イモパーティー
「素人の手遊びみたいなものですけど」
インベントリから【クラフト】しておいた、祭壇代わりの台を置き、その上に陶器製のゲム山を模したものや、双子の精霊を模したものなどを並べていく。
「けして上手くないので、気に入らなければ下げます」
セッティングしている間、背後からじっと見られているのは感じるが、反応はなにも無い。
「こんな感じでなんですけど、どうですか?」
一応それなりの格好はついていると思いたい。
「「良い!」」
お。
「「これは良い!」」
双子の精霊が俺の背中をばしばしと叩いてくる。
「味わい深い」
「ありがとう」
「気合いと」「魔力が」「ものすごく」「込められていて」「「良いものだ!」」
気に入ってはもらえたらしい。
「メシもうまいし」「信心深い」「「さすがだ! オウギ!」」
「あ、ありがとう、ございます」
「何か褒美を」「取らせたいところだが」「「何も無い!」」
「この山の資源を使わせてもらってますから」
十分もらっているとも言えるし、これ以上ねだるもんでもないだろうな。
双子の精霊たちにそれなりに満足してもらった後、獣人の村へと向かう。
村の中央でジャガイモパーティーといきますか。
ジャガイモを調理するための準備にとりかかる。
油で揚げる用、茹でる用、蒸す用に「加熱」を付与した石鍋をセット。
蒸すためのせいろのようなものを竹で【クラフト】して、水を張った石鍋にのせる。
そんなふうに準備をしていると、獣人たちが集まってきた。
「おい! 風呂って最高だな!」「気持ちいいにゃ!」「オウギ様、ありがとうございます」「トイレもめっちゃキレイでいい」「ケツを洗うってあんなにスッキリするんだな」「もとのトイレは使えないわぁ」「うちの娘を嫁にどうだい?」「あんまり増やすのはダメ」「リアサは嫁にやらんぞ!」「お父は黙って」「トイレも風呂もだけど、水場もありがとな」「近くで飲み水が採れて、めっちゃ楽にゃ」「ホントありがとうねぇ」
俺がこれから何をするかというよりは、村の水回りを整えたことへの感謝のためのようだ。
今のところ不満点はなさそうだな。
そういえば、スライムはまだ移動させてなかった。
トイレも問題ないようだし、早いところ移動させなきゃ。
さすがにこれから料理をしようってときにすることではないので、後回しにはなってしまうが。
「それで、今日は何してるんだい?」
いつの間にかリアサのお母が隣に立っていた。
「農業を手伝ってもらおうと思ってるんですが、育てようとしているものがどんなものか、味わってもらおうかなと思いまして」
ジャガイモ自体はこの世界に於いてもポピュラーな食べ物なので、過去に食べたことはあるかもしれないが、ここに来てからはそんなに食べてないはずだ。
さらに、薄くスライスして揚げるというのは未知なんじゃないかと思われる。
とにもかくにも、食べることで農業へのモチベーションが沸いてくれれば良い。
風呂やトイレもそうだが、体験するのは大事だろう。
ところで、ジャガイモを茹でるとか蒸すって、どれくらいの時間やればいいんだろう?
こういうのってなんか目安あったっけ? とりあえず棒を突き刺して固さを確かめてみるくらいしかないか?
しばらく、獣人の皆さんと世間話をした後、串を【クラフト】して、ジャガイモに突き刺す。
スーッと軽く刺さったジャガイモをお湯から上げ、十字に切り込みを入れる。
ってこれ、茹でたり蒸す前に切り込み入れておく方が良さそう。次はそれで試してみよっと。
茹で上がったもの、蒸し上がったものを、塩と共に並べる。
マヨネーズとかバターを味付けに欲しいところだが、無いものは仕方ないので、塩味で我慢してもらおう。
「これ、食べていいのかい?」
「はい。皮をむいて、塩をかけて食べてみてください」
次は予め切り込みを入れて、茹でと蒸しの二周目にとりかかりながら、本命の揚げ作業を開始する。
「ほくほくしてるー」「悪くないね」「俺はこっちの方が好きだな」
ジャガイモの評価を聞きながら、きつね色に仕上がった薄切りのジャガイモ――ポテトチップスを油から上げていく。
「こっちも食べていい?」
「ちょっと待ってね」
油を軽く落としたところで皿に移し、砂糖と塩をかける。
「これで良しっと、どうぞ召し上がれー」
どれどれと手に取り口に運んでいく獣人たち。
――パリッ。パリッ。パリッ。パリッ。
一度口に入れた者を、やめられない止まらない状態へと誘う魔の食感。
茹でと蒸しを先にもっと出して、腹を満たしてから揚げるべきだったか。
ジャガイモ栽培へのモチベーションを高めるためと思ってのことだったが、出すのが早すぎて失敗だなこれは。
結局、そのまま一時間以上、ジャガイモをきつね色に変える作業に従事し続けることになってしまった。
「美味しすぎる」「これを俺らで作れるのか?」「僕も作りたいー」「むむぅ。これは結婚を認めざるを得ない、か」「ふふん」「油も自分たちで採れるのかい?」「もっと食べたいー」
とりあえず好評価を得たようだし、この催しは成功だと言って良いだろう。
「さっそく今から種を植えるか!?」
「もうすぐ日も暮れますし、今日は帰ります」
「そ、そうか」「残念」「じゃあ明日?」「明日からやろ?」
「そうですね。じゃあ明日からで」
「おー」「やった」「楽しみー」「がんばるにゃ」「張り切りすぎて腰痛めるなよ?」「オウギ様またあしたー」「オウギ、おやすみ」「色々すまんな。助かる」「ジャガイモおいしかったよ」「ありがとー」
夕飯に間に合うように家に帰り、あとは寝るだけという状態で魔力を消費し切ろうとインベントリを開く。
「あー」
インベントリ内部での発見は何度目かになるが、今回も驚かされてしまった。




