28 援軍と逃走
誤字脱字があるかも知れません。
後で修正しますごめんなさい。
「・・・武器破壊か。」
ロッカーが舌打ちして、手元を見つめる。
僕が狙ったのは、ダメージじゃなくて武器の損傷だ。まさかここまでうまくいくとは思っていなかったけど。
武器の耐久度は、適切に使っていればそうそう減る物じゃない。きちんと定期的に砥石などの耐久度回復アイテムを使うか、鍛冶屋に持って行って直してもらうかすれば問題は無い。
だけど、ある事をすると武器の耐久度は恐ろしい程減っていく。それが、攻撃対象と自身の攻撃力に大きな差がある場合だ。
と言っても、普通に戦っていれば問題はないけど・・・例えば、今みたいに《防御力が異常に高く設定されているような固定オブジェクト》に武器をぶつけたりした場合は、武器の摩耗が異常に早くなる。単純に言えば、布の束は殴ると痛くないけど岩を殴れば痛い、という訳だ。
そこら中に転がってる岩や木にも、当然そういった判定は存在する。石などのオブジェクトは、防御力が異常に高く設定されている。そういった物を攻撃した場合、よほど高性能な武器でない限りは武器の耐久度は大きなダメージを受ける。
「てめぇ、この斧オーダーメイドなんだぞ!どうしてくれんだぁ!?」
大声を上げて、やっとの事で立ち上がった僕を睨みつける山賊ロッカーさん。
(ひーっ、上手くいったけど殺意がものすごいんだけど!?)
見た所、ロッカーさんはもう武器を持っていないように見える。
格闘家でもない限り、武器が無くなれば攻撃力補正が大幅に下がって僕でも対処できる。
こいつはもう大丈夫だけど、後の10人のPKプレイヤーにボコボコにされる未来しか見えない。
「おーっと、そこの皆動かない方がいいよー?」
とアヤさんが急に声を上げた。えっ、どうしたんだろ?
「あ?なんだこのアマ?」
「いやいや、生産職のプレイヤーに武器破壊された気分はどうよー山賊ちゃん。」
「てめえおちょくってんのか!?」
顔を真っ赤にして怒るロッカーさん。
アヤさんって、怒らせる特技でもあるのかもしれない。
「いやいや、分からないかなー。私たちがここにいる意味。」
「は?」
「本当にバカだねー。何も策も無しに、私達だけで突っ込む訳ないじゃん。もうすぐ援軍が来るから。」
「なっ!?」
と驚きに目を見開くロッカーさん。
え?援軍?そんなの呼んだ覚えが―
「てめぇ、さてはここに来る途中で呼びやがったな!?」
「おー正解。PKのくせに頭は回るんだねぇ。」
アヤさんがニヤニヤしながら答えた。
あ、そういえば僕がここに着いて少ししてからアヤさん来たな。アヤさんのスピードなら僕を追い越してもおかしくないのに。その時に、メッセージか何かでフレンドを呼んでたりしてたんだ。
「・・・ここは引いてやる。お前ら、すぐに―」
「逃げられると思ってるのかしら?」
と聞き覚えのある声がした瞬間、ロッカーさんの近くに居た短刀使いのPKプレイヤーが消し飛んだ。
いや・・・異常な攻撃力の大剣による攻撃を食らって、プレイヤーのHPが0になって消滅したのだ。
「姉さんー・・・なにその攻撃力。」
「この人数で生きてたのねリクト。てっきり消し炭になってたかと思ったわよー?」
と大剣をブンブン振り回しながら姉さんが現れた。もう少しで消し炭になる所だったよ。
よく見ると、姉さんの後ろにまだ居る。あれは・・・青い髪の男の人。あ、確かカイさんだっけ。魔導士の。
「なっ・・・おい、あいつらは最前線プレイヤーじゃねえか!俺達じゃ叶わねえぞ!?」
「よりにもよって、なんてモン呼びやがるんだ!?」
と声を荒げるPKプレイヤー達。
最前線プレイヤーって・・・姉さん達って有名なのかな。
「さーて、そこの山賊だが強盗だが知らないけど。うちの可愛い弟に手を出したんだから、それ相応の報いは覚悟してるわよね?」
と大剣を構えながら姉さんは笑った。
あ、姉さん目元が全然笑ってない。この表情する時はあれだ、弱い者いじめする時の顔だ。
この顔をした後に待ってるのはロクな結末じゃない。ずっと一緒に暮らしてきた僕だからこそ分かる。
「ち、ちょっと待て!俺達は―」
「問答無用!」
と姉さんがロッカーさんに向けて走り出す。走りながら何かのスキルを発動したのか、大剣が青く光る。
「『アースブレイカー』!」
と叫びながら、ロッカーさんに斬りかかる姉さん。腕をクロスにしてガードするロッカーさんだけど、剣が直撃した瞬間にHPバーが消し飛んで消滅した。うわぁ、何この威力。
「な、なんだこの女の攻撃力!?」
「ば、バケモンだ!逃げろ!」
ロッカーさんが倒され、勝ち目が薄いと踏んだPKプレイヤー達が入り口向けて走る。
殆どのプレイヤーが素早さを重視しているのか、普通のプレイヤーよりも走る速度は早い。逃げ足は速いって奴かな?
アヤさんも姉さん達もそれを追わなかった。
姉さんの性格なら「残党狩りよ!」とか言いながら追いかけかねないけど、今回はそれをしなかったね。意外だよ。
「大丈夫かな?」
PKプレイヤー達を追い払い、岩の影で縮こまっていたプレイヤー・・・襲われてたプレイヤーには見覚えがあった。
少し前に火山入り口でモンスターを狩ってた時に見かけた、初心者装備パーティーのうちの1人だ。
後の人たちは、恐らくさっきのPK集団にやられちゃったんだろう。
「あ・・・えっと・・・」
見ると、女の子のプレイヤーだ。
薄い青のショートヘアの髪、小柄な体格。身に着けているのは初心者装備一式で、武器は杖を持っている。
「あの・・・ありがとうございました。」
女の子がペコリと頭を下げた。
「うん、いいよー。困った時はお互い様だし。」
僕は手を振って、女の子が何かを言おうとするのを止める。別にお礼が目的で助けた訳じゃないし。
女の子は僕たちにお礼を言った後、何かのアイテムを使って瞬間移動していった。
確か、移動結晶って言うアイテムだったっけ。街の入り口にワープできる緊急用アイテムだ。
雑貨屋でも売ってるけど、値段が結構張るから僕は買わなかったアイテムだ。
「俺の出番が無かったぞ。それにしても、カエデの攻撃力は異常だ。」
「あら、カイそれ褒めてる?」
「・・・。」
カイさんが若干震えている。
そりゃそうだよね。二次職についてるであろう前衛職のロッカーさんを、スキルを使ったとはいえ一撃で消し飛ばしたんだ。そりゃ怖いよ。
「それにしても、リクト君アレは意外だったなー。」
「え?」
「ほら、あのロッカーとかいう奴の斧を壊したでしょ?よくやれたねって。」
あーあの時か。あれ、よくあれだけ冷静に分析してやれたなーって僕自身でもビックリしてるよ。
少しでも間違えたら、僕は一瞬でミンチになってただろうからね。
「何が起こったかは知らないけど、リクトならそれくらい余裕でしょ?」
「僕はゲーム苦手だからね?」
「はいはい、そうねー。」
と姉さんはこっちをニヤけた顔で見ている。何か企んでそうな顔だなぁ。
ああいった顔って、「お代官様も悪よのぉ」って言いながらする顔だと思う。
「じゃあ姉さん、僕はちょっと疲れちゃったからログアウトするね。」
「え、もうログアウトするの?早くない?」
「時計見てみなよ・・・もう夕食間近だよ・・・?」
「えっ・・・ゲッ、本当ね。私はもう少ししたらログアウトするから、先に行ってきなさい。」
「分かったよ。」
そう言うと、リクトはメニュー画面を開いてログアウトを選択、FWOから離脱していった。
「・・・さーて、アヤ何か企んでるでしょ?」
「あははー、やっぱりカエデは分かった?」
アヤが笑いながらメニュー画面を開く。そしてパーティーを選択し、カエデ達のパーティーに参加した。
すると、カエデのマップに黒色の点滅が現れた。ゆっくりとしたスピードで、アクラの街に向かっているのが分かる。
「シーカーダガー。攻撃した対象にマーカーを打ち込み、追跡を用意にするスキルだな。お前も性格が悪い。」
「へへー、魔導士のくせに知ってるのねカイ。」
「そりゃな。だが、それはPKが使うスキルだぞ。」
「リコンの習得スキルが、殆どそういった類のスキルなのよね。」
事実、アヤが習得しているスキルは正面切って戦うには向いてないが、一対一で戦うには優秀なスキルが多い。
斥候という職業柄から来てるのだろうが、下手なアサシンなどよりも隠密性に優れるジョブなのだ。
「それで?アヤは何でそんなスキルを使ったのかしら?」
とカエデが聞いた。だが、その答えは分かり切っている。
「あいつらのギルドホームを突き止めて、私のフレンドで襲撃しようかなーって。」
「やる事がえげつないわよアヤ。」
予想通りの答えが返ってきて、カエデは頭をかかえた。
シーカーダガーは、カエデの記憶通りなら攻撃力補正がかなり低いスキルだ。わざわざそんなスキル使ったって事は、ダメージ意外に目的がある事は容易に分かる。
「それにしても、凄いわねリクト君って。いくら私でも、PK集団に助けるのが目的で突っ込めないわよ。」
「ああ、そうだな。生産職のくせによくやる。」
アヤもカイも、リクトの行動には驚いていた。
といっても、カイはアヤから聞いただけなのだが。
「あーまあね。あいつって昔からああなのよねー。」
「え?昔も似たような事あったの?」
「昔の話だけどね。陸人の友達が学校でいじめられてて、陸人がそれを見て止めに入ったのが始まりだと思うんだけど、あいつはそういった現場を見ると全力で止めに入るのよ。」
確か小学校高学年の話だったっけーと楓は思い返す。
あの時は傷だらけで家に帰って来たから、楓自身もビックリした記憶がある。
「それに、リクトって確かにゲームは苦手だけど、あいつは追い詰められた時に力を発揮するタイプなのよ、甘く見ると痛い目を見るわ。」
と楓は振り返る。
楓自身が得意なゲームでは楓は勝ちを譲らなかったが、将棋やオセロといった頭を使うゲームでは、逆転勝ちされた事が何度もあった。
「へぇー、意外な一面ね。」
見かけによらない物ねーとアヤは感心した。
優しそうな顔をしてるけど、やる時はやるのねあの子、とカエデは締めくくった。
「それじゃあ、私もログアウトするわね。」
「はいはい、お疲れさまー。援軍どうもありがとね、後は私に任せなさいって!」
あのPK集団にちょっかい出す気ね、とカエデは思ったが、あえて何も言わずにFWOからログアウトした。
岩とかのオブジェクトに関しては、モンスターハンターの黒岩みたいな感じですね。




