29 改良案と脅迫的顔合わせ
13万PV、28000ユニークを突破しました。
引き続きFWOをよろしくお願いします。
「ふむふむ、それでリクト君はその女の子を助けたんだー。格好良いね!」
「・・・よくやるよ。」
PK事件から数日たったある日の事、僕はキャット君のお店に居た。
と言っても、何か買う訳じゃない。ヴァイス君とキャット君と3人で、店の裏の部屋でゆっくりとくつろぎながら雑談していた。
「と言っても、僕はただリーダー格のプレイヤーの武器を壊しただけなんだけどね。」
「それでも、抵抗できるだけ凄いと思うよ!僕だったら多分力負けして死んでたと思うし!」
最初の頃はただの内容が薄いだけの雑談だったのだが、いつのまにか先日起こった火山地帯でのPK集団についての話になった。
結果的には撃退に成功したんだけど、それは姉さんとカイさんの(と言っても、カイさんはついて来ただけみたいになっちゃってたけど)おかげだし、あのまま姉さん達が来なかったら、僕はロッカーさんの取り巻き集団にボコボコにされてただろうから、僕が活躍した、というのは話が膨らみ過ぎてる気がする。
「でも、僕が遭遇したMPK集団とは別の集団みたいだね。開始まもないVRゲームなのに、PKなんかして楽しいのかなぁ。」
ヴァイス君がネコミミをペターンとしたままガクッと頭を垂れる。
まあ確かに、PKされて嬉しい人はいないよね。ヴァイス君はMPKのせいで、調薬シートを無くされちゃってるし。
「・・・リクトは凄いと思うよ。・・・それと、僕はソレが気になる。」
「えっ?」
キャット君が指さしたのは、僕の片腕にはまっている小型クロスボウだ。
え?これが?いや、今の所全然役立ってないんだけどなぁこれ。
「僕って一応剣持ってるけど、遠距離攻撃用に作ってみたんだよね。でも、威力も弱いし発射速度も遅いしで使い物にならないよ。」
「・・・でも、それはかなり有用だと思うよ。」
「だねー。僕たちにも作ってほしいよ?」
キャット君とヴァイス君がクロスボウを見ながら言う。
「しかもそれ、多分道具師しか作れないだろうしね。」
「えー、こんなの誰でも作れると思うよ?ネットでクロスボウ調べて、構造真似すればいいだけだし。」
僕も思い立った後、とあるサイトでクロスボウの簡単な構造を見てきたし。
「いやいや、知ってるのと作れるのは別だよ?例えば、この外側の枠組みは木を削って作られてるでしょ?それに、この小さい矢だって手作りでしょ?」
「そうだけど、どうして?」
「これ一つ作るのに、普通なら何人も専門の生産職が必要だからだよ。木を削るのは『木工』スキルを持つ人、小さい矢を作るのはアイテムを作り出せる錬金術師くらいしかいないしね。将来、金属部品で補強とかを考えてるんなら、新たに『金属加工』のスキルを持つ鍛冶師とかも必要になるし。浅く広い事が出来る道具師だから出来る事だよこれ。」
ヴァイス君の説明を聞いた僕は「あ、確かにそうだ。」と納得した。
僕は何も考えずに作ってたけど、他の人が真似ようとしたら絶対どこかで躓くだろう。ほぼ全ての生産職が作り出せるアイテムを(低級品だけど)作れる道具師だからこそ出来る。
「それに、今はまだ即席の矢みたいだけど、それに毒とか塗ったら遠距離から一方的に毒にできるし。」
「あっ、その手があったか!」
「えっ!?矢に毒を塗るとか、誰でも思いつきそうなアイデアじゃない!?」
ヴァイス君が何か言ってるけど気にしない気にしない。
矢に毒を塗るという事自体は単純だけど、得られる効果は高い。
毒と言っても、単純に体力を削るのもあれば、確か身体が痺れて動きが鈍くなる麻痺毒、身体の動きを完全に止める神経毒など、FWOの世界では色々毒の種類がある。(情報サイトで確認したよ)
毒にかかれば、素早い敵も堅い敵も関係ない。作らない手は無い。
だとすると、今の軽い木の矢じゃダメだ。毒は身体に入り込む事で初めて毒として機能する。矢じりを金属製にして重くして、相手に命中した時に突き刺さるようにすれば毒にかかる可能性もあがる。・・・これは後で試作してみないと。
「あーダメだ。リクト君が完全に自分の世界に入っちゃった。」
「・・・しかも、何か顔が怖い。」
キャット君達が僕を見て何かボソボソと言い合ってるけど問題ない!
材料が揃い次第、クロスボウの改良をしてみるとしよう!
「こんにちはー・・・って、誰も居ないのかしらー?」
クロスボウの話から10分くらいが経った頃、店の正面出入り口の方から声が聞こえてきた。
この声にこの喋り方。思い浮かべるのは一人しかいない。
「あ、やっぱり姉さんだ。」
「あれ?リクト、何やってんのよこんな所で。」
裏の部屋からカウンターへ出ると、案の定姉さんが居た。
背中に大剣を背負って、防具は簡単なレザーアーマーを着こんでいる。
「いや、僕はキャット君とフレンド同士だからね。奥の部屋で暇つぶししてたんだよ。」
「キャット・・・?ああ、ここの猫店主ね。」
猫店主って・・・一応人間だよ?ネコミミを常に被ってるけど。
キャット君もヴァイス君も、フード取ってって言っても絶対に取らないんだよね。
前聞いてみたら「・・・ダメ」「僕からフードを取り上げるって事は、魚の水槽から水を抜くと同じだよ!?」って拒絶された。フードの中ってどうなってるんだろ。
「そんな事より、姉さんは何しに来たの?」
「ここの店主に、防具を作ってもらいたくてね。素材とお金が溜まったから交渉しに来たのよ。」
「なるほど。」
忘れてたけど、キャット君って立派な裁縫職人だったね。
僕は部屋の奥でキャット君を呼んで店内まで連れてきた。
ヴァイス君は「僕は待ってるよー」って言ったからここには連れてきてない。
「・・・オーダーメイドで、素材は特攻牛のなめし革、依頼品は鎧とブーツ。間違いはない?」
「ええ、それで大丈夫よ。」
姉さんが持ってきたのは特攻牛と言う魔物からのドロップ品の『特攻牛のなめし革』。
これで本格的なレザーアーマーとレザーブーツを作ってくれと頼みに来たようだった。
聞くと、特攻牛はヴァルガタウンの奥の『霊気の草原』と呼ばれるエリアに生息するモンスターで、文字通り弾丸のようにプレイヤーに向けて突進してくるモンスターらしい。
キャット君曰く、特攻牛のなめし革は防具素材としてはかなり優秀な部類に入ると言うから僕も欲しかったけど、適正レベルは35~という事で、僕が挑んだらスーパーボールみたいに弾き飛ばされる事は目に見えてるので諦めるとする。
「姉さん、今のレベルはいくつ?」
「31よ。」
うげっ、そんなにレベル上げてたのか。しかもレベルが上がりにくい戦闘職なのに!
ちなみに、僕のレベルは28だ。あれから戦闘数自体はこなしてたけど、戦う敵が皆レベルが低いモンスターばっかりだったからレベルはあまり上がっていない。
「・・・リクト。この人、リクトのお姉さん?」
「うん、僕の姉のカエデ姉さんだよ。僕と同時期にFWO始めたんだ。ジョブは大剣使い。」
キャット君は僕と姉さんを交互に見る。
「・・・道具師になるの止めればよかったのに。」って姉さんを見ながらキャット君は呟く。ちょっとキャット君、後でお話ししようか。
「そんな事より、まさかリクトがここの店主と知り合いだったとはね。」
キャット君に素材と代金を手渡すと、姉さんは少し驚いた様子で僕に話しかけてきた。
僕はその意味が分からず首を傾げる。
「どういう事?」
「いや、ここの猫店主は結構有名だからよ。裁縫職人の中でもかなり腕の立つプレイヤーだから。」
え?キャット君が有名なプレイヤー?
いや、まあネコミミフードなんか被ってるから嫌でも有名にはなりそうだけど。
「βテスターで、かつこんな早い段階で店を持つ。それで防具製作の腕も優秀。そりゃ有名にもなるわよ。」
「そうなんだ。」
姉さんがキャット君を褒める度に、キャット君は目を逸らして顔を向けないようにする。
・・・照れてる?顔が少し赤いよ?
「それに、そのネコミミフードもアレよね。妙に出来がいいと言うか・・・。」
姉さんがキャット君のフードを見ながら呟く。
うん、それは僕も思うよ。感情に合わせてピコピコ動いたりペタンッとしたりするのは凄いと思う。というか、仕組みどうなってるんだろう?
「ネコミミフードは僕らのフレンドの証だからねー!」
「うわっ!?びっくりした!」
突然背後から大声を出されて僕は身体をビクッとさせた。いつのまにか奥に居たヴァイス君がこっちに来たようだ。
だけど、その張本人のヴァイス君はどこか嬉し気だ・・・何か嫌な予感がする。
「フレンドの証?」
「そうだよー。僕のこのネコミミも、リクト君のネコミミもキャット君特製だからねー!」
と笑顔でヴァイス君が言って・・・ってちょっと待った!
言った!?平然と僕がネコミミフード持ってる事言ったよねヴァイス君!?姉さんにはあえて話さなかったのに!
「・・・へぇ、リクト、フード持ってるの?」
「モッテマセン」
あ、やばい。片言になっちゃった。
「リクト、フード被りなさい。」
「嫌デス」
「そうね。縦に斬られるか横に斬られるか選ばせてあげるわよ?」
「選択肢無いって事じゃん!」
結局、僕は圧力に負けてアイテムボックスからネコミミフードを再び取り出すことになった。
それを頭に装備して披露、姉さんからは「案外似合ってるじゃない?」とか言ってスクリーンショットをバシバシ撮られた。
恥ずかしいんだよなぁこれ・・・ヴァイス君には近々復讐をしてやる。
登場人物のキャット君とヴァイス君。
僕の友人曰く、「名前安直すぎ」って言われました。ショボン。




