第23話 ダンジョン
そして次の授業の前、
「少しお話いいかしら」
そう、セリナに言い寄られた。
「どうしたの?」
そう、私がとぼけたように言うと、
「王太子様と接触してたよね」と言われた。
「王太子様に近づかないでくれるかしら」
「そんなに、リデアス様が好きなの?」
そう私が聞くと、「そうよ」と、小さく行った。
「さもないと、シエルは守らないわよ」
やはり、そんなことを言うんだ。
そう思うと少しだけ悲しくなる。
「セリナ、貴方は別の世界から来た?」
私はついにそう言った。
確信があるわけではない。だけど、王太子様とセリナは別の世界から来た可能性がある、
それはただの勘に過ぎない予想だ。
だけど、
王太子様が異世界から来た可能性が少ないと考えている。
王太子様の反応は所謂この世界の物だと思っている。勿論少し引っかかる点はあるけれど、私個人としてリデアス様が別の世界から可能性は低いと感じている。
彼も異世界から来たとするのならば、セリナに対して何かもっと反応するべきだろう。
そもそも、わたしとの初対面の時にもっと別の反応を見せてくれないとおかしい。
だけど、セリナは……
最初、リデアス様を見た時に乙女の顔をしていた。
「違うわよ」
そんなわたしの問いに、淡々と否定した。
「てかなにそれ」
「なにそれって」
「小説の読み過ぎじゃないの? ばかばかしい」
一蹴された。されたかのように思えたけれど、気になる部分がある。
最初に違うわよと言ったところと、小説の読み過ぎという物だ。
小説。小説と言えばこの世界にもあるけれど、日本にもある。
そして、軽く読めるという点でライトノベルという物が流行っている。それを指していると考えれば、辻褄は合うのだ。
小説の読み過ぎ→ライトノベルの読み過ぎ→転生ものの読み過ぎだと。
それに、異世界転生。異世界転生という物自体は、基本好きな物語に転生してその中で主人公が断罪される未来を回避するという物が多い。考えれば考えるほど、セリナがわたしと同じ転生者だと考えられてくる。
まあでも、これで軽くすっきりしたと思う。これで考えるべきことは少なくなってきた。
とりあえず、セリナの事は異世界から来たと考えればいい。
そして一月後。
ダンジョンの日がやってきた。
今日の授業が何かがは最初から分かっている。
そんな雰囲気がするんだもん。
今日はたぶん……。
「今日はダンジョンに潜ってもらいます」
そう、ダンジョンの授業だ。
「ダンジョンと言っても、危険な場所まではいきません。今回は見学みたいなものです」
「見学という事は」
王太子様が言う。
「ええ、基本的な戦闘はプロの冒険家に任せます」
そう、教師が言うと、そこに一人の冒険家がやってくる。
来た、と私は思った。
そこに来たのは、冒険家の一人。シュゲル・ラッシュグナだ。
シュゲルは、この物語の分岐点の一つになりうる人物だ。
というのも彼は彼で、賢いのだが少し抜けているところがある。
彼は、このダンジョンで大きなへまを起こすことになる。
トラップ。それを踏んでしまう。
それ即ち危険な場所へと転移するトラップだ。
そしたら最後、変な場所に出てしまい、そこで大量の魔物に襲われることになる。
これをモンスターハウスというらしいけれど、そこはどうでもいい。
つまるところ危機に陥ることになるのだ。
私はセリナの顔をじっと見る。彼女は真剣な顔で、シュゲルの顔を見ていた。
「シュゲルさんは数々のダンジョンを制覇している大物冒険家なので、彼に任せれば問題はありません。ですよね」
先生がそう言うと、
「ええ、僕は強いですから皆さんを危険から守ります。まあ、これから行くようなところは皆さん程度でも対処できる魔物が大半でしょうけれど」
違うの。
そんな皆さん程度の魔物によって危機に陥ることになるのよ。
「どうした」
そう、横から声をかけられる。
「怖い目で見てるぞ」
「ううん、何でもないの」
私は慌てて首を振る。するとシエルが、「お姉ちゃん大丈夫?」と訊く。
それにも大丈夫と、私は答えたが、それでも不安な点は変わらない。
警戒に越したことはないだろう。
私は、こぶしをギュッと握った。
そこから早速移動することとなった。
向かう先のダンジョンは、ヘルシナミナダンジョン。初級レベルのダンジョンだ。
だけど、問題はそこが難関ダンジョンと繋がっているという事。
よほどの事がない限り、向かう事はないはずだけど、シュゲルはそのよほどの事を犯してしまう。
非常に困ったことだ。
「リデアス様」
私は隣を歩く彼に一言告げる。
「前にも言ったと思いますが、ここから先、大変なことに陥るかもしれません」
「それは、君の知る並行世界でか?」
「ええ」
私は頷く。
「きっと大変なことが怒ります。前もって防げればいいですが、それはきっと不可能です。なので、それが起きる前に耳に入れておこうかと」
「どこに向かうんだ」
「難関ダンジョン、ヘルチェダンジョンです」
「なんと」
リデアス様はそう頷き、
「それは非常に大変な事だな」
「ですよね」
私はそう頷いて見せ、
「その場合は、命を守る事だけを考えてください」
「お姉ちゃん」
シエルが私の服の裾を掴む。
「二人だけで話さないで私も会話に入れて」
その言葉を発すシエル。正直可愛いと思った。
「大丈夫。ダンジョンってどんなんだろうって二人で話してただけだから」
そう言ってわたしは笑って見せるが、シエルは少し不服そうな表情を見せた。
そしてダンジョンへと潜っていく。
ダンジョンの中はそこまでの明かりがない。じめじめとした感じだ。
なんかお肌に悪そうだし、速く抜け出したい。
それは同じようで、周りの令嬢たちも、「なんなのかしら」「不潔」「早く抜け出したいわ」「こんな所いたくない」
などと次々に発する。
そりゃ嫌よね、こんな所。
生まれも育ちもここである皆も嫌と言っていてよかったわ。
日本育ちだから嫌に感じるんだと思ったんだから。
そして奥に潜っていくと広々とした空間が見え始めた。そこには沢山の魔物が右往左往している。
「こいつらが魔物だ。基本的にダンジョンに潜むこいつらは、倒せば沢山のお金が手に入る。」
そう言って早速目の前の魔物を断ち切る。するとそれは素材へと変わる。
「これがお金になるんだ。例えばほら」
そう言って、わたしを指さす。
「その制服も、魔物の皮からできている」
「これもですか?」
その言葉に、シュゲルさんは頷く。
「ああ、それには上質な魔物の皮がある。それはおそらく見るにジャガーの皮だ。といったように、様々な嗜好品の材料になっている」
「へえ」
私は服を触る。
確かに術らかな感じがする。そう考えるとすごいなあ、なんて思う。
ゲームではこんな会話早送りしてたからあまり覚えていない。
だけど実際に制服に身を包みながらこの会話を聞くと、少し楽しくなる。
そして、向かってくる魔物達を剣でひたすらに倒していく。
「ここにいる魔物は弱い。皆各自で倒してみなさい」
そう、シュゲルが言うと、みな各々に剣を振ったり魔法を放つ。
そして、一番楽し気に魔法を放っているのは、セリナだ。彼女はひたすらに魔法で魔物を倒していく。
楽しそうだ。
そして、
「俺も行ってくる」
そう、私の隣にいる人物。リデアス様が動き出す。
「行ってらっしゃい」
私はそう、手を振った後、シエルの顔を見る。
「行く?」
私が聞くと、シエルは首を振る。
「怖い」
そして一言呟く。
この時系列の時、シエルはどうしていたっけ。
まだ学院には通ってなかったよね。
「怖い?」
「魔物にも命があるのに、こんなに簡単に奪えるのが怖い」
確かに。私はそんなこと考えたことも無かった。
私はゲームをしてたからこそ、魔物はただのNPCであるという印象が強かった。
でも、確かにシエルの言う通り、命を奪うのは可愛そうというのもうなずける。
今回、わたしたちが勝手にここにやってきて、そして魔物達を倒しているのだから。
「シエルは優しいね。たぶんそれが正解だよ。でもね、もしなにか危険が来た時は戦ってね」
「うん。私が襲われそうになったら戦う」
そう言ってふんすと息を漏らす。
そしてそこでも戦闘練習は済んだみたいでどんどんと進んでいく。
わたしには恐らく、この先の転移トラップを防ぐことができない。
どのタイミングで起こるのかも分からない。
わたしには防ぐ手段すらないけれど、
そして、どんどんと先に進んでいく。
このダンジョンは三層までしかない。三層まであっさりとクリアしようという気持ちだろうか。
だけど、その慢心が危険を招くことを私は知っている。
セリナは知っているのだろうか。
私の予測では彼女もまた異世界からやってきた住民なのだけど。
彼女が知っているとするならば、そんなに楽な話はない。
だけど、セリナの場合、知っていたとしても止めに入らない可能性がある。
私はセリナを信用していない。
ただただ、セリナはリデアス様の事が好きで行動している。だけではないと思う。
その心では、何か自分の目標のために動いている。
そんな気がしてならないのだ。




