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ラスボスの姉に転生しました――闇落ちする運命の妹を救いたい  作者: 有原優


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16/21

第16話 模擬戦前

 その日付はその二日後だ。二日後にセリナと戦う事になっている。しかし私は正直怖い。

 何がと言われれば答えるのはいかにも簡単だ。


 思ったよりも盛り上がりすぎている。

 決闘をすることが広まっている。



 いくら光と闇の力の使い手同士の戦いとは言え、流石に広まり過ぎた。

 賭けなんてしていない、両者の力を試す機会でしかない。


 なのに、誰がここまで、広めたんだろう。

 セリナとシエルが決闘をすることを。


 私は、賛成派でも、反対派でもなかった。だけどこうなってしまったら私は反対派に回るしかない。

 何しろ目立ち過ぎてはいけないのだ。

 まだ闇の力を全校生徒の前で見せるようなフレーズではないのだ。


 だけどもう、それは不可能だ。

 だから、わたしとリデアス様の二人で、シエルを強化することにした。

 特訓だ。


「しかしやはりすごいな」


 リデアス様はそううなる。


「俺が戦ってもまともには勝てなさそうだ」

「それほどまでにですか」

「ああ、実際あの時も、恐ろしい力だった。実質あの骸骨を倒したのは君の妹と言っても過言じゃないだろう」


 骸骨。痩せ男という意味だろう。ウィレムの事だ。


「ありがとうございます」


 私はそう感謝を告げた。


 そして、シエルの方を向き直す。


「たったの数日間だけだが、俺が強化する。この子の限界を見てみたいんだ」

「変な事はくれぐれもおやめください」

「俺は小さい子は趣味じゃない」


 そう、真面目な顔をして言われた。


 私が「え、そうなの?」とでも言いたげな顔を彼に見せると、


「何なんだその顔は」と、あきれられた。


 そして、私はただシエルとリデアス様の特訓の様を見続ける。

 これも中々楽しい物だ。


 どう考えてもリデアス様に見てもらうのが一番分かりやすいしね。


 そしてあっという間に数日の期間は過ぎていく。


 遂にその日の前日だ。


「お姉ちゃん」


 シエルが弱弱しい声で言う。私の寝ているベッドの横で。

 シエルと私は隣同士のベッドで寝ている。



「何かしら」

「明日ちょっと怖くなってきた」シエルのその言葉にわたしは小さくうなずいた。


「怖くなるのは当り前よ」そして、シエルの方に寝返りを打つ。


「ねえ、何が不安なの?」

 私の言葉に、シエルは軽く言葉を詰まらせる。


「ゆっくりでいいのよ」


 せかしても。いい事なんてない。


「うん」シエルは小さく首肯する。「怖いのはね、私が負ける事なの」

「負ける事?」

「うん。悔しいもん」

「負けたら悔しいの?」

 シエルはまた頷く。

「負けたら否定される気がして」


 シエルは負けると悔しい。それは初めて知った。

 私はシエルの頭を優しく撫でる。


「嫌だったら、今からでもセリナに断りの連絡をしましょうか?」


 私はそう、シエルに訊いた。


「嫌だよ」「それは嫌なの?」「いのは事実だから」


 私はシエルの言葉に対して、何と言ってやればいいのだろうか。

 分からない。分からないから、私が言われたら嬉しいであろう言葉をシエルに話す。


「ねえ、シエル。私とリデアス様はシエルの味方だよ」

「味方?」その言葉に、私は小さくうなずく。


「だから、大丈夫。私たちが応援するし、勝つことを信じているから」

「もし、負けたら?」

「その時は全力で慰めるよ」

「慰める……」

「うん。慰める。そして抱きしめる」

「抱きしめるのはやめて……」


 その言葉に対し、私は微笑した。


「だから大丈夫。シエルに敵はいないから」

「うん。そうだよね」


 私の言葉が正しかったのかどうかは分からない。

 だけど、少し、少しだけシエルは元気を取り戻したようだ。


「明日は頑張ってね」

「うん」


 そして私たちは寝た。


 この学院には休みが二日間ある。

 その一日目の朝九時に決闘が行われる。


 そして私たちはその日の七時半に起きた。

 そもそも、ラーグ家の鐘の音が朝七時だったので、朝起きには慣れている。……転生直後は中々慣れなかったのだけど。

 そのたびにスザンヌに怒られたのが今では昔の様だ。



「シエル」

「うん、大丈夫」


 シエルは私に対して、弱々しい手で拳を見せて来る。

 その健気な姿がまた可愛らしいと思う。


 そして、準備を済ませた後、私たちは手をつなぎながら会場へと歩みを進める。

 先程ああは言っていた物の、近著しているみたいで、繋がれている手からもそれが伝わってくる。

 そのことに対して、私は何も言わなかった。

 そして私たちは互いに無言で歩いていく。歩き続けている。


 会場に近づくと、そこには兎に角大勢の人たちがいる、

 やはり色々と広がっているようだ。

 シエルは緊張しているのかな。そう、思ったが意外や意外。シエルの震えが逆に止まっている。


 現実と感じたのだろうか。そう、今から戦うという事に対してだ。


 確かに、テスト中、始まってしまえば緊張が亡くなるという事がある。

 それが、シエルにとって今なのだろう。


 会場はグラウンドだ。そこまで大きい会場ではない。

 だけど、人口密度がすごい。


 シエルと別れた後、私たちはその足で、観客席に向かった。観客席おはいっても、イスが乱雑に置かれているだけだが。

 しかし、これは別に公的なものではないはずだ。

 一体だれがこんなにこのも容姿を派手にしてくれたのか。


 まあ、そんな事は考えたって意味はない。セリナとシエルというb両極端の二人が戦うという事、それ自体が勝手に噂で流れたという可能性もある。

 保健室の中を覗いていた人がいて、その人が広めたという可能性もあるのだ。


 さて、シエルは逆に緊張がほどけた見たいだが、私は逆に不安を感じ始めている。




 これは過保護すぎるのだろうか。だけど、シエルが傷つく所を、傷ついている姿を見るのは怖い。


「怯えているのか?」


 隣に座っているリデアス様が私に対し静かに言う。


「ええ、怖いわ。この戦いを見ることが。セリナ嬢についてもまだ信用は出来ていないし」

「それに関しては俺は彼女は珍しい物が好きなだけだと思う。セリナ嬢にはきっと深い意図なんてなかったさ。それ闇の力と光の力。珍しいもの同士だからな。それに……セリナ嬢はきっとシエルに対して酷い事はしない」

「ええ、それは分かってる。分かってるけど……」


 私はなまじストーリーをかじっている。しかし、だいぶストーリーが変わっている今、何が起こるのか分からない。

 そもそもよく考えれば私は転生してから二か月もたっていない。


 頭が痛くなってくる。


「なあ、これからの話だが」


 リデアス殿下が口を開く。


「この休日。……というよりも明日だけど、二人で出かけないか?」

「でかける?」

「ああ。少し親睦を深めたいと思ってな」


 いまする話?

 と思ったけど、なんだかそれ、少し面白そうだ。

 私は黙って頷いた。



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