子どもたちの処罰
リアサのお父――ユーヒが、手を離せと言う度に、リアサの手に入る力が強くなる。
マジで痛い。そろそろ手の骨折れそう。
「リアサ! いつまでもそんな男と手を繋いでるんじゃない!」
一応村の救世主ですよ? そんな男呼ばわりはどうかと思います。
痛いのでせめて力は緩めてほしいところですけど。
「やだ」
リアサは俺の腕に抱きつき、ユーヒを挑発するようにべーと舌を出す。
「リアサァァァ」
ガクリと膝をつくユーヒ。
「で、次の話に移っていいですか?」
「冷静すぎないか? 君は」
親子喧嘩に長々と付き合うのも面倒いですからね。
「子どもたちから話は聞いたんですか?」
「それか。もちろん、全員に聞いてまわった」
ユーヒは何事もなかったかのようにスッと立ち上がる。
「山の精霊の社を壊したって言ってました?」
「ああ。壊すつもりはなかったが、ちょっと触ったら崩れてしまった。というのが子どもたちの言い分だな」
本当に触っただけかはわからないが、あの木材の状態であれば、押したり叩いたりで崩れていくことだろう。
「子どもたちへの処罰はどうなったんですか?」
「君のおかげで皆体調は回復したとはいえ、まだ病み上がりということで、おとなしく寝てろと言ってはあるが、家に閉じ込めておくことが罰として正しいとも思えんし、どうするかは正直考え中だ」
「村の決まりでこれをさせるとか、これをさせないみたいなのは無いんですか?」
「そういうものは無いな。これまで悪事を働く者も出てなかったしな」
「一つ罰――と言えるかはわからないですが、案があるんですけど」
「ほう?」
「山の精霊たちに話を聞いてからなんですが、これから建てる社の掃除とかを定期的にやってもらえないかなと」
「変に怒りを買うかもしれない事態は避けたいがなあ」
「たしかに、触らぬ神に祟りなしとは言いますけどね。
しかしご近所さんですし、こういう事が起きたときに、一方的に向こうのやりたいようにさせるのではなく、話し合える関係性を築いておくほうがお得じゃないですか?」
「ふうむ」
「それを罰と称して、子どもたちに担ってもらおうかなと」
「子どもたちで大丈夫なのか? 既に怒りを買っているというのに」
「むしろ子どもたちの方が向いている気がします」
「たしかに」
リアサが頷いてくれる。
「どういうことだ?」
「山の精霊も子どもみたいなものですから」
「そうなのか?」
「ん。あれは子ども」
「反省のために社や周辺の掃除とかをさせてもらいつつ、構ってもらうという名目で一緒に遊べばいいと思います」
「一緒に遊ぶ? のか? 精霊さまと子どもたちが?」
「はい。遊ぶと思います」
「遊ぶ」
「そうなのか。
だが、それはそれとして、謝罪はするべきか?」
「謝罪はしましょう。長として」
「長の座を譲るから、君からしておいてくれないか?」
いや、いらないんですけどその椅子。
「あり」
乗り気なリアサ。
「あたしと結婚して、長になればいい」
「結婚は違う」
「長の娘と結婚。わかりやすい」
俺の存在を蔑ろに話を繰り広げる親子。
「親子喧嘩してるところ悪いんですが、長にはならないですからね」
「長にはならないが、リアサと結婚はするということか!?」
「オウギ。嬉しい」
顔を赤らめて、しなを作るリアサ。
うーん。結婚もしませんとは言いにくいよなあ。
早くても数年後だろうけど、絶対にしないとも限らないしなあ。
「それも置いといて」
「「おい」」
「仲良し親子ですね」
「まあな!」「違う」
このままだと話がとっ散らかり続けてしまう。
「子どもたちのこともありますし、俺は一旦山の精霊のところに行ってきますね」
その後も親子喧嘩が続いたが、どうにかこうにか村を離れて山の精霊の元へ向かう。
「ふふーん」
当然のように隣りにいる、テンションの高いリアサと手を繋いで歩く。
ここを定期的に通るとしたら、道も整備したいところだな。
ちなみに道路工事もしたことはない。なので、やるとしても手探りだ。
なんだかんだ、こっちの世界でやっていることはほぼ手探りではあるか。
もう少し日本での経験を活かしてみたいところだ。
で、道を整備するとしてどうするべきだろう?
なるべくまっすぐ通したいので、何本か木を伐ったり、雨でぬかるまないように地面を固めたり、魔物への対策として柵を設置したり――か?
土を固めるか、木の板を敷くか、石を敷くか、砂利道にするか。
アスファルト、は石油由来のものだとは思うが、分からなさすぎて用意できないから無理か。
コンクリートも正直詳しく素材を把握できているわけではないが、まだ用意できる可能性はありそうだし、いつかはコンクリート舗装道とか作ってみたい。
そんなことを考えながら歩いているうちに、仮に建てた社が見えてきた。
それと同時に見えたのは、トランポリンでぴょんぴょん跳ねている、双子の精霊の姿だった。




