第10話 突入
「本当にその、黒幕? っているの」
「私はいるって思ってる」
「今まで言わないように思ってたけど、お姉ちゃんって未来が見えてる?」
「かもしれないわね」
正確には並行世界の、が正解かもしれないけど。
「その黒幕は今、体育館の中にいるわ」
実際に魔物達は体育館の方から出ている。それもそのはず。魔物を製造しているのだから。
「どこへ行こうとしているんだ?」
背後から声がした。誰にも見られない様に上手く逃走したはずなのに。
え?誰?
いや、この声色はあの方だ。
「リデアス様、なぜここに?」
なんで、ここにいるんだろうか。
「君たちが抜け出ていることに気づいたからさ」
相変わらず、物好きすぎる。それに完全にセリナの魔法に見とれていたはず。
なのに、わたしたちが消えたことに気づくとか化け物でしょ。
しかも、この人は王太子という立場だ。そんな人が安全な場所から逃げ出して、こんな危険な場所にいていいのだろうか。
自由人過ぎて、少し心配になってくる。
ゲームではこんな性格だったっけ。もう少し落ち着いていた気がするんだけど。
「あの、なんでここにいるの?」
ここにいてはいけないはずの人だ。
「だから気になったからだよ」
「王太子殿下なのに?」
「だから気になったからだよ」
ああ、もう話が通じない。
諦めるしかない。
それに、私個人としてはリデアス様がいようといまいとどちらでもあまり関係はない。
「たぶん、この先に今回の騒動の黒幕がいるの。私たちはそれを倒しに」
「なら、俺も混ぜてくれ」
そうなるよね。そうなりますよね。
イレギュラーすぎて、元からこんな性格だったっけ、って思ってしまう。
バタフライエフェクト的な何かだったりするのかな。
「分かりました。でも危ないことはしないでくださいね」
「分かってる。というか、そもそも言えば君たちが危ないことをしようとしてるだろ」
「うぅ、それはそうですが」
「お姉ちゃん気にしないで行こ」
「う、そうね」
王太子殿下の事は気にしないで行こう。
この人は元からこういう人なんだから。
そして体育館にやってきた。ここは主に、スポーツをするために使われる。
ちなみにだが、魔法の訓練場ではない。ここはあくまでも、体を鍛えるためのものだのだ。
私は体育館の前に立ち止まる。
「どうした」リデアス様が問う。
「ここにいるそうよ」
私は彼に静かにそう告げた。
「なら、一緒に倒そうじゃないか!!」
そして王太子殿下は即座に中に飛び込んでいった。
なんで、一目散に突撃するのだろうか。勝手に突撃されては困るというのに。
一番死んではいけない人間なのに。
とはいえ、私よりはしっかりと強いのが困りものなのだが。




