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2000 SHOCK ミレニアムショック  作者: dai
第一章 始まり
4/6

変化


一太は熱もすっかり下がり、体調も回復した。むしろ、今までよりも身体が軽く感じるくらいだった。

食欲も以前よりも増し、今朝は初めて健よりもたくさん食べた。

その様子を見た陽子は、嬉しさのあまり涙した。

健と雫は驚いていたが、正次郎は

「一太もやっと男らしくなってきたな!」と喜んでいた。


一太はなぜかなかなか満腹にならなかった。食べたくて食べていたというよりは、脳が食べろと命令しているような感覚だった。


学校に行くと、教室の前には美央が立っていた。

「桜井!おはよ!」と健が自然に言うと、美央も

「健くんおはよ!」と自然に返した。

一太は自分がいない間に二人の間に自然ができあがっているのを感じ、熱を出したことを悔やんだ。

しかし、

「お連れっ、いや、一太くん。元気になったんだね!よかった!」

と美央に言われ、感情はマイナスから一気にプラスになった。初めて自分のことを一太くんと呼んでくれたことに胸が踊った。


一時間目の授業は数学。一太が最も苦手な教科だ。普段なら、頭がボーッとしてきて考えるのが億劫になるのだが、今日はいつもと違う。何故か内容が頭にスッと入る。予習をしてきた時のように出される問いがすんなり解ける。予習は一度もしたことはないのだが。


その他の授業も凄く理解できたのだが、一番変化を実感したのが体育の授業だった。


バスケットボールだったのだが、敵味方問わず、動きが自分よりも遅く感じた。感じたと言うよりも、実際遅かった。考えていることも手に取るようにわかり、自分が次にすべきプレーを明確に体現することができた。


その姿を見て、皆驚いた。

ただ、やはり健にだけは勝てなかったし、考えていることも読むことはできなかった。

「やっぱり健には勝てないなぁと。」と一太が言うと、健は思いもよらない言葉を口にした。

「一太、お前もか。」

健は朝からの一太の変化を見て、あることを確信した。それはまさに自分が普段感じている感覚と同じだということだった。その感覚が何なのかは健もわからないでいたが、普通の人とは違う「力」を持っているということだけはわかっていた。


しかし、一太は健の言葉の意味を間違って解釈していた。

「お前もか?。。。まさか、お前も美央ちゃんのとが!!!」


一太は焦っていた。健にはどう足掻いても勝ち目が無いのを確信していたからだ。


「いや、美央ちゃんのことじゃ無い。まあ、いいや。そのうちわかるよ。」

と健は言い、去って行った。


一太にはさっぱりわからなかったが、とりあえず美央ちゃんのことでは無いとわかり安心した。



その日を境に、一太はスポーツ、勉強全てにおいて健の次になった。段々、自分の「力」が少し特別なものなのかもしれないと思うようになっていた。あのときの、お前もかという、健の言葉も恐らくはこのことなのだろうということも理解していた。

周囲は健と一太のことを「2人の天才」と呼ぶようになった。


美央とも3人でよくつるむようになった。美央はサッカー部のマネージャーになり、3人の時間がより一層増えた。一太は嬉しい反面、健に取られるんじゃないかという不安も感じていたが、健はそんな素振りは一切見せなかった。美央は2人に同じように接していた。

まるで、有名な幼馴染みの野球マンガの様な感じだ。



ある日の晩御飯の後、家族みんなでテレビを見ているとニュース速報が入った。


「東京駅前で、19歳の少年が40代の会社員に暴行。取り押さえようとした警察官3名にも暴行を働き、逃走中。会社員の男性はその場で死亡。警察官1名重症、2名は病院に搬送中に死亡。」


陽子と雫は、「恐いねぇ。」と人ごと程度の反応だったが、一太と健はその時、その19歳の少年が自分たちと同じ説明ができない「力」があるのだと確信した。


その日のニュースから数ヶ月のうちに、東京都周辺では同じような事件が数件起きたが、全て二十歳前後の男女の犯行だった。しかも、全員凶器は一切持っていなかった。素手での犯行にも関わらず、捕まる事なく現在も逃走中だ。


度々流れるニュースに、一太と健は自分もああなるのかもしれないという恐怖心を感じ始めていた。


だからこそ、美央と3人で過ごす時間はそうゆう気持ちを忘れさせてくれる貴重な時間になっていった。


「一太、健、お正月はどうするの?」と美央が行った。すっかり呼び捨てで呼ぶようになっていた。お連れの方からすると、大出世だ。


「特に決めてはないけど、一太の父ちゃんと母ちゃんの命日だから、家で大人しく過ごそうかな。」と健が気を使うと、


「いや、健!美央!初詣に行こう!雫も連れて行こう!」

と一太は言った。一太は元日を寂しい日にしたくなかった。健と美央がいるから大丈夫。そういう思いだった。


3人は初詣の約束をした。


そして、2001年元日。一太と健と雫が初詣に行く準備をしていると、テレビにまたあの男が映し出された。


「皆さんお久しぶりです!ハッピーニューイヤー。」

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