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【クラフト】なるスキルをもらって転生しました。  作者: きゆつき


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後処理

 ガヴィを穴に落として閉じ込めることには成功したが、中での様子はさっぱりわからない。


 さすがに酸素が無くなり、一酸化炭素まみれになった空間の中で生きているとは思えないが、人間を辞めている可能性もないわけではないからなあ。


 壁は壊せていないと思うが、何らかの幸運が重なり脱出できる可能性もゼロではない。


 正直危険だし怖いが、最終的には中を確認しなければならないだろう。




 ガヴィを閉じ込めてから三日経った。


 町の宿には戻っておらず、行方不明だとノーレンが警戒を強めていたが、こちらの事情は申し訳ないが伝えられないので、警戒を続けていてもらおう。


 俺の知らないところで抜け出されていた時には、しっかり探し出してもらわないといけないし。


 では、中を確認しにいくか。

 

 とはいえ、ガヴィが中に居るのか居ないのか、居たとして生きているか死んでいるかわからないので、慎重に行動する必要がある。

 

 神視点から見ていれば、すでにどうなっているのか分かっているだろうし、こんなに緊張する必要もないのに。

 

 神視点ずる過ぎる。

 

 俺からすれば生きているか死んでいるかのフィフティーフィフティーだ。

 

 シュレディンガーの猫ってやつか?

 

 でもあれって、猫が生きてる状態と死んでる状態の重ね合わせ状態で、観察するまで確定しないなんてありえねえだろ? って主張するために出てきた話だったっけか。

 

 量子サイズと、目に見えるサイズで挙動が違うってのを、何も考えずに受け入れるのが早そうだなって思ったのを覚えている。

 

 だがガヴィは量子ではないので、中に居るか居ないか、生きているか死んでいるかは観測するまでもなく確定している。


 現実逃避でくだらないことを考えてないで、確定している状態を確認しにいくとしますか。


 蓋にしている塊を取り除いて確認するのが一番手っ取り早いが、いくつか危険がある。


 さすがに温度は下がっていると思うが、中が高温のままで木材が燻っているような状態だとすると、酸素が入ってきて一気に燃え上がる可能性がある。


 温度が下がりきっていたとしても、一酸化炭素が充満している密室だ。流れ出てくる一酸化炭素を吸ったら、当然俺も無事では済まない。


 というかこの密室内の気体って、外に出しても大丈夫なのか? 大気中に紛れ込んでしまえば、微々たる濃度になるとは思うが、安全に処理できる方法があるならばそうするべきな気はする。


 問題は知識がなさすぎて処理方法がわからないことか。


 インベントリ内生成AI「ンべちゃん」の開発が待たれるところだ。


 待ってないで自分でやれと言われてもできないし。


 なんだ大規模言語モデルって。全然わからん。


 できることなら中の気体ごとインベントリに収納したいところではあるが、それも無理だろう。


 密室の中の状態もさることながら、ガヴィが生きているという可能性もある。酸素の代わりに一酸化炭素を使用する体内構造に変化してるかもしれないし。


 とりあえずどうするかと考えた結果、小さな穴を開けてそこから水を流し込み、水と入れ違いに出てくる気体を風で吹き飛ばすことにした。


 ガヴィが生きていた時に、水に溺れさせようという理由もある。


 漏斗のような物を穴の真上に突き刺し、水を溜めておいて、スキルを使って穴を開ける。


 その漏斗に【クラフト】した強力型送風機で風を当て続ける。


 水はインベントリ内に溜め込んだ大量の水を取り出し注ぐ。


 二時間ほどかけて水を注ぎ続けたところで、満水になったようで流れ込んでいかなくなった。


 そこからさらに、念には念を入れて一日待ち、いよいよ蓋にしている塊をインベントリに収納して取り除こうと思う。


 気温はこの時期本来のものに戻ってはいるが、森の中ということもあり、ひんやりとした空気を感じつつ、意を決して作業開始だ。


 まずは蓋となっている塊と穴の縁を繋いで埋めた部分を「穴掘り」スキルで掘り、蓋をインベントリに回収。


 すると、池のような状態で穴の中に水がたっぷりと溜まっている様子が見えてきた。


 ガヴィの姿は見えない。


 一日放置したので、水を濁らせる土などは沈んでいると思うが、底の様子までは見えないので、沈んでいたとしたらガヴィを確認できないのも当然か。


 もしくは抜け出されている可能性もある。その場合は今がチャンスとばかりに姿を現して俺にアピールしてくることだろう。


 一旦周囲を窺うが特に変化も異常も無し。


 次の作業へ移ろうか。


 穴の縁を崩して、水面に近付けるよう整え、水面に手を置く。


 そして、水を一気にインベントリに回収。


 すると、出てきた。横たわったガヴィの姿だ。


 水に一日浸けておいた状態だが、見た目にはそういう変化は見られない。生きているのか、肉体が常人とはほど遠いものなのか。


 魔力を視る。


 僅かに魔力を発しているが、流れているわけではなく、これで生きているのであれば魔力まで含めてかなりの演技派と呼ぶしかない。


 慎重に穴の底に下り、ゆっくりとガヴィに近付く。


 ここで動かれたら俺の命は無いかもしれない。


 身動ぎ一つしないガヴィに触れる。


 インベントリに回収――できた。


「ふうーーーーー」


 大きく息を吐く。


 無事に作戦を成功させたという達成感。


 リアサや獣人たちに被害が及ばなくて済むという安心感。


 そして――人を殺めたという罪悪感。


 全てが同時に押し寄せてきた。


 この世界ではともかく、日本で言えば大罪人だ。


 そして、どうしたって日本で生活していたときの価値観やモラルは拭い去れない。


 とはいえ自らが望んでやったことでもある。


 とりあえず今は、この場の後処理を終わらせることに集中しよう。


 必要なものを回収していき――うーん。この文字を刻んだ墓標はどうしよう。別に要らないから埋めておいてもいいんだが、とりあえず回収しておくか。


 穴は適当に埋めて完了。


 こんな行為に意味や価値があるのかわからないし、何故俺はそんなことをしたのか、我ながらよくわからないが、穴のあったところに向かって手を合わる。


 しばらくそうしてから、その場を後にした。

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