トンネルの先には
地下を掘る。ひたすら掘り進める。
あまりにも我が家から遠くまで掘り進めたことで、行き帰りの移動に時間をかけるのがもったいなくなってきたので、五日くらい家に帰らず、拠点を用意して寝泊まりしながら掘り、家に帰って二、三日は獣人の村の整備や作物の様子見、試験農場での品種改良や種集めなどを行うサイクルで作業を続けていった。
休養も適宜取ってはいるが、自分でやりたくて仕方ない作業なので、ついつい作業の時間が増えていってしまう。
そんなやり過ぎ感もあった地下道掘りだが、1年の中でも一番暑い時期を過ぎたあたりで、目標としていた場所の近くに出入り口を設けることができた。
我が家から南に向かって掘り続けた先にある目標地点。
それは、王都だ。
さすがに王都近くに出入り口を作るのは難しそうだったので、少し離れた場所と、王都を望む山の中腹辺りの人気の無い、簡単には見つからなさそうな場所に設けることにした。
王都は頑強に見える城壁に囲まれた城塞都市で、近くを流れる大河が分岐している地点にあり、物流拠点として人が集まり、発展した結果大きくなった街だと思われる。
離れた場所から王都を眺めているが、人の出入りが多い。
城壁の外にも人が暮らしている様子が見て取れるが、あれはいわゆるスラム街ってやつだろうか。仕事を求めて何とかたどり着いた人々が、荷揚げ荷下ろしでなんとか生計を立てている、という感じなのかな?
なんにせよ王都周辺は人が多く、不用意に近付くのは止めておくべきだろう。
あの城壁に囲まれた広い街の何処かで、エルルネや俺の二番目の兄上――ホウク、三番目の兄上――オウベが暮らしているのだろう。
しかし、ちょっと離れているとはいえ、こんな風に王都が丸見えの場所に何の警戒も対策もしていなくて大丈夫なのだろうか?
俺が穴を掘り進めて来たからたどり着けただけで、この場所には簡単に上って来れなかったりするのだろうか。
ま、王都の守りは王都に暮らす人々が考えればいいか。
ともかく、我が家から王都に至る道を作ることができたわけだが、王都に入ろうとか思っているわけではない。
そもそも正攻法で城壁の中に入れてもらえるとも思えないし、入れたところでトラブルに巻き込まれるのがオチだろう。
何らかの展開を生み出したいのであれば、侵入でも何でもしてやろうと思うところだが、俺はできる限り面倒に巻き込まれたくない人間なので、中に入る予定は今のところ無い。
エルルネがどうしても家出をしたいとか言うのであれば、リアサと共に連れ出しに行くだろうけど、そういうイベントが無い限りは遠巻きに眺めるに留めておく。
いや、王都に入るつもりはないが、忍び込む必要が出てくるかもしれない。
そこで、王都の地下にはきっと下水道のようなものが整備されているだろうと掘り進めていくと、案の定下水道に接続することができた。
勝手にトンネルを繋げたことが発覚すると色々面倒が起きそうなので、出入り口と取り外し可能の覗き口を作って、ほぼ元通りに戻しておく。
それを三箇所ほど作って終わりとしておこう。
いざという時に乗り込めるようにはなったものの、下水道だけあってめちゃくちゃ臭かった。
ネズミやよくわからない虫もたくさんいるし、スライムすらも存在していた。
スライムが欲しくなった時に、いつでも見つけられそうな場所があるのは助かる。
後は臭いとか衛生的な問題への対処法だけ考えて、用意しておけばいいかな。
一応整備はしたが、おそらく使うこと無く一生を終えることになるだろうな。この地下道。
とりあえず王都周辺でやることはこんなもんかな?
リアサと一緒に王都鑑賞――観光ではない――をした時に、エルルネと会いたそうにしていたが、リスクしかないと説明して今は諦めてもらった。
一応エルルネには、割と自由に王都の近くまで行けるようになったことは伝えてあって、外から見える王都を描いて、どこに何があるとか、どんな風に道が繋がっているとかを教えてもらいながら、王都内の地図を作成したりもしている。
万が一下水道から乗り込んだ時に、迷子になったら意味が無いからね。
王都に関しては、近くまで来た、で正直大満足なので、その次の行動に移る。
と言ってもやることは地下を掘って進むだけだが。
王都近くから東、西、南と三方向に進む予定だ。
平原などの開けた場所に地下から飛び出そうものなら、隠れようもないので、山や森などの遮蔽物がたくさんある場所を狙って進む。
当然だが、地下を進んでいるので、地上がどんな場所なのかはわからない。
木の根の数を頼りに判断することもあるが、地上に小さな穴を繋いで、そこから確認することもある。
頭を直接出して確認するのはさすがに怖いので、そのための道具を【クラフト】しておいた。
それがこの、潜水艦から水上を見るために用いられる潜望鏡――で合ってるのかわからないけど、そんな感じのやつ――だ。
潜水艦に詳しくないので、こういうものが実際には使われておらずイメージ上だけのものかもしれないが、筒を二回直角に折り曲げて、折り曲げた位置に鏡を取り付けたものである。
鏡に関しては、長い距離を掘っているうちに集まっていた、石英や銀の鉱石から【クラフト】したものだ。
そうして【クラフト】した潜望鏡の先を地上に突き出し、周囲を確認、掘る方向を決める、という感じで作業を進めていく。
王都までのおよそ二百キロメートルを掘り進んだ経験のおかげで、王都から東、西、南にある街の近くまで行ける地下トンネルを、秋の収穫期を迎える前にそれぞれ開通させることができた。




