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ラスボスの姉に転生しました――闇落ちする運命の妹を救いたい  作者: 有原優


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第19話 いじめ

 そして、ケーキと紅茶がついにやってきた。

 話に夢中で、来るのがあっという間なように感じてしまう。

 恐らくニ十分くらいは待ったのだろう。だけど、その時間が長くは感じなかった。


 体感的には五分くらいしか経っていない。


「わあ、美味しそう」


 私はそう呟いた。

 ショートケーキだ。イチゴも乗っている。

 目の前にすると美味しそうで涎が出てきそう。


 値段もそこそこした。恐らく嗜好品という扱いだろう。


 この世界の食生活はそこまで日本とは違わない。

 が、ケーキは私の大の好物だ。


 ずっと、好きな食べ物TOP10、いやトップファイブを維持している。


 私は早速フォークを掴み、ケーキを切っていく。


 そして、口にくわえた。


「美味しい」


 甘い、甘いけれど、そこまでうざさのない甘さだ。

 私はそこまで極端に甘いものが好きなわけではない。

 だからこそ、これくらいの甘さがちょうどいいのだ。


「幸せそうな顔だな」


 その言葉を聞き、私は顔を上げる。


「今まで見たことのない顔をしてたぞ」

「見たことのない?」

「ああ。こっそりと背中をさすってもばれないかと思うくらいの顔だ」


「それって油断してるってこと?」


 よく分からない例えだ。


「だってずっと気を張ってるだろ。少しリラックスした方がいいさ」

「っでも……」

「君は最悪な未来を見てきたんだろ? でも、そうなるとは限らない。これからは俺もついているからさ」

「ええ、ありがとうございます」


 そう私はお礼を言った。


 そうしてケーキを楽しみ、その後二人で美術館へと行った。


 美術館。そこにはきれいな絵が飾られていた。

 思えば、ゲームでは芸術方面のシーンなんてものはほとんどなく、世界観という物がそこまでは分かりずらかった。

だから、このゲームの中での芸術がどうなっているのかが気になっている。

そして、色々な絵を見ていく。



奇麗だ。



この世界の絵はどちらかというと、ピカソに近い絵が人気らしい。

とは言っても、わたしも芸術方面に対してはそこまで知識があるわけではないのだけど。

でも、その絵を見ているとなんとなく活力を得られる気がした。


それこそ、力というか、パワーというか、言葉にするのが難しい、何かが得られる。

そんな気がする。


そんな時、ふと一つの絵に気が付いた。

これはかなり昔に描かれた絵らしい。

その絵は、聖女と邪神との戦いが得かがれている。

初代聖女は王の后として、国を平定した。


邪神をも倒した。


その絵を見ると、不思議と飲み込まれそうな不思議な気分だ。


わたしはこの絵が好きだ。


多分、写真――写真なんてものはこの世界にはないけれど――では表せないものだ。



「気に入ったのか」


いつの間にか隣に立っていた、リデアス様がそう言った。


「ええ」


わたしは頷く。


「セリナか」

「それだけじゃないのですけどね」


だけど、聖女に見とれていたのも事実。

だけど、今見ているのは邪神の方だ。


ゲームでの邪神よりも禍々しく描かれている。

水彩画のようなタッチだけど、その中で邪神の恐ろしさを演出している。



「こんなこと二度と起こらないといいですね」

「っそうだな」


リデアス様も頷いた。



そのデート?の後、部屋に戻る。

その時、異変に気づいた。


 シエルの顔が見るからに暗いのだ。

 その顔を見ると、何かがあったという事はすぐに分かった。


「どうしたの?」


 私はすぐに訊いた。

 今にも絶望の奥底に入っていきそうな危うい顔だった。


「なんでもない」


 そう、黙って首を振った。


 でもこれは強がりだ。

 妹の事を私は忘れられない。前世での日本での妹だ。

 あの子は自分の事を、自分の絶望を話さずにずっと隠れていた。

 そのせいで自分一人でその感情を消化しきれずに自分で命を絶った。

 あの時、妹を放置したことを今も後悔している。


 私は、妹を守り切れなかった。次は、絶対に守ってあげたいのだ。

 

 この世界では。




「ねえ、私は貴方の味方だわ。もし何かあるなら言ってちょうだい。もし、言わないで後悔するなら行って後悔しなさい。だって今の私は貴方を守り切れないのだから」


 私がそう言うと、妹はぎゅっと唇をかんだ。

 その表情には悔しさが他合っている。


「私、いじめられたの」


 その言葉は小さかった。が、悲痛な叫びのように聞こえた。


「待ってて、私が今すぐボコってくるから」

「それはだめ!!」


 強く妹が叫ぶ。


「やめて、よ」


 どうしてダメなんだろう。

 でも、少し妹の立場として考えたら、そうか。いもうとはきっと、反撃を恐れているのだろう。

 私は少し思考して。


「大丈夫、なら先生に言おう」

「それもだめ」


 明らかに覚えている。


「私が悪いんだから」

「妹が悪い?」


 その言葉に妹は頷いた。


「だって、私が先に彼女たちのシャツに茶をこぼしちゃったから」

「こぼしちゃった?」


 その言葉にまた妹は頷いた。


「彼女とぶつかっちゃって。それで彼女たちが手に持っていた紅茶がこぼれちゃって」

「なんだかそれおかしくないかしら」

「おかしい?」


 私的には嫌がらせという感じがする。

 その現場を見てないからあまり良くは言えないけれど、でも。


「それ妹だけが悪いのはおかしくない? 妹は何も悪くないでしょ。だって紅茶を持ちながら周りを警戒しないで歩いていたその人たちが悪いんだから」

「うん……」


 そう言って妹シエル空を見る。まだ、気掛かりなことはあるみたいだ。


「どうしたの?」

「私ってやっぱりここにいていいのかな?」

「どうしてかしら」

「私さ、言われてるの知ってるの。邪悪な力を有してるってちょっと不安になっちゃって」

「大丈夫。それはお姉ちゃんが守るし、王太子殿下もいるし、心配することはないよ」

「……ありがとう」

「大丈夫。あなたは生きてていい人間だから。文句を言う人が悪いから」

「お姉ちゃん、苦しい」


 はっ、強く抱きすぎてたみたい。


「ごめん」


 私はそう謝りながら、シエルから手を離した。


「えへへ」


 そしてシエルは満面の笑みで私に抱き着いついてきた。

 私はそんな彼女を優しく抱き返した。今度は強く抱きすぎないように。


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