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【クラフト】なるスキルをもらって転生しました。  作者: きゆつき


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河原で殴り合う不良じゃあるまいし

「リアサ? 何かあった?」


 ヘッドセットを装着してリアサと通信する。


『一旦引き分け』


 何かあったのかはわからないが、引き分けたらしい。


『とにかく、迎えに来てほしい』


「はいよ」


 とりあえず地下に潜って合流しますか、と行動しようとしたところで、


『オウギ、ちょっとそのまま、待って』


 と、リアサに遠隔で止められた。


「うん?」


 何かあったのか?


 少し待ってみるか。


『あの』


 エルルネの声、かな? おそらく。


「はい」


『これ、本当に届いてるの?』


「はい。聞こえてますよ」


『すごい……』


『でしょ?』


 リアサさんの勝ち誇っている声が、かすかに聞こえる。


「とりあえずそっちに向かいますね」


『こっちに来るって――わかった。だそうで――じゃない。わかったってさ』


 エルルネの口調がだいぶ砕けた気がするのは、通話だからなのか、リアサと何かあったからなのか。


 


 地下に潜って、二人と合流する。


 そこに居たのは、スッキリとした表情のリアサとエルルネ。


 二人とも着替えたようで、俺の【クラフト】した動きやすい服を着ていた。


「お疲れ様」


「ん」


「どうも」


 エルルネさん、キャラ変した?


「オウギ、お願いがある」


「うん」


「汗かいたから、お風呂、入りたい」


「了解」


「そんなすぐ入れるお風呂なんてある?」


「オウギならできる」


 今から作ることもできなくはないけど、もともとありますし、入れるように準備もしてあります。


「着いてきてください」


 ということで、二人を俺専用の風呂場に案内する。


 トイレとお風呂は、獣人の村に設置するより前に、自室から地下に降りてすぐの場所に設けてある。


 先ほど紹介したトイレのすぐ近くだ。


「もしかして、もう入れる?」


「うん。汗を洗い流したいって言うかもしれないと思って、準備はしておいた」


「さすが」


「さすがはオウギ――ね」


 エルルネ様、今度は呼び捨てですか。全然構わないんだけど、リアサに何か余計なことを吹き込まれてないよね?


 あとなんでリアサはうんうん満足気に頷いてるんすかね?


「バスタオルと着替えと石鹸とシャンプーにトリートメント(のようなもの)、あとはドライヤーっと」


 あるものを一通り見せる。


 ちなみにトリートメントは、果実や植物オイルを混ぜたものだ。


 いくつか【クラフト】して使ってみて、一番良さげなものを採用した。


「じゃ、俺は外で待ってるから。

 大人たちがいつ帰ってきてエルルネを呼びに来るかわからないし、あんまり長湯はしないようにね」


「ん」


「そうだね」


 二人を残して風呂場から出る。


 こういう時、マンガやライトノベルな世界では、全力でのぞきに行くものなんだろうけど、生憎と俺はのぞきという行為も、彼女らの入浴姿も興味がないので、当然やらない。


 逆に、俺が風呂に入っているときにリアサがのぞきに来る可能性はありそうだな。




 風呂上がりで頬を紅潮させた二人が出てきた。


 二人とも髪をしっかりと乾かし、服装も元通りに戻している。


「一旦部屋に戻りますか」


「ん」


「わかりました」


「あ、リアサ」


「何?」


「万が一に備えて少しでも匂いを消しておきたいんだけどいい?」


「ん。どうぞ」


「え? アサが臭うっていうの? 洗い流してきたばかりなのに?」


 エルルネから抗議の声が出てきた。


 っていうか、「アサ」? リアサのことでいいんだよね? いつの間にかあだ名で呼ぶ仲になったのね?


「いや、そういうわけじゃないんだけど……」


「ルネ、大丈夫。ありがと。

 オウギは変わったことするけど、だいたい意味あるから」


 リアサはエルルネを「ルネ」って呼ぶことにしたのか。


 河原で殴り合って、友情が芽生えるヤンキー漫画みたいなことがどうやら起きていたのかな?


 すっかりエルルネの口調も変わってしまっているし、悪影響与えていなければいいんだが。


 それにしても、俺はたまに無意味な変なことする奴って認識なんですね。リアサさん?


「ふーん。信頼し合ってるのね」


「ん。信頼してるし、愛し合ってる」


「はいはい」


「照れてるオウギ。かわいい」


「はいはい」


 なにはともあれ「浄化」をリアサにかける。


 これは当然司教様対策だ。


 主にリアサの着ている服についているであろう獣人の匂いを、なるべく消しておきたい。


 リアサ自身も竜の血を引いているはずなので、ただの人間とは違うと思われるが、司教様に感知されるようなものではない予想している。


 昨夜の夕食会で、司教様と接近するタイミングが何度かあったが、司教様の表情や魔力の動きを視る限り、俺が発生源という感じではなさそうだったのだ。

 

 リアサにべったりとマーキングされていそうな俺が大丈夫であれば、司教様の感じる獣人の匂いは、リアサのような竜の血を引く者の匂いとは別だろうということだ。

 

 まあ、俺が司教様の動きを感知できなかっただけで、俺をめちゃくちゃ疑っているかもしれないけど。


 そうなると、街で一切無かった獣人の気配を、帰ってきてから感じることになってしまうか。


 うーん。


「オウギ――は、何かを警戒してるの?」


 オウギ呼びにぎこちなさの残るエルルネからの質問。


 もう素直に答えてしまうか。


「司教様を警戒しています」


「なるほど。となると、アサ、は獣人ではなさそうだし、アサの住んでいる村に獣人がいる?」


「まあそんなところかな」


 獣人がいるというか、獣人しかいないんだけどね。


 リアサを獣人から除外するのは、一緒にお風呂に入ったけど、外見に獣人的な特徴が何もなかったからってことかな?


「たしかに司教様は胡散臭い」


 あれ? エルルネもそう思ってるんだ?


「エルルネから見てもそうなの?」


「裏であれこれ画策してのし上がってきた人だしね」


「そうなんだ」


「昨日オウギ、との結婚を勧めたのも、中央に関係の薄い家に嫁ぐことで、対立関係にある家の権力や発言力を増やす可能性を無くした上に、リリアリ教の無いこの地に自分の影響力を増やせるって魂胆からだろうし」


「なるほど」


 あんな思い付きの適当な発言にも意味があったのか。


「あの笑顔も苦手」


 貼り付けたような笑顔に見えるもんなあ。


「とにかく、あの司教様には俺の能力とか、リアサのことを気付かれないようにして欲しい」


「うん。わかった」


「てか、こんなところで立ち話してないで、部屋に戻ろうか」


「そうね」


「あ、オウギ」


「うん?」


「これ洗って」


 リアサは白い布を俺に渡そうと手を出す。


 インベントリ内でキレイにすればいいんかな?


「ってアサ! 何してるのよ!」


 叫びながらリアサから白い布をひったくるエルルネ。


「オウギにキレイにしてもらって、ついでに効果つけてもらお? ルネのパンツ」

「オウギ様って、一体何者なんですか……?」


 思わず口から漏れた。


 リアサが私との対決のために用意した道具は、いずれもとんでもない代物だった。


 適切に魔力を流し続けることで、ふわふわと玉が浮き続ける謎の道具。


 瞬間的に魔力を込めることで、遠くまで玉を飛ばすことのできる道具。


 そして、魔力を流すことで進む謎の乗り物。


 両手両足の置き場が決まっていて、右足から魔力を流すと加速、左足から流すと減速、後退、右手から流せば右に曲がり、左手から流すと左に曲がる。


 これが動くのは、この広間の中だけのようだが、未知が過ぎる乗り物だ。


 未知が過ぎるといえば、先ほど借りたトイレだってそうだ。


 王都にも無い清潔感に溢れた空間で、臭いも無く、なんなら中に居て落ち着くくらいだった。


 そして今着ているこの運動着もすごい。


 肌触りが良く丈夫で動きやすい。


 それに、着ているだけで魔力が溢れてくるような、謎の感覚まである。

 

 こんな素晴らしいものに溢れた場所なら、正直長居したいどころか、この地で暮らしたいとすら思えるくらいだ。


 私の立場的に許されはしないだろうけど。


 そして、リアサの話によれば、これらは全てオウギ様が作り出したものらしい。


 本当にオウギ様とは何者で、どんな頭脳、発想力を持っているのだろう。


 まあ、オウギ様が作ったということで、なんとなく恥ずかしさが勝って、リアサに勧められた運動用の下着だけは身に着ける気になれなかったけど。 

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