生と死の狭間
ここは…どこ?
何も無い…空間?
黒い雲は?
雨は止んだの?
夕暮れのような空なのに…
太陽も月も…見えない。
遠くは…霧がかかっていて、よく見えないし…
僕は…どうなったの?
「おじさん…?」
おじさんが、鳥になって…
【ヌフフフ………】
黒い大蛇が……
「……龍…?」
絵本で見たことがあるような…
龍によく似た頭部に、硬い鱗の肢体が…蛇のように蜷局を巻いている。
ここは、現実ではない…世界?
僕は、また…あの世界に…来てしまった?
死後の世界に………?
『賢斗、あれが追跡者だ。』
この…黒い龍が…
「…追跡者!?」
『此処では、追跡者から逃れることはできない。』
「ここって……?僕は…死んだの?」
『いや…君は、まだ生きている。』
生きているって……?
こんな、現実とは思えない状況で?
信じられない。
「僕は、どうなったの?」
『此処は…生と死の狭間だ。』
…生と死の狭間?
『交渉を試みる。…降りるから、しっかり掴まりなさい。』
────── フワッ ───────
大きな翼が広がって…
閉じる瞬間に、地面に足が着いた…
…え?!
「…お、お母さん?!」
地面……の下に、お母さんが見える。
お母さん…が、泣きながら…
抱きしめて…いる?
「……僕だ。」
僕の体を…抱きしめている。
あの人は…?
吉岡さんは…何をしている?
…どこかに、電話をしているみたいだ。
「お母さん!!」
上を見て!
すぐ上に、僕はいるよ!!
硝子みたいな地面の下に…
現実の世界が……
「…お母さん!……気づいてよ。」
割れろ…割れろ……こんな硝子、割れろ!
【…無駄ですよ?…ヌフ…】
「…!?」
…声が出ない!
────── フワッ ───────
『やめろ!…賢斗に近づくな!』
【ヌフフ…ご存知だと思いますが…受刑者を庇うと…ただでは済みませんよ?】
『久しきモノよ…話を聞いて欲しい。』
【…久しき?…………そんな、見苦しい知り合い…あ〜、その眼!……いましたね。】
『頼む。…少しで、構わない。』
【ヌフフ…あの誇り高い種族がね……我に頭を下げるとは……ヌフフ…いいでしょう。その代わり……】
…か、体が………
「う………!」
縛られて…身動きが取れない。
力が…抜けていく…
【どうでもいいお話でしたら…これを…飲み込みますよ?……ヌフフ…】
おじさん……助けて。
『…賢斗………』
【…さあ…お話なさい……ヌフフ…】
『まず、知りたい。以前よりも…遥かに力を増しているようだが、その理由を教えて欲しい。』
【…我の力について?…ヌフ……いいでしょう。】
…少し、縛りが緩くなった?
【積み重ね…ですよ。】
「ゔ………!」
龍の赤黒い眼が…
恍惚と卑猥に笑いながら、細長い舌を伸ばし…
首に巻きつく……
『…積み重ね……とは?』
【ヌフフ……自殺者を増やすこと…ヌフ。】
…自殺者を増やす?
自殺者は、魂の川には入れなくて…
すぐに住人に見つかって、取り込まれて…無になる。
自殺者が増えるということは…
人間として、生まれてくることが出来ない魂が増える……
…人口が減る?
『目的は、単純に人減らしなのか…それとも、こちらの世界を支配したいのか………教えて欲しい。』
【……ゲーム……だよ!】
…ゲーム?!
【……全て……黒くしたいの……ヌフ。】




