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【クラフト】なるスキルをもらって転生しました。  作者: きゆつき


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ドラゴンパンチ

「んっ!」


 リアサが動いたのは見えた。


 俺はリアサが駆けていく姿をただ見ているだけだった。


 最近の鍛練と、俺が【クラフト】した靴に付与されている「加速」の効果で、リアサは神速と表したくなるようなスピードでクマとの距離を詰め、その勢いのままクマの顔面をぶん殴っていた。


 呆気にとられて言葉も出ない。


 靴の「加速」は、ある程度魔力を込めることで発動するように【クラフト】してみたが、これほどまでに速度が出るとは。


 しかも、「加速」によるブースト効果を、しっかりと使いこなすのは簡単ではないはずだ。


 バランスを崩して逆に走りにくくなる可能性だってある。


 それをリアサは見事に使いこなした――乗りこなしたのだ。


 魔力による身体能力の強化――魔術が仕上がっていってるのが見えるし、視える。


 そして、俺が【クラフト】したスキル「ドラゴンパンチ」による攻撃。


「……つよっ」


 「スピード」掛ける「重さ」掛ける「スキル」掛ける「属性タイプ一致ボーナス」で、威力ごおくちょうまん倍だ!


 その超強力な攻撃を繰り出したリアサは、振り返ってこちらに向かってVサイン。


 これ「やったか!?」案件な気がするので、俺も慌てて駆け寄っていく。


「一応まだ油断しちゃダメ」


 そう声をかけておくが、油断していたのは他でもない俺の方ではある。


 果たして立ち上がってクマが再び襲ってきた――なんてことは起こらず、恐る恐る確認しつつ近付いて触れると、インベントリへ収納できてしまった。


 あの強そうなクマを一撃ということになる。


 リアサさんやばいっす。そんな攻撃力見せつけられたら俺、下手に出るしかないっす。


「お見事」


「ん!」


「凄いね。魔術も良くなってるし、その靴もちゃんと使いこなせてる」


 もっと褒めろと言わんばかりの表情で頷くリアサ。


「鍛練を重ねた成果が出てるね。確実に強くなってる」


「ん。ありがと」


「ところで、この倒したクマどうする?」


「オウギに任せる」


「俺が決めちゃっていいの?」


「ん」


「じゃあ、綺麗に解体して肉とか毛皮を村の人たちに渡そうかな」


「じゃあそれで」


「さっき食べた加工して焼いた肉、ハンバーグ状にしてみんなに振る舞うか」


「おおー」




 その後もしばらく二人で探索して回ったが、とくにめぼしいものも無かったので、早めに村に戻ることにした。


「えー」


 リアサは帰りたくなさそうにしていたが、今後も探索はまだまだ続けるので、次も一緒に行こうと約束して納得してもらった。


 実際、一撃でクマを倒せる人間がそばにいてくれるのは、精神的な余裕ができるのも含めて助かる。


 村に戻ったところで、クマ肉ハンバーグを振る舞いながら、毛皮や骨、内臓などを広げて見せ、リアサと共に狩った獲物で、リアサも納得しているので村人たちで話し合って分けてねと伝える。


 とはいえ、皆ハンバーグに夢中で、ほとんどクマ素材に興味を示す人はいなかったが、リアサのお(とう)ともう一人が、クマの毛皮を手にとってたしかめていた。


「これならいけるか?」


「丈夫そうですね」


「何かに利用するんですか?」


「オウギか。この毛皮をもらってもいいのか?」


「ここに広げてあるものは全てどうぞ」


「かなり立派な毛皮だ。これなら問題無くいけそうだ」


「何かに利用方法が?」


「秘密、としておこうか」


 俺がいつも秘密秘密言うもんだから、仕返しとばかりに嬉しそうに言う。 


「上手くいったら教えてださい」


「そうだな。

 それにしても、よくこのサイズのクマを狩れたもんだな。どうやったんだ?」


 おたくのお嬢様のパンチ一発です。


「秘密です」


「むむっ」


「リアサに無理をさせてはないだろうな?」


「それは、はい」


 ……無理はさせてないと思う。無茶苦茶な強さを見せつけてくれたけど。


 しかし、このクマの毛皮を何にどう使うつもりなんだろう? なんてことを考えていたのだが。


「「うまい!」」


 ん? あれ?


 いつの間にか双子の精霊がその場に混ざって、ハンバーグを凄い勢いで食べていた。


「「おかわり!」」


 食べ終わった後に感謝はされたとはいえ、双子の精霊の十回ものおかわり要求に応え続けることになった。

  



 さて、せっかくガイゼに種芋を用意してもらったので、獣人の村に芋畑を作って栽培したいと思う。


 で、そのために自由に使える水が欲しい。


 精霊の社までの道に側溝を掘って、雨水を溜められるようにしてみたが、いくらでも自由に使えるというほどの水は溜まっていない。


 村の飲水を汲んでいる沢から、畑を賄うだけの水を持ってくるのも大変だ。


 ということで、どこかから水を引いてこようと思う。


 問題はそれをどこからということになる。


 真っ直ぐ地下を掘っていけば、いつか地下水に当たるとは思うが、そこから汲み上げられるかどうか。


 手押しポンプを自動【クラフト】できればいいが、自動でできなければ、仕組みを理解して自分で機構から何から何まで全て【クラフト】しなければならなくなる。


 いずれはやりたいが今すぐは無理そうな気がするので、井戸の研究はしつつも別の方法も考えるべきだろう。


 水なので、下から上に汲み上げるのは難しいが、上から下であれば勝手に流れてくれるし、ここより高い場所に水源を見つけて、水路を引き込む方が楽な気がする。


 この村は、我が家よりは標高の高い場所にあるが、ここより南側には、富士山より高いと思われる山脈が連なっている。


 となれば、ここよりもはるかに高地で地面に染み込む雪解け水や雨水を、ここよりも高地で漏れ出す箇所を掘り当てることができれば、そこから徐々に勾配をつけて流し、村に運ぶことが可能なはずだ。


 運良く水が出てきますように、と祈りながら山脈のある方向に向かって横穴を掘る。


 穴を掘り進めることに関しては慣れたものである。


 一日でかなりの距離を進むことができたが、満足できる量の水が湧き出る場所には当たらなかった。  


 明日以降に期待だなと切り替えて、その日の掘削作業を終えて獣人の村に一旦戻る。


 すると、リアサの倒したクマの毛皮で何かを包み、持ち歩くリアサのお父がそこにいた。

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