やりすぎました?
「まずはこれ」
インベントリから取り出したのは、髪を留めるためのアクセサリー、カチューシャだ。
リボンなどの装飾も考えたが、見た目はシンプルな――というか地味な――細長い半円に近い形の板を「C」型にしただけのものにした。
それを三つ用意してある。
この場にリアサが居るのは想定していなかったが、リアサの分も用意してあった。
「頭に付けて――こんな感じで、髪を留めることのできるアクセサリー」
その内の一つを手に取り、俺の頭に装着して二人に見せる。
「で、これに隠し機能があって」
カチューシャの内側、右側の端と中央部に「同調」の『特性』を付与した紙を仕込んでおいた。
右側の先端を右耳に当て、カチューシャの中央が口元にくる位置に持ってくる。
「こうすると、離れていても会話ができるようになってる」
説明をして、エルルネとリアサに一つずつ渡す。
プレゼントをこんな形で渡すのは、どうかなとも思ったが、これの説明もしたいし、ラッピングしてから渡すのも変かなと。
この辺が俺のダメな部分だろうなあ。
「あー」
「どうかな?」
「聞こえる」
どうやらそれぞれちゃんと機能しているようだ。
「正直、こうやって遠距離で会話できるってことは他の人には知られたくないから、どこかに隠れながら使って欲しい」
超秘匿事項だ。
「まあ、こうやって口に当てて声を出してるところを見られたら、変に思われるか心配されるかだろうし、何にしても隠れてやるべきだとは思う」
「それはたしかに」
「ん」
「もっとオシャレだったり、可愛くできたら良かったんだけどね」
「いえ。嬉しいです。ありがとう」
こういう時、機能面が充実した物を渡そうとするところも、俺のダメな部分だな。
リアサとエルルネは、この通話機能付きカチューシャで話して遊んでるし、機能重視も悪くない、といいなあ。
「ただ、これだけだと合図も何も無くて、会話を始めるのが難しいから、そのためにもこれ」
次に俺がインベントリから取り出して見せたのは、紙だ。
といってもただの紙では当然無い。
片面が真っ白、もう片面は真っ黒な明らかに細工の施された紙だ。
「もっと普通の紙に見えるように仕上げたかったんだけど、現状ではこれが精一杯なんだよなあ」
ぼやきながら機能の説明に入ると、二人も俺の話を聞くモードに戻ってくれていた。
白い面を上にして、セットになっている紙を二枚並べる。
片方の紙を指でなぞってみせる。
「こんな感じで、魔力を流すことで文字が書けて、しかもこっちの紙にも反映されます」
「おお」
「え? これ凄すぎない?」
「そして、裏から魔力を流すと、書いた文字が消えます」
この紙も「同調」を利用したものだ。
試行錯誤の結果、魔力を流すことで片面からのみインクが見えるようにできた。
なので、真っ白な面全体に魔力を流せば真っ黒になり、ひっくり返すと真っ白になっている、という感じだ。
セットになった紙を一枚ずつリアサとエルルネの前に差し出す。
「やってみて」
まずはリアサが雑に指でなぞると、太い線が描かれる。
それは当然、エルルネの前に置かれた紙にも反映している。
リアサの線から離れたところに、エルルネがさらさらと人差し指で紙をなぞると、細く美しい文字がそこにうまれた。
「アサには細い線はかけないでしょ?」
「む」
得意気なエルルネに対抗するリアサだったが、何度やってもリアサの線は太くなってしまった。
「魔力操作の差が出たか」
細く魔力を流すエルルネと、どうやっても多く流れてしまうリアサ。その差が目に見える形で表れていたのだ。
「じゃあこれもどうぞ」
ペン型の棒を渡す。
この紙、チャットツールというか、お絵描きチャットツールみたいなものなので、これはタッチペンとでも呼ぶべき物だろう。
流した魔力を、一定の細さ、量に調整してペン先から流れるようになっているので、誰でも細い線が描ける。
「アサ、その文字逆」
「むむ」
渡されたペンで文字を書いていたリアサに、エルルネから指摘が入った。
「まあリアサは現在読み書きの勉強中だしね」
この前獣人の村に建てた教室のような部屋で、村人たちに読み書きや計算を教えたりもしている。
何故か子どもたちより、大人のが張り切って勉強しているんだよなあ。
「こっちで連絡を取り合って、その後で会話するとかかなあ?
正直、声を出すよりは見つかりにくいかなと思うから、文字でやり取りを続けるのもアリだと思うけど」
「なるほど」
「あー、でも、文字だけのやり取りって、相手の感情を読み取りにくいから、そこだけは注意かな」
テキストコミュニケーションって、怒ってるように見えたり、冗談のテンションなのかわからなかったりしたよね。
二人の目の前にある紙は、お互いに「同調」してあるだけで割り込めないので、手元の紙に表情を表すような絵文字っぽいものを描いて、二人の間に置く。
「こんな感じで感情表現してもいいかもね」
「かわいい」
「オウギ、スゴい」
この短時間に、テキストコミュニケーションツールやら、お絵描きチャットやら、絵文字やらをこの世界に産み落としてしまった。
広めるつもりはないけど。
「あとはこれ」
インベントリから取り出したのは中央に水晶をあしらった、円形のペンダントだ。
「魔力を流すと中央の水晶が光るようにしてあるから、明かりが欲しい時にどうぞ」
これも結局便利機能付きだ。
「ベッドでくるまって、隠れて文字を送る時に、こうやって光らせてやるとかね」
「なんか、感覚がおかしくなってるけど、どれもとんでもない値段がつきそうな物ばかりじゃない?」
「王都やこの国の事情には詳しくないから正確にはわからないけど、たぶんとんでもない物だろうなとは思うよ」
辺鄙な土地に暮らしている上に、周辺国はおろか、この国についてすらほとんど情報を仕入れようともしていないので正確な事は何一つ言えないが、国を揺るがすような物であってもおかしくはない。
個人で遠距離と通信できるような手段を持っている者であれば、きっとこの国にも存在すると思うが、誰でも自由にそれができる手段などおそらく無いだろう。
これが仮に隣国との戦争に使われるとしたら、前線の情報や、移動中の部隊の情報、忍び込んだ他国の情報などをリアルタイムでやり取りできるようになる。
ビジネス、商売の場で使われるとしても、広範囲での情報収集により、相場や需要の変動、組織上位者の遠距離からの指示など、嫌でも根本から変革をもたらす物になるかもしれない。
とんでもない速さで情報がやり取りされるようになり、情報の扱いに長けた人間がのし上がっていく、そんな風に世界の在り方を大きく変える可能性を持っている物たちだろう。
となると――あれ?
「もしかして、一歩間違えれば危険を招きかねない物を渡そうとしているのって、良くないのでは?
これをあげようとしている俺って、最悪なんじゃないか?」
(´・ω・`)
「これがしょぼーん」
「「しょぼーん」」
\(^o^)/
「これがオワタ」
「「オワタ」」
m(_ _)m
「これがゴメン」
「「ゴメン」」
(T_T)(^_^;)( ・`д・´)(゜д゜)ヽ(`Д´)ノφ(..)( ‘д‘⊂彡☆))Д´)
「こんな感じで顔文字ってのもあるから、研究してみてもいいかもね」
「なるほど」
「顔文字、ね」




