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ラスボスの姉に転生しました――闇落ちする運命の妹を救いたい  作者: 有原優


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第12話 ミノタウロス

「待て」


 リデアス様が魔法を放つ。そう、奥に行かせないように。


 それが当たり、ウィレムは「あちちちちち」と叫ぶ。それはもう無様に。


 何ともみっともない。

 薬の効果が切れただけでこうなるというのか。

 滑稽。滑稽というしかない。


 私の魔力では貫けなかったが、リデアス様の魔力なら余裕で奴にダメージを与えられるのだろう。


 だけど、気になる。

 もうウィレムの敗北は決定しているのに、何をあがいているのだろうか。

 何をしているのだろうか。


 リデアス様の魔力に幾度も貫かれている。

 普通なら諦めてもおかしくない。素直に負けを認めたほうが楽なはずだ。


 なのにどうして。


 その時、わたしはあることを思い出した。

 五章のボスは正確には奴ではない。

 本来二段階の戦闘があるのだ。そしてその二段目のボスは、魔獣ミノタウロス。


 もし、復活されたらこの戦況がひっくり返される恐れもある。



「リデアス様、奴を止めて」

「何だって」

「あいつだけは、あいつの息の根を確実に止めないといけないわ」


 私は叫んだ。奴を復活させようとしているのだ。

 第五章でセリナに滅ぼされる運命である魔獣ミノタウロスを。


「分からないが、まあ分かった!!」


 そして、リデアス様は必死に魔法を放っていく。





 リデアス様にだけ任せられない。私は私の出来る事を。

 私は二発目の炎を放つ。


 生み出されてしまったら逆転もあり得る。

 せっかくシエルの力で優勢に立てたというのに。


 だけど、「ぎひひ」と気味の悪い笑みを浮かべる。そして――



 生み出されてしまった。とどめを刺すことが出来なかった。


 そして生み出されたのだ。



 ★




 魔獣。ミノタウロス。

 牛の頭をした魔物で、斧を振り回す。

 ゲームではかなり苦戦した記憶がある。


 こちらにはシエルがいるとはいえ、勝てるかどうか。


「ダークウェーブ!!」


 シエルが魔法を放つ。しかし、ミノタウロスには直撃こそしたものの、そこまでのダメージを与えられていない。

 デバフ効果も、ミノタウロスの屈強な肉体にはそこまで聞かない。

 それに、ウィレムは、薬で無理やり身体強化をしていたからこそ、あそこまでデバフ効果が出た。


 さもなければあんな奇跡みたいな結果にはなりえてないだろう。


 私も負けじと魔法を放すも、はじかれる。


「俺がいる」


 そう言ってリデアス様もまた魔法を放っていく。



 ドン。ドン。


 リデアス様の魔法がミノタウロスにぶつかり、ダメージを与えていく。

 当たるたびに、背後に軽く下がらせることができている。


 しかし、次の瞬間、ミノタウロスは強靭な斧を一気に振り下ろした。

 その斧は、リデアス殿下が剣で食い止めるも、一気に大地を揺らす。

 その斧の直撃に、リデアス殿下は軽く顔をゆがめた。


「させない」


 シエルが次々に闇の魔法を放っていく。

 ミノタウロスにはそこまで聞いていないようだ。


 シエルは才能の原石。しかし、この期間ではそこまで練磨は出来ない。


 デバフ魔法が聞かない相手に、どうやって戦えばいいのかは鍛えられていない。


 この空間でまともに戦えるのが、リデアス殿下しかいない。

 そんな彼もミノタウロスの攻撃を捌くのに必死で中々反撃に転じれない。


 これじゃ勝てないことは目に見えてる。

 だけど、ここから逆転する方法は……


 ない。


 逃走するしかない。


「リデアス様!!」


 私は叫ぶ。


「逃げ――」


 その瞬間だった。


 その時にドアが開かれたのだ。


「魔物はここね」


 その声が響いた後、光の光線が放たれる。

 そこにいたのはセリナだった。


「セリナ嬢、なぜここに」

「リデアス様が消えたって言うから、探しにね」


 そう言ってまた光の光線が放たれる。

 その攻撃はミノタウロスに的確にダメージを与えている。


 今までの中で一番だ。その光の光線。焦点集中型の攻撃はその体を貫き始めた。

 あの硬い体をだ。


「ピンチを救ってこその聖女でしょ」

「助かったわ、あなたが来てくれなかったらやばいかもしれなかった」


 私は目を向ける。そこではミノタウロスが再び立ち上がってきている。二人を相手に戦うのも厳しいだろう。

 確実に負けていた。セリナが来なかったら確実に全滅していた。


「後は私に任せなさい」


 セリナはそう言って唇をなめた。

 こういう性格だったか。


 それにしても気になる点がある。

 私の知る聖女という物は、もう少し神聖なものだった。

 それに、そもそも今の時点では聖女ではない。聖女というあだ名はもう少し後につけられるものなのだ。なんで今の時点で聖女って名乗ってるのだろうか。


 しかし、この際もはやそこの話はどうでもいいだろう。


 ただ、唯一言えることは、ゲームでの彼女とは明らかに違うという事なのだ。

 しかも、ゲームよりも遥に強い。


「じゃあ、行くね、シャイングバースト」


 その言葉に合わせて光が破裂する。そしてその攻撃範囲は私たちの前方全て。しかもそれが光の速さで飛んで来る。避けられる人などいない。

 ゲームでは見てたけど、相変わらずおぞましい力だわ。改めて敵じゃなくてよかったと思う。


 だが、この技は確か、必中だが、火力は心もとなかったはず。


「ぐりゅうううう」


 ミノタウロスがこちらに飛び込んでくる。その斧を以て。


「ファイヤーフレイム!!」


 私は叫び、攻撃を当てる。さらにリデアス様も魔法を放つ。ミノタウロスがいなくなったから、リデアス様も魔法に集中できる。その攻撃で、ウィレムを止めていく。


 だが、次の瞬間だ、セリナを狙ったふりをして、こちらに向かってきた。

 ミノタウロスの斧が私に襲い掛かる。


 一瞬だ。判断が遅れた。ウィレムに目を向けていたせいで、ミノタウロス側にまで警戒が向いていなかった。


 私は一瞬考える。そして――


 間一髪、その魔法の反発力を利用して後ろに飛ぶ。

 危なかった。あと少し回避が遅かったら真っ二つだった。


 そもそも数週間前まで日本という平和な場所にいたのだ。

 実戦経験などもほぼない。何度もよけ続けられるわけではない。


「リエラ!!」


 リデアス様が、ミノタウロスに魔法を連発ぶつける。


「ダークウェイブ」


 闇の波動が飛び、ミノタウロスに攻撃が当たり動きが一瞬緩む。


「今ならあてられる」


 セリアが呟く。


「シャインガン」


 その瞬間光の光線がミノタウロスを襲う。その攻撃に貫かれていく。

 その攻撃により、ミノタウロスは烈しいダメージを負ったようで、静かにその場に倒れた。圧倒的だ。


彼女の力は只物ではない。

っいや、待って!!


「危ない――」


 私は叫ぶ。セリナの背後に眼鏡男が襲い掛かってくる。倒れてたと思ってたのに。

 最期まで油断ならない奴だ。


 私は炎を一気に飛ばす。

 その攻撃が当たり、一瞬動きを鈍らせる。と、同時にセリアがその拳で眼鏡男を吹き飛ばした。


「このセリナ様と戦おうだなんて専念速いのよ!!」


 そう言って。はじき返すように。

 正確も違えば、実力もはるかに強すぎる。

 おかしな点が多いが、気にしないことにする。


 とりあえずセリナの一撃で吹き飛んだことに安心しよう。


「ありがとう」

「いや、まだ終わってないよ」


 そう言ったセリナは再び立ち上がろうとするウィレムに対し真っ直ぐに見る。

 そして、その隣にシエルがたつ。


「どしたの?」

「私も戦う」


「切り札がやられるとは、思ってはいなかったが、もう魔法は解除した。ここからが俺のターンだ」

「まさかまだ動けるなんて」


 セリナはそう呟いた。


「だけど、まさかこの人数相手に勝てるでも思ってるの? 滑稽だわ」


 そして、あざけ笑うように言った。


「まずは私が」


 シエルはそう言って闇をばらまく。


「やっぱり面白い魔法してるわね。後で私にも教えて」

「いいですけど、今はこいつの相手を」

「分かってるわよ!!」


 二人の魔法が炸裂していく。


 ここで、私にできること。

 考えれば、その方法は簡単だ。


 ウィレムの視界は二人に取られている。私は残念ながら弱いせいで、警戒されていない。


 動き出しはリデアス殿下のほうが速かった。

 背後へ一目散に走る。

 そして、一気に魔法を飛ばした。


「見えている」


 その攻撃は見事に防がれた。


「なら、これはどう?」


 私もまた魔法を飛ばす。警戒されていなかったみたいで、ウィレムの判断が遅れる。

防がれるも、ぎりぎりだった。ウィレムの体勢が激しく崩れる。


 私とリデアス殿下で稼いだ時間、そして崩した体勢、それは無駄じゃない。


 その攻撃の一瞬後に、シエルとセリナの攻撃。光の闇の融合魔法がぶつかっていく。

 そしてウィレムは、その魔法の渦に巻き込まれていった。


 沈んだ。やった。勝った。

 私は、そう、心の中でガッツポーズを決めた。


 でも分かってる。ほとんどの活躍は、セリナのおかげだ。シエルでさえもそこまでの活躍は出来ていない。

 私は疲れから、その場に倒れようとする。だが、直前でリデアス様に支えられる。


「大丈夫か?」

「ええ、少し疲れただけですわ」


 私がそう言うと、「そうだな、少し疲れた」と言って、その場に座り込んだ。


 だが、それで安心しきってはだめだったと、私は痛感することになる。

 目の前で、シエルがその場でヘタレ倒れ込んだ。


「シエル」


 私は弱り切った体に鞭を打ってシエルのところへと走り出す。


「シエル、シエル!!」


 私は揺り動かす。しかし、目覚める様子はない。


「……そんな」


 恐らく私はシエルの力に胡坐をかいていた。

 まさか、倒れてしまうとは。



 私達はその後、駆け付けた先生や衛兵たちにシエルを預けた。

 そう、私は今シエルの姉であり保護者だ。決して油断するべきではなかったのだ。

 そもそも、ゲームのシナリオ通りに行けば、シエルは余計な傷など負う事はなかったのだその結果、主要人物を捉えることに成功はしたものの、シエルの事を危機にさらしたのには変わりがない。


 私のせいだ。私が身勝手な行動をしたからかもしれない。

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