16 神秘の森へ。
あれから2日経ち、姉さんとの約束の日が来た。
結局、キャット君達との猛烈なレベリングの後は疲れ切っちゃって何もやる気が起きずにそのままログアウトした。
その翌日も、学校から帰った後に色々とやる事があったので結局ログインできずに、今に至る。
時計を見ると、今は夕方の5時を少し過ぎたあたりだ。まだちょっと早いかもしれないけど、姉さんと会う時は早めに待っとかないと何をされるか分からない。
そんな訳で僕は、予定よりも少し早めにログインした。
「えーと、確か姉さんは夕方の6時に南側の出口に居ろって言ってたよね。」
ちょっと早くログインした理由は、まだやり残した事があったせいだ。
レベリングに関しては十分だし、補給用のアイテムも持ったけど、装備の新調がまだだ。というか忘れてた。
武器は新しいのにしたけど、防具は全て初期装備という有様だ。ただえさえ低いステータスなのに、防具が初期じゃすぐ死に戻る可能性が高い。
という訳で防具を買いました。
お金はクモの素材の大半を売って何とかなった。案外いい値段で売れたのが意外だったけど。
防具は、冒険者の服とかの『冒険者』シリーズだ。アクラの街の店売り防具シリーズの中では一番性能が高い。
武器は冒険者の剣だし、防具は冒険者の服一式だし。・・・そのまんまの意味で、冒険者になった気分だな。
「さて、姉さんとの約束の15分前だけど・・・。」
と、リクトは南出口の辺りでウロウロしていた。
確か、姉さんは前に15分前集合しないとボコるわよ?(だっけ?)とか言ってたから、これくらい前から待っとかないと怖い。
その数分後に、「おーい、おまたせー」と姉さんの声が聞こえた。
声のした方向を向くと、手を振る姉さんとその他のプレイヤーさん4人が居た。
「おー、リクトにしちゃ早く来たじゃない。珍しいわね。」
「・・・VRでも、殴られたら痛いんだよ?姉さん。」
「何の事かしらね?」
すっとぼけやがったぞ、この暴力姉め。
「あー、紹介するわね。この頼りなさげなのが、弟のリクトよ。確か道具師だったっけ?」
「頼りないは余分だよ・・・。あ、リクトって言います。ジョブは道具師で、レベルは21です。」
「は!?リクトどれだけレベリングしたのよ?」
お、案の定姉さんが驚いたね、レベル20超えてたからかな。
「生産職で道具師でしょう?それなら、レベルアップに必要な経験値は全ジョブ中ワーストクラスだから、それほど珍しくはないんじゃない?」
と灰色のロングヘアの女の人が言った。へえ、ステータスはワースト1位って聞いてたけど、やっぱり必要経験値もワーストクラスなのか、道具師。
「というか道具師か。確かに色んなアイテムを作れる、という説明は間違っちゃあいねえが、選んだ奴を見たのは初めてだな。」
と、黒いボサボサの髪をした男の人が言った。
・・・どうせ僕は不人気ジョブを選んだ物好きですよーだ。
「あははー。大丈夫だよー、いつかはいい事あるって!」
って言ってくれたのは、赤色の髪をショートヘアで纏めている女の人だ。
活発そうな人だなぁ、ヴァイス君を思い出す。
「ゲームは楽しむ事が第一。無理してやるなら、それはもうゲームじゃない。」
「まあそうなんだけどね。リクトってば物好きだから。」
「まあ、本人が楽しければ問題はないな。」
と、姉さんと魔法使い風の男の人が話をしていた。
そうだよ!僕は結構このゲームを気に入ってるんだ!道具師を選んだ事を後悔してないからね!・・・うん。
「それじゃ、順番に紹介していくわよ。」
と姉さんが言うと、各メンバーは簡単に自己紹介をしてくれた。
灰色の髪をした女の人は、レベル22のアーチャーのシルヴァストさん。
赤色のショートヘアの女の人は、レベル23のスカウトのアヤさん。
ボサボサの髪の男の人は、レベル27のウォーリアーのガロウさん。
最後に、魔法使い用のローブを着た青い髪の男の人は、レベル20の魔導士のカイさん。
・・・あれ、確か戦闘職ってレベル上がりにくかったよね?
それでも、ここにいる皆さんはレベルが20超えてるって事は・・・姉さんに劣らないゲーマーって事かな・・・。
ちなみに、姉さんのレベルを見たら24になってた。やっぱり上げてたよ。
それと、気になってステータスも見せてもらったけど、改めて道具師のステータスの低さを思い知らされる結果になった。
Lv21:リクト(CLASS:道具師)
HP 627/627
MP 130/130
攻撃:50
防御:30
素早さ:55
器用:70
魔力:25
運:16
これが僕のステータスなんだけど、姉さんの場合は。
Lv24:カエデ(CLASS:剣士)
HP 1175/1175
MP 140/140
攻撃:117
防御:75
素早さ:57
器用:65
魔力:25
運:17
この通りだ。レベルでは3しか開いてないけど、各種ステータスで圧倒的な差がある。
ギリギリ勝ってるのが器用さ、魔力は同じ数値、素早さは若干負けている。唯一勝ってる器用さにおいても、生産職は器用さが上がりやすい事と、剣士などの前衛職の場合は上がりにくい事の2つが重なった結果だ。むしろ、大幅に超えてなきゃおかしい数値なのだ。
道具師のステータスがいかに低いかを教えてくれるね。
「・・・ま、まあ生産職だし!」
「生産職にしても、この数値は酷いわよ。」
姉さん、ズバッと言わないで!
「それじゃあ弟さんも見つけた事だし、神秘の森に行きましょうか。」
「んだねー。今日は倒せると良いなーフォレストレント。」
「頼むぜカイ?お前の炎魔法が頼りだ。」
「いや、物理も一応効くから頑張れよお前ら。」
と軽く会話をしながら神秘の森へと向かう。
「ねえ、姉さんはこの人達とどう知り合ったの?」
「ソロの時に神秘の森で暴れてたら、たまたま会ったこの人達のパーティーが全滅しかかってたから助けたのよ。それからよく一緒に狩りをしてるわね。」
「へぇ、そうなんだ。」
そういえば、キャット君も僕が食料とアイテムをあげて助けたんだっけなぁ。
人助けっていいものだねー。
「アイテムとかは持ってきた?」
「結構持ってきたよ。でも、僕が作るとクールタイムが長くなっちゃうからあんまり高い効果のは持ってきてないけどね。」
「数があれば十分よ。神秘の森まで行けるプレイヤーが少ないから、森の中はアクティブモンスターだらけなのよね。どうしても連戦になっちゃうから、補給が追いつかなかったのよ。」
そういえば、僕が最初に草原エリアに行った時もそうだったなぁ。
通信障害でプレイヤーがほぼいなかった時、草原エリアで狩る人も居なかったからモンスターが沸き放題だったし。
「ま、道中は姉に任せときなさいって!」
「僕は戦闘力皆無だからね。任せたよ姉さん。」
生粋の廃ゲーマーの姉さんなら大丈夫でしょ。
僕もレベルだけはパーティーメンバーと同じだし、すぐにはやられないと思うしね。




