植物油を求めて
芋を育ててもらう前に、とりあえずみんなに食べてもらおう。
と、思ったのだが、どうやって調理して出せばいいんだろう?
焼く? 茹でる? 蒸す? 揚げる?
バターとかマヨネーズもないしなあ。
亜麻から採った油があるし、揚げてみるかと試してみたりもしたがおいしくなかった。
亜麻の油は揚げ物には適さないらしい。
手持ちの調味料は塩と砂糖しかないが、ふかし芋にして食べてもらうのがわかりやすいかなあ。
薄切りにして油で揚げて塩と砂糖をかけてパリッと味わって欲しい気もする。
油が採れる植物をちょっと探してみるか。
見つけて高速促進農業で大量生産して、油を確保したい。
風呂場とトイレも一旦完成したし、獣人のみなさんに試しに使ってもらっている間に、植物油ゲット作戦に移る。
獣人の村から谷を挟んで向こう側は、リアサと共に一度探索をしたことだし、油の採れそうな植物探索は、こちら側でしてみようかな。
「リアサ」
「ん。行く」
まだ何も言ってないんですけど?
「どこに?」
「なにもわからずに行くなんて言わない。地獄に行くとか言い出したら困るでしょ」
「オウギが行くなら行く」
「さすがに地獄に行こうとするのは止めるなり、理由をきちんと確認した方がいい」
「ん。で、どこに行くの?」
どこに行くのかは確認するが、そもそもどこかに行くのかどうかを確認はしないらしい。
リアサなりの確信があるのだろう。まあ合ってるんだけど。
「こっち側の探索をしたいなって思って」
「任せて」
「目標は油の採れる植物」
「じゃあやめる」
「え? なんで?」
「またオウギが土いじりしかしなくなる」
たしかに、見つけられたら増やすのに時間を費やすのは間違いない。
「リアサが行かないなら一人で行ってくるね」
「む。イジワル」
「油が採れるようになったら、おいしいものを食べれるよ?」
「むー。わかった。行く」
「よろしくね」
「あたしが最初に食べる」
「了解」
リアサが先導して道無き山道を進む。
「木の少ない開けたところか、水辺を調べてみたいかな」
「ん」
このあたりはまだ双子の精霊のテリトリーなのだろう。
一応警戒はするが、スライムなどの魔物の姿は見えない。
「リアサは使ってみてくれた? お風呂」
話を振るあたり、警戒しなきゃなとは思っているものの、ほとんど警戒心など無いのかもしれない。
「ん。良かった」
「何か不満点とか、改善点とかあったら教えてね」
「じゃあ」
すでに何か不満点があるのか。
「一緒に入ろ。お風呂」
「へ?」
「あたしとオウギで、お風呂」
不満とか改善案ではなく、要望だった。
「それは無理かなあ」
リアサのお父に殺されかねないし。
「えー」
「女の子が素肌を簡単に見せちゃダメです」
「オウギならいい」
「ダメです」
「あたしは見たい」
「ダメです」
「どうせいつかは見せ合う」
「なら、見慣れないようにその時まで見せない方がお得だと思うよ」
「むー。それは、一理ある」
申し訳ないが、お互い成長するのと、俺の精神がこの身体の方に引っ張られて、一人の女性として見られるようになるまでは待っていてもらいたい。
「だから今はまだダメです」
「わかった」
そんな雑談をしながら進むと、陽の光が多く射し込む開けた場所に出た。
アブラナとかヒマワリとか、オオアラセイトウ――諸葛孔明関連のマンガで知った。ムラサキハナナとか呼ばれたやつ――とか、木だけどオリーブとか生えていないだろうか。
とりあえず目に入る植物を、手当たり次第回収していく。
これも違う、これも違う、これは、たぶん違う、これは――。
「お」
「ん?」
「これか?」
「あった?」
緑色のサヤがいくつも生っている植物があった。
アブラナの種ってこんな感じだった気がするんだが。
日本だと大きな河川の土手に生えていたイメージで、山の中に自生するのかはわからないが、そもそも俺は詳しい生育環境を知らないだけで、普通にどこでも育つのかもしれないし、ここは魔力のある世界だからなんとかなるのかもしれないし、別の種だからこういう環境で育っているのかもしれないし。
インベントリに回収してみたところ、「アブラナ」だと表示された。
「これだー」
日本だと「セイヨウアブラナ」が幅を利かせて勢力を広げていたと聞いた覚えがあるが、この世界に西洋も東洋も無いはずだ。
この「アブラナ」の持つ性質が、元の世界に於ける「アブラナ」と「セイヨウアブラナ」のどちらに近いのか、どちらでも無いのかはわからないが、揚げ物に使える油が採れるものであることを祈りつつ、何本か回収していく。
まさかこんな短時間でお目当ての品にありつけるとは。
早速これを「促進」栽培したいところだが、ここで即帰るのはさすがにリアサに悪いか。
「オウギ」
「うん?」
「それから油が採れる?」
「やってみないとわからないけど、採れるはず」
「すぐに採れる?」
「一旦増やしてからかなあ」
「じゃあ、増やそ」
「今から増やしにいっていいの?」
「ん。良い」
「一緒に行く?」
「行く」
リアサと連れ立って、谷底にある試験農場に向かう。
自生していた場所で、「促進」を土に付与することも考えたのだが、後始末が面倒そうなのでやめておいた。
しかし、自生していた環境が育ちやすいということだと思うので、周囲の土をある程度回収して、トンネルを掘った際の残土で埋めた。
試験農場で、土を入れ替え「アブラナ」を植える。
まだ緑色なので、おそらく種は収穫できなさそうだし、種が採れそうになるまで様子見だ。
この種か入っていると思われるさやが割れて、種が落ちていくと回収が面倒なので、布で地面を覆っておこう。
俺がそんな事をしている間、リアサが興味深げにきょろきょろと周囲を見ている。
ここに連れてくるのは初めてだし、色々と新鮮なのだろう。
植えなおした「アブラナ」は、あっという間に茶色く枯れたような色になり、さやが割れていくつかの種が飛び出していった。
布被せておいて良かったー。
まだ太陽は頂点まで昇っていないようだし、今からこれを植えて育ててみようか。
お読みいただきありがとうございます。
何があったのか不明ですが、最近PV数が伸びており、とても嬉しく思っております。
よろしかったらまた次回も読んでいただければ幸いです。




