では、止められないんだ。」
軽々しく…
───── 名前を呼ぶなよ! ─────
【…じゃあ、勝手に降りるから…いいよ。】
───── カチッ…
「…賢斗!?」
ゴオオオオオオォォ…
体が引っ張られる感覚は…分かる。
お母さんが差し伸べる手も…見える。
体が…軽いな。
宙に浮いた体が…
地面で転がった…………………?
「……いやああああぁぁぁ!!!」
急ブレーキの音が聞こえた…
ダメだよ…高速で止まったら…
危ないじゃないか!
そう…そう…ちゃんと、端に止めたね。
「………あ。」
トラック…
──────────────────
死後の世界には、厳しい掟があって…
魂の川の住人たちは…
来世で、人間として生まれてくるために、苦行をしている。
なのに…やっと、人間になれたのに…
自ら、命を絶つ人がいる。
自殺は…
死後の世界では、重罪に値するって…教わった。
僕のように、助かったとしても……
必ず、追跡者が現れて……
……処刑される。
────── フワッ ───────
風だ…
いつものように、風が吹いて…
僕の体は、何かに持ち上げられているみたい。
『賢斗…しっかりしなさい!』
その声は……
「…おじさん?」
でも…どうして、翼があるの?
どうして…
鳥の姿を…しているの?
漆黒の体に、鋭い眼が…金色に光っている。
「あなたは……何者なの?」
『私は………』
…ゴオォォ…ォォオゴオォォォ…
【ヌフフ……邪魔者……ですよね?】




