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Hollow Altar online  作者: 774のもち
第一章
5/28

05・始動

ようやく物語が動き始めます。

 朝になると拠点には鐘の音が響き渡る。どこから聞こえるのかというと拠点の北にある教会の塔の上からであり、毎朝決まった時間に鳴るようになっているのだ。誰がどうやって鐘を鳴らしているかは誰も塔の上に登ることができないため分からないが、ほとんどのプレイヤーはこの鐘の音を合図に動き出し、それと同時に拠点も活気づく。商業区には朝食をとりに来たプレイヤーが溢れ、NPCやプレイヤーが経営する店は忙しくなる時間帯だ。もっとも、朝一番からエリア攻略に乗り出す気合の入ったプレイヤー以外は鐘の音を聞いても二度寝を決め込んだりするため、全てのプレイヤーが一斉に動き出すというわけではない。


 今日のハルトはその二度寝を決め込むプレイヤーの一人であり、彼がいつも使っている宿屋のベッドから動き出したのは鐘の音が響き渡ってから二時間後の午前九時だった。だがそれは自発的なものではなく仕方なくといったものだ。


 「……はぁ。誰だよ、こんな朝っぱらからメールって」


 そう言ってハルトは眠い目をこすりながらメニューを開く。昨日いろいろとあったせいかその動作は重々しく、まだ疲れが残っているようだ。だが、その様子はメールの送り主を見た瞬間に驚きと疑問に変わった。


 「昨日送ったものがもう帰ってくるのかよ……。攻略ギルドの行動力は相変わらずだな。あと、もう一通は……え? 検証ギルド? どういうことだ?」


 ハルトはもう一度目をこすり直しメニューを見つめるが、見間違いではなくその表情が変わることは無かった。


 なぜなら、二通目のメールの送り主である検証ギルドは、基本的に新しく発見されたエリアに目を向けることが無いからだ。いや、目を向けないことは無いが目を向けるタイミングはある程度時間が経ってからとなる。つまり、検証ギルドは攻略ギルドが新しいエリアの攻略安定ルートを確立した後にそのエリアへと赴くこととなるためだ。そのため、ハルトが昨日送ったメール内容であれば昨日の今日で返事が来るはずがないのである。それ以前の問題として、ハルトは検証ギルドにメールを送っていないし、検証ギルドがハルト個人にメールを送る理由も無い。


 ハルトは意味が分からないといった様子を見せるが、とりあえず昨日メールを送った攻略ギルドからのメールを見るためそちらのほうから開封した。すると、そこには短くこう書いてあった。


『お問い合わせありがとうございます。攻略ギルドでございます。


今回連絡がありました通り、崖の洞窟内部で調査いたしましたところ未発見の足場とレバーを確認しました。しかし、パーティー全員でそのレバーを引いて見たところ全く動かすことができませんでした。念のため複数のパーティーに確認させましたが、いずれも同じ結果となり通路への道を開くに至りませんでした。そのため、攻略ギルドではこの件を保留とし情報を持つ可能性のある検証ギルドへと委託することになりました。何かある際は検証ギルドから連絡がありますので以降そちらの指示に従ってください。


お寄せいただいた情報を役立てることができなかったことをお詫び申し上げます。


今後とも攻略ギルドをよろしくお願い申し上げます。』


 それは要するに、現状何もできないからとりあえず検証ギルドに丸投げした。そういう内容だった。


 「連絡が早かったのはこういう理由からかよ……。なんかこう、もうちょっと粘ってくれよ。確かに、最近は攻略スピードが上がって人手不足なのは分かるけどさぁ、これは無いだろ」


 ハルトは誰もいない部屋のベッドの上でため息を付きながらそうつぶやいた。


 そう考えると次に控えている検証ギルドからのメールの内容も読めてしまう。おそらく、攻略ギルドから委託されました云々が書いてあるのだろう。


 あまり期待していない様子でハルトはそのメールを閉じ、検証ギルドからのメールを開いたのだった。


『検証ギルドです。


攻略ギルドから頂いた情報をこちらで精査した結果、調査の必要性有りと判断し、更に詳しい情報を提供していただけると幸いです。加えてお手数をおかけいたしますが都合がつくときで構いませんのでパーティーの皆さんと面談したいとも考えております。時間が決まりましたらご連絡ください。』


 内容としては委託されたという業務的なものであったが、攻略ギルドとは対照的にこちらはかなり意欲的かつ興味を示しているようで、パーティー全員と話したいと書いてある。


 「検証ギルドか……。利用してはいるけど、それ以外にどんなことしてるかはあんまり考えた事無いな。でも、なんでまたパーティー全員? しかもメールだけじゃなくて直接会うってのがなんか腑に落ちないな」


 メールを読んだハルトは天井を見上げながら一人つぶやいた。しかし、考えても何も思いつかなかったのか、おもむろにメールフォームを開くと、キーンとナオ充てにこれらの内容と都合の付く時間帯を尋ねる文章を書き始めたのだった。




 「ちょーさん、検証ギルドってゲームの仕様を検証する以外に何かやってることって知ってますか?」


 ハルトは「お食事処ちょーさん」で遅めの朝食をとっている。普段は別の場所で朝食をとるのだが今回は昨日も利用したこの場所を使っているのには少し訳があった。


 「ん~? さぁ、俺も詳しくは知らないな。どうしたんだよ急に」


 ちょーさんは普段に無い雰囲気のハルトに対し質問を投げかける。


 「えっと、いつも使ってる割には今まで気にしたこと無かったなと思って、ちょっと調べてるんですよ」


 「ほう、そうか。まぁ、俺は検証ギルドが他に何をやってるかは教えられないが、どうやってできたかは知ってるぜ。聞きたいか?」


 「聞きたいです! 教えてください!」


 「よし、ならいつも俺の店を利用してるハルトには特別サービスしてタダで教えてやろう」


 「え!? 本当ですか! これからも利用します!」


 思いがけないことにハルトは目を丸くする。


 「もちろんだ。そうだな、聞いた話だと、検証ギルドは別の方法で無事にログアウトできる方法を探している集団って事だな。攻略ギルドと明確に違うのはそこだ。攻略が進んである程度経った時期に攻略ギルドから分派したってのはお前も知ってると思うが、実はそこにちょっとした理由があってな……」


 ちょーさんはそこで少し区切ると、ふとハルトのほうへと目を向ける。そこには早く続きを知りたいとばかりに食いついているハルトの顔があった。


 ここに来る前、ハルト自身も検証ギルドのホームページを調べたのだが、回りくどく書いてあるうえに内容も多岐に渡っており、短い時間で全体の把握をすることができていなかった。そのため、彼自身こういった情報を聞けるのはかなりありがたかったのだ。もっとも、起きた時間が遅かったので情報を持っているであろう人と連絡が付かなかったから仕方なくここに来たというのもあるのだが、どうやら当たりを引けたようだ。


 「まぁ単純に仕事を減らすためってのが主な理由だ。前線の連中は妙に凝り性な奴が多くて、いちいち検証に時間掛けてたら攻略が進まないもんだから、下位の連中を集めてそれに充てさせようっていう、つまりは下請けをさせようって魂胆だった。でも、それのおかげで攻略は攻略、検証は検証と言う風に区別ができていったからある意味では成功したと言って良いだろう。そんなときに、エリアボスに関する重要な文献が当時の最前線で見つかったんだが、こいつが困ったことに攻略ギルドの連中には誰も解読できなかった。お前も聞いたことはあるだろう? アンゼスの祠事件を。だが、検証ギルドはその文献を自前の情報力で解読し、難攻不落といわれたそれをあっさりと解決した。そして、そこで初めて攻略ギルドから独立したって言うのが事の始まりだ。どうだ?」


 「へぇ、そんな経緯があったんだな」


 ハルトは止めていた箸を動かしながら更に続ける。


 「でも、なんでわざわざ独立なんかしたんですかね? 攻略ギルドとうまく提携したほうが情報の収集も早いだろうに」


 「別に提携してないわけじゃないぞ。お前も攻略ギルドを使ってるなら分かると思うが、エリアボス攻略なんかは検証ギルドのバックアップがあって成り立ってる。攻略ギルドに攻略法が載ってるから勘違いしやすいけどな」


 「あ、そっか。アンゼスの祠事件は検証のバックアップで上手くいったんでしたね。でも、ちょーさんよく知ってますね。見た目からはとても想像できないですよ」


 「うるせぇ! そんなこと言うなら俺も言うぞ。昨日の娘とはあれな関係なんだろ。あの後は上手くいったんだろう? な? 聞かせてくれよ」


 ちょーさんは仕返しとばかりに、満面の笑みを浮かべながらハルトに尋ねる。


 「ちょーさんもそれを聞くんですか! しかも、ミョルさんよりひどいじゃないですか! そういう関係じゃないですって!」


 ハルトはちょーさんの考えるスピードの速さに照れを隠し切れていないのかやや顔が赤い。


 「なんだよ、面白くない奴だな。まぁいい、なんか進展あったら知らせてくれ。呪ってやるからよ」


 「余計なお世話です! そして嬉しくねぇ! 字面が似てるからってごまかせませんよ!」


 そんなことを言っているとハルトの目線が突然右上に向いた。


 「ん? あぁ、さっき送ったメールが帰ってきたのか」


 「ラブレターか?」


 「違います。さっきキーンとナオに送ったんですよ。えっと……二人とも今日の午後から明日いっぱいくらいまでは空いてるのか。じゃあ、先方にさっさと伝えておくかな」


 そう言うと、ハルトは残っていたご飯を一気に食べ終え、再びメールフォームを立ち上げたのだった。


 メールを書き終えた後ハルトはメニューを開いたまま、ゲーム内掲示板を見ていた。その目線の先には「娯楽に関して」とある。


 「娯楽か。本当はこのゲームそのものが娯楽であるはずなんだけど、現状じゃ仕方ないか」


 その文字だけ見れば確かに本末転倒のような内容だが、それも仕方の無いことなのだ。なにせ、拠点には娯楽施設と言うものがない。そのため、買い物や装備を整え終えたプレイヤーは結構暇になる。一応プレイヤーが独自でイベントを主催したりすることもあるのだが、時間と労力が掛かるため大規模なものはなかなか行われない。


 そういうとき、こういったゲーム内掲示板は非常に盛り上がりを見せる。今日はもし対人戦があったらという内容で盛り上がりを見せていた。コロシアム的な要素から乱闘、決闘など言いたい放題である。


 「対人戦か……。ちょーさんは対人戦のゲームとかやったことありますか?」


 ハルトはプレイヤーの書き込みを見ながら厨房にいるはずのちょーさんに声をかける。


 「……VRではやったことないな。小さい頃に据え置き機でやった記憶はあるけどそれくらいだ。ハルトは経験あるのか?」


 「いや、俺も経験はないですけど、掲示板で賑わってたのでちょーさんはやったことあるかなと気になったんです」


 「掲示板の連中も暇してるんだな。俺はデスゲームのこの環境でそういったことはあまり考えたことないから無縁の話だ。俺は素材集めて料理作ってるほうが性にあってるよ」


 「いや、ちょーさんの見た目はぱっと見てアメリカの軍人さんですからね! 最前線プレイヤーって言われたら納得しちゃいますよ」


 ハルトは声を荒げて言う。色黒で坊主頭のサングラス掛けた人が料理を作っているというのは今でも驚きなのだろう。


 「また、見た目の話しやがって。いいんだよ、これはこれで味が出るだろうが。俺みたいに小さな店を持つ者としてはインパクトが大事なんだよ」


 「はいはい、分かりましたよ。それじゃ、今日はご馳走さんでした。また来ますね」


 そう言うとハルトは貨幣を数枚カウンターの上に置くとそのまま暖簾をくぐって外へと出て行く。後ろからはまいどありとちょーさんの声が聞こえてくる。


 「さてと、今日は何をするかな。このゲーム、攻略以外本当にやること無いからな」


 攻略がないと暇をもてあますというのは仕方の無いことだ。ちょーさんのように趣味全開なら問題はないのだが誰しもがそうとは限らない。


 ハルトがつぶやきながら拠点転移用の鏡に向かっていると再び目線が右上へと走った。


 「はぁ、またメールかい。今日は多いな。誰からだよ」


 朝からメール三昧でやや面倒臭さを感じさせる声を出しながらハルトはメールを見た。するとそこには「Re:検証ギルドより」の文字があった。


 「はぁ!? ちょっと待て! さっき送ったのにもう帰ってくるとか仕事早すぎるだろ! 今度は一体何なんだよ」


 あまりの速さにハルトは大通りであるということを忘れ、声を荒げてしまう。行き交う他のプレイヤーから冷たい視線を浴びるのもお構いなしにハルトはその場で読み始めた。


 『検証ギルドです。


 まことに勝手ながら面談の時間が決まりましたのでご報告いたします。十月四日の午後二時に検証ギルド本館までお越しください。なおパーティー全員が集まらない場合は翌日の同時刻とさせていただきます。』


 「十月四日って……いや、今日じゃん……。本当に勝手過ぎるだろ。でも、まぁ暇だからいいか」


 ハルトは人ごみの中でそうつぶやいたのだった。




 「うっす、ハルト。昨日はすまなかったな」


 午後になり、ハルトが約束の時間に間に合うよう検証ギルドへと向かっているとキーンは現れた。彼もハルトと同じように検証ギルドへと向かっている最中なのだろう。


 「うっす、おじさん。上手くいったから気にしなくて良いよ。まぁ、いきなりあんなこと言われたときは少し恨んだけどね」


 「そうか、上手くいったか。本当は俺もいるべきだと思ったんだが、彼女は年上に相当気を使うタイプだろ? 親みたいに年の離れた赤の他人がいるより、年が近いハルト一人のほうが気を使わせなくて済むだろうと俺なりに思ったんだ。でも、結果的に上手くいったのなら少なくともその判断は誤りじゃなかったんだな。本当お前に任せてよかったよ。ありがとな」


 「どういたしまして。でもまぁ、おじさんのことだからそんなことだろうとは思ってたけどね」


 二人は歩きながら昨日のことや今回の件について話し合っていた。その姿はまるで親子のようだった。


 二人が検証ギルド本館へ到着すると入り口の前にナオが立っていた。そして、二人に気が付くと小さく手を振った。現在の時刻は約束の五分前であるため、彼女はどうやらその前の時間に到着していたようだ。


 ハルトはすぐさまナオへと駆け寄った。


 「ごめんナオ、待たせちゃったかな?」


 「いえ、私も今来たところですから」


 待ち人の定型句を二人が言っている間にキーンが追いつく。そして、集まったことを確認した後に言った。


 「それじゃ、中に入るか」


 検証ギルドの中は二階へと渡るための階段が左右にあり、入り口の真正面には受付とその奥にスタッフオンリーと英語で書かれているプレートが掲げられている扉があった。しかし、受付には誰も座っていない。それどころか人の気配すら全く無く、非常に閑散としている。昼を過ぎたあたりであるため攻略に出張っているから人が少ないというのなら分かるが、誰もいないとなると少し不自然だ。


 「あれ、誰もいないのか?」


 キーンは入るなり言葉を漏らす。三人があたりを見渡していると二階のほうから扉が開く音が響いた。そして、人が出てきたかと思うとその人物はゆっくりと階段を下りてきてこう言った。


 「キーンさん、ハルトさん、ナオさんですね。お待ちしておりました。どうぞこちらへ」


 水色の髪の毛を七三分けにしているその男は手招きをしながら二階へと三人を誘導し、その人物が出てきた部屋に三人は入った。


 その部屋は真ん中にぽつんとテーブルと椅子があるだけでそれ以外の家具は一切置かれていない。しかし、ただの面談室と言うには妙に部屋が広く、それと相まって非常に寂しげである。


 三人はその人物から勧められるがまま席に着いた。そして、三人が席に着いたのを確認した後にその人物も三人の向かい側に座って話し出した。


 「本日はお忙しい中、急にこのような面談に出席していただいたことにお礼を申し上げます。私は検証ギルドのゼルオスと申します。以後お見知りおきを」


 「あ、はい。よろしくお願いします」


 丁寧な対応に三人は声を合わせて挨拶を交わす。


 「それでは、早速で申し訳ありませんが昨日皆さんが発見した新しいエリアについて詳しく聞かせていただけますか……というのは建前で実はあなたがたにいくつかお伺いしたいことがあるのです」


 「建前、ですか。すいませんが、一体どういう意味でしょうか。私はてっきり攻略ギルドの代わりに検証ギルドが調査に乗り出してくれるものだとばかり思っていたのですが」


 ゼルオスの建前という言葉にキーンは反応する。


 「いえ、皆さんが発見したエリアについてももちろん話します。ただ、少々ややこしいことになるかもしれないので、詳しいことは後ほど詳しく話そうと考えているのです。それでは早速ですが、いくつか質問をしてもよろしいですか」


 ゼルオスは少し困ったような表情を見せながら三人に質問を投げかけた。


 キーンは胡散臭そうな目でゼルオスを見つめている。怪しくて仕方がないといった様子だ。


 「質問、ですか。どうぞ」


 ハルトはそう言った後キーンのブーツを左足でコツンと蹴った。キーンはハルトに敵視しているのがばれたせいかすぐさま表情を変え、どうぞといった。そして、それに釣られるようにナオも頷いた。


 その様子を見てゼルオスは言った。


 「では、まず『フラムの園庭』というエリアを攻略したことはありますか。この中で誰か一人でもたどり着いている場合でも構いません」


 「フラムの……園庭? 確かそれって最前線から二つか三つ前のエリアですよね。えっと、パーティーではまだ転移水晶にまでたどり着いてないんですけど」


 ハルトはそう答えた。キーンとナオも同調するように頷く。


 ゼルオスは三人の反応を見終わると更に質問を投げかけた。


 「分かりました。では次に、主に使用している武器を見せてもらえませんか。できればインベントリから取り出して直接見せてください」


 「武器、ですか。少し待ってください」


 キーンはそう言うと突然立ち上がりメニューを開く。そして、使用している大剣を机の横に出した。


 「これでいいですか。私の武器は特大武器なので結構大きくて邪魔ですが」


 身の丈ほどある大剣が現れると、先ほどから変化を見せないゼルオスの表情はそれを見ても全く変わらなかった。そして、キーンが出したのを機にハルトとナオの二人もそれぞれ武器を取り出した。


 「いえ、大丈夫です。それにしても皆さん特大武器ですか……。わかりました。ありがとうございます。本当はもう少し質問をする予定だったのですが、その必要はなくなりました。ご協力感謝します。では、本題に入りましょう」


 ゼルオスは続けた。


 「今回皆さんが発見したエリアについてですが、それはおそらく特殊エリアと呼ばれるものでしょう。特殊エリアはその名の通り一定の条件を満たしたプレイヤーしか入ることができないエリアで、相当偏ったプレイングをしていないと入れないことがほとんどと言われています。皆さんもどうやらそれに当てはまっているようなので、今回そのエリアに出くわしたのでしょうね。しかし、攻略ギルドが投げ出すほど筋力を上げているとなると話が違ってきます。おそらくですが……、そのエリアを攻略できるのはゲーム内で皆さんだけになるかと」


 三人の表情が驚きに変わった。脳筋と自負はしていたが、まさかそこまでのものとは思っていなかったのだろう。


 「この情報は情報が少なく仕様もよく分かっていないためまだ公開していないものですが、今回の件からほぼ確定したといってもいいでしょう」


 ハルトはゼルオスにいった。


 「つまり、武器みたいにエリアにも攻略するために要求されるステータスが存在するということなのですね」


 「そういうことです」


 このゲームにおいて武器や盾、杖などを扱うにはその装備が要求している必要ステータスを満たさなければ扱うことができないという仕様がある。ただ装備するだけならその要求値を満たす必要は無く、誰でも自由に装備することができる。だが、それを満たしていないと性能に大きな差が出てくるのだ。例えば、弓が要求している器量の要求値に満たないプレイヤーが弓を扱うと、矢の軌道が大きくぶれてしまったり、逆に器量はあっても筋力がないと矢の威力が下がってしまうなどといった具合だ。要するに要求されたステータスを満たしていないとペナルティが課されるのである。魔術にいたっては発動すらしないため場合によっては戦略に大きな支障が出る。そのため、攻略の際は要求値を満たしている武器を使わないとまともに攻略ができないのだ。ゼルオス曰く、どうやら今回はそれのエリアバージョンということになるらしい。


 更にゼルオスは続けた。


 「そのシステムが採用されているエリアはおそらく未発見がほとんどでしょう。そして、それらを発見したとしても発見したパーティー以外はほとんど攻略することができません。つまり、そこを攻略するパーティーが限定されるということになります」


 ゼルオスはそういい終わると三人を見つめた。


 「つまり、検証ギルドは私達にそこを攻略して欲しいということですか」


 キーンはそういった。ゼルオスからの目配りがあったからか心なしか語尾が強くなっているようだった。


 「結果的にはそうなります。しかし、私達検証ギルドの考えはただ攻略して欲しいというわけではありません。それでは攻略ギルドとなんら変わらないことになってしまいます。ご存知かもしれませんが、検証ギルドは攻略ギルドとは別の手段でログアウトの方法を探っている者たちの集まり。攻略ギルドとは異なる視点でゲームを見ています。そして、今回皆さんにお願いしたいことはそこへ行ってログアウトへ至るための方法を調査してほしいということです」


 「ログアウト!? ……どういうことでしょうか」


 キーンは間髪をいれずに反応していた。それはまるで机に身を乗り出すかのようだった。


 「はい。今回皆さんが発見したエリア『古代遺跡内部』には情報によると、特殊なNPCが存在し、重要な情報を持っているということをこちらで確認しております。確か皆さんは新しいNPCに会われたということでしたので、おそらくそれに関係するかと思います」


 ナオはなるほどといった顔で頷いている。しかし、そこでハルトが口を挟んだ。


 「あの、なぜ検証ギルドは攻略ギルドのようなことをしているんですか。パーティーが限られるというのは分かりますが、そういうときこそ攻略ギルドと上手く連携するのが自然だと思うんです。あなたの言い方だと、どうも検証ギルドだけで物事を片付けようとしているようにしか見えないんですが」


 「いい質問です。確かにあなたの言うとおり、普通は攻略ギルドと連携するのが妥当な手段でしょう。しかし、攻略ギルドは根本に『現在攻略できるところしか攻略しない』という基本原則があります。彼らはこのゲームで一番大きいギルドでありますが、それゆえにそういった小回りは効きにくく、細かいところまで手が届かないのです。それはつまり、一部の人しか攻略できない場所は後回しになるということになります。「特殊エリアなどといった偏ったプレイングを要求するエリアにかける手間はない」と彼らは言っていました。この件はまさにそうなったために検証ギルドに回されてきたのです。加えて、この件は攻略ギルドと連携したくない事情もあります。それは、ログアウトの件と含めて一緒にお話しましょう」


 「攻略ギルドと連携したくない理由にログアウトの件が関係しているってことですか」


 キーンがそう尋ねる。


 「厳密には違いますが、概ねその通りです。発端はつい二週間程前に『フラムの園庭』で新しい誓約が発見されたというところから始まります。発見者の報告によるとその誓約内容は倒した者の力を奪うという今までの誓約には見られない特徴があるとのことで、攻略ギルドと検証ギルドもこの報告を受けすぐにその内容を調べようと連携をとり始めました。ですが、調査を始めた翌日に誓約を結んでくれるはずのNPCが忽然と姿を消してまったのです。調査対象がいなくなってしまったため攻略ギルドは早々に撤退し、我々もそうせざるを得ませんでした。なにせ、NPCと接触したプレイヤーから事情を聞きだした後の調査は暗礁に乗り上げてしまい、ほかのイベントの接点もほとんど皆無という状況でしたからね。それと同時に最前線の動きが活発化し攻略速度が上がったことで私達のギルドも忙しくなり、その誓約の調査は後日再開ということになったのです。ですが、二三日経った後に、最前線のプレイヤーが新しく発見したNPCからその誓約に関する重要な証言を入手しました。こちらをご覧ください」


 ゼルオスはメニューを操作すると三人の前にウインドウが現れ、動画が流れ始めた。


 内容はこうだった。プレイヤーがNPCと思われる老人のゴーストに話しかけるとそのNPCはこういった。


 『わしは血の使徒に殺された。力を奪われたのだ。奴らは殺した者から力を奪う術を持っているがゆえに並大抵の者では太刀打ちができないのだ。わしはあるお方のおかげで霊体として生きながらえてはいるが、もはや以前の力は残っておらず記憶も断片的でしかない。しかし、それでも奴らの企みだけは何とか覚えている。奴らは人形を集め、従者を増やし、力を蓄え、力届かぬ場所へ踏み入ろうとしているのだ。その場所がどこかは分からぬ。そして、この荒廃した世界ではその企みを阻止できることも叶わぬ。せめて、この世の礎となったあのお方がおわします古代遺跡に光が差せばよいのだが、それがもはやどこにあるのかさえ分からない。思い出せないし、誰にも分からないのだ』


 プレイヤーはそのほかにも質問をした。しかし、そのNPCは分からないの一点張りであり、それ以上聞く事はできなかった。そして、そこで動画は終わった。


 「相変わらずNPCが言っている意味は分からないですが、古代遺跡がキーワードなのは良く分かりました」


 ハルトは言葉をかみしめるように言った。すると、それに被せるようにナオも口を開いた。


 「あの、誓約と古代遺跡とログアウトはどのように関係してくるんでしょうか? あまりにも断片的過ぎてよく分からないというか。それに私、誓約を結んだことが無くて……。その、詳しく教えてもらえませんか」


 「えっ! ナオ、誓約結んで無かったの」


 ハルトは驚きのあまりか話し合いの途中にも拘らず声を上げてしまった。しかも、ハルトのみならずキーンもゼルオスも同様に驚きの表情だった。


 突然の周りの変わりようにナオは理解が追いついていないようで疑問の表情を浮かべているが、何か変なことを言ったと思ったのか顔を赤らめている。


 「そう、ですか。では、誓約の説明も踏まえてお話させていただきます。誓約はプレイヤーがNPCに対して結ぶことができるもので、プレイヤーはNPCが要求する内容を達成すると報酬としてさまざまな特典が得られます。例えば、私が結んでいる誓約『賢者の守り』は魔術で倒した敵から稀にドロップするアイテムを捧げることで防御力のボーナスを得られます。また、誓約はこちらから一方的に破棄することができるため、別の誓約のボーナスを受けたい場合は簡単に変更が可能です」


 「変更、できるんですね……。できないものとばかり思ってました」


 ナオはまるでもったいないことをしたような顔をして目線が下に向けた。その顔はさらに赤らんでいた。


 「誓約は特殊なものを除けば敷居は低いので、お二方と同じ誓約を結んでみるのがよいでしょう。それでは、今のことを踏まえた上で説明させていただきます。単刀直入に申しますと、今回発見された誓約『血の使徒』はプレイヤーキルをすることができる誓約です。もともとは対人用のシステムなのでしょうが――」


 「プレイヤーキル!? なぜ、そのような重要なことを公表しないのですか。人の命が懸かっているかもしれないのですよ」


 キーンは机を叩きゼルオスの説明をさえぎり言い放った。怒気を含んだその声は静かだった室内に響き渡り、四人の間に一瞬の間を生んだ。


 しかし、ゼルオスはそう言われることが分かっていたかのように冷静に返した。


 「はい。しかし、公表をしたとしても、犯行方法を特定し対抗策を練らない限りどうすることもできません。このゲームでは、プレイヤー同士が傷つけあうことができないということはすでに広く知れ渡っています。そこへいたずらに公表してしまってはプレイヤー間で新たな火種が生まれてしまう可能性がある上に、犯人の尻尾を掴みにくくなってしまうでしょう。そして、仮に犯人が分かったとしても警察といった機構が存在しないこのゲーム内でどうやって罰則を与えるのかということにもなります。そのため、決定的な打開策が発見されない限り見送るというのが現在の最も有効な手段となります」


 「確かにそうだが……」


  キーンはそういった後唇を噛み締め下に視線を向けた。ゼルオスの言うことはもっともだ。


 デスゲームとはいえ本当に人が死ぬかわからないという意識はプレイヤーに多くの影響を与えた。それを真剣に考える者から楽観的に捉える者まで多種多様であり、それらは犯罪に手を染める形もある。もちろん、表立ったものはシステム的にできないようになっており、セクハラや窃盗といった行為は基本的にできない。しかし、システムの穴などを巧妙についたものはその限りではなく今回のプレイヤーキルもそれにあたる。そういった中で罪に対する罰を考えると、とてもプレイヤーの手に負えるものではなくない。うかつに手を出すと収拾がつけられなくなるからだ。


 「そして、攻略ギルドと連携を組まない理由もここにあります。それは、プレイヤーキルの件は攻略ギルドが一枚噛んでいる可能性があることです」


 「攻略ギルドが!? そんな馬鹿な!」


 ハルトが大声を上げた。キーンもナオもありえないといった様子でゼルオスを見つめている。このゲーム最大のギルドが殺人まがいのことに手を出しているかもしれないということに驚きを隠せないのだろう。


 「でも、どうして攻略ギルドが関与している可能性があると言えるのですか。もし攻略ギルドがプレイヤーキルに関与しているなら、自らが攻略を妨げていることになると思うのですが」


 ナオはゼルオスに質問をぶつける。ナオとしては攻略ギルドが自分で自分の首を絞めていることに疑問を感じたのだろう。ゼルオスもナオの言いたいことを理解したようで返事をした。


 「確かに攻略ギルドからプレイヤーキルが出るのは不思議なことです。しかし、状況的に攻略ギルドしか考えられないのです。当時その誓約のことに関して情報を共有していたのは攻略ギルドと検証ギルドの二つでしたが、検証ギルドで調査に行ったのは私のパーティーの三人のみだったのです。それに二週間前とはいえ、かなり前線。すぐに情報が拡散したとしても一日で多くの人がたどり着けるような場所ではありません。このことから攻略ギルドには疑いが掛かり、検証ギルドは攻略ギルドと連携が取れなくなったのです」


 「前線を攻略できるほどの実力者。……確かに攻略ギルドの可能性は高いですね」


 ハルトは頷きながら言葉を漏らした。


 「そういうことです。つまり、攻略ギルドには犯人、もしくは犯人に手引きしている者がいる可能性があります。そのため、私達検証ギルドは攻略ギルドと連携することをできる限り避けたいのです。そして、私達もプレイヤーの安全なログアウトを妨げようとする犯人をこのまま見過ごすわけには行きません。また、先ほどのNPCが言っていた『世界の礎となったあのお方』という言葉はログアウトにつながるヒントと私達は考えています。そのため、今回私達検証ギルドが皆さんに協力を要請する内容は『安全なログアウトを妨げているプレイヤーが結んでいる誓約の内容を明らかにし、その対抗策を練るために特殊エリアである古代遺跡内部の攻略及び調査に挑戦して欲しい』となります。皆さんがこの依頼を受けてくださるならば、私達検証ギルドは全力でバックアップし、皆さんの帰還率を高めることを約束します。以上です、何か質問はございますか」


 キーンが左手を上げる。ゼルオスはどうぞといった。


 「情報の正確性はどの程度ですか。今回のエリアに限らず新しいエリア攻略は危険が伴います。どれだけ高尚なことを並べられても年長者として二人を守るためには信頼できるものでなければ、動くことはできません」


 「分かりました。では、これをご覧ください」


 ゼルオスはメニューを操作し、ホログラムを三人の前に表示した。そこには棒グラフが伸びており、縦は人数、横は日付が記されてあった。日付を見ると九月三日からスタートしてあり最近一ヶ月のものであることが見て取れる。


 「教会の東墓地の岩に死亡者が刻まれていることはご存知だと思いますが、実はそれ以外にも死亡者の死亡時期と死亡原因も知ることができます。このグラフは過去一ヶ月に死亡したプレイヤーの数を日付別にまとめたものです。今からちょうど二週間辺りを見て見ると死亡したプレイヤーが急激に伸びている日が今日まで連続しているのが分かるかと思います。次にこれをご覧ください」


 ゼルオスは更にウインドウを表示した。


 「これはプレイヤーの死亡原因を一週間ごとにまとめたグラフです。二週間前以降の死亡原因の多くは斬撃、打撃、魔術が同水準で次いで落下死が多いですが、二週間前を境に残撃での死亡原因が突出しております。過去のデータを遡ってもこれだけ突出している例はありませんでした。また、死亡者層を見て見るとこれもおかしなことが分かります。攻略の速度は以前と比べ上がりましたが、かといって前線付近での死亡者が多かったのではなく、むしろ中間層での死亡者が多かったのです。すでに攻略されているエリアなら危険な場所があらかじめ分かっているためこうなることは考えにくい。そして、それらは全て二週間前を境に発生しています。偶然と片付けるには無理があるでしょう」


 ゼルオスの示すものには説得力があった。そして、なによりもその情報量に三人は驚きを表していた。


 「検証ギルドは、全てこれを自力で揃えたのですか」


 ハルトは驚いた様子で尋ねる。それもそのはず、ハルトは検証ギルドが攻略ギルドから分派したことを先ほどちょーさんから詳しく聞いたばかりだからだ。まさか、ここまでやる集団だとは思っていなかったのだろう。


 「そうですね。これ以外にも交通調査や人民区開拓などを行っております。攻略ギルドと比べればほとんどぱっとしない雑務のようなものばかりですが」


 「……検証ギルドの考えは良く分かりました。少し、二人と話し合って良いでしょうか」


 キーンはそういった。ハルトとナオもそれに頷いている。


 「でしたら、この部屋をお使いください。私は外で待っています。終わりましたら声を掛けてください」


 ゼルオスはそう言うと、すっと立ち上がって部屋の外へと出て行った。


 「……参ったな、こりゃ」


 キーンはそうつぶやく。ハルトも同調するようにいった。


 「新しいエリアに行けるのは俺たちだけで、そこには多くの情報が隠されているかもしれない、か。さっきの情報から検証ギルドが嘘をついてるとは考えにくいし。どうしたら良いんだろうか」


 「本当にどうしたらいいんでしょうか……」


 すると、キーンは頭をかきながらいった。


 「とりあえず、状況を整理するぞ。俺たちが昨日発見したエリアは俺たちしか攻略することができないもので、そこではプレイヤーキルとそれに関する情報を得られる可能性が高い。だが、プレイヤーキルに関する情報は対抗策が見つかるまで伏せていたほうがよく、かつ攻略ギルドとの連携は期待できない。だから、唯一攻略可能である俺たちに攻略と調査を依頼して解決したい、こんなところか。ひとまず率直に聞こう。お前らはこの件を受けたいか、受けたくないか」


 少しの沈黙の後ハルトはいった。


 「俺は、受けてもいいと思ってる。嘘みたいな話だけど本当にプレイヤーキルっていうのがあるなら、俺はそれが許せないって思った。さっきの情報から犯人は自分より弱いプレイヤーを狙っている。俺は、自分の利益のためだけに弱い人を食い物にするのを見過ごすことはできない」


 キーンはハルトの顔を一瞬見つめた後にそっと頷いた。そして、ナオに振り向きどうだと返事を促した。


 「私は……よく、分からないです。でも、ハルト君が言うように弱い人を食い物にするのは良くないと思います。このゲームから早く安全に抜け出して、帰りたい人を恐怖させるのはダメだと思いました。すいません、こんなことしか言えなくて」


 ナオはしゅんとなりながら話した。キーンはそれに返した。


 「いや、それでいいんだナオ。よく言ってくれた。ぶっちゃけると俺はこの依頼を受けたくないと考えていた。さっきも言ったが俺はこの中じゃ年長者だ。お前達を守る義務がある。だから、わざわざ危険が掛かる情報すら何一つない完全に新しいエリアの攻略はしたくなかった。だが、俺はあの人が言っていたログアウトのことがずっと気がかりだった。もしかすると、この依頼をこなすことでリアルに戻るヒントが得られるかもしれない、上手くいけば早く帰れるかもしれないと思ったんだ。そうしたら、迷っちまったんだよ。話を聞いている間ずっと悩んでしまった。実際はプレイヤーキルのせいで安全なログアウトが妨げられているかもしれないってことだったが、それでも大きな問題であることに変わりはない。本当は年長者である俺がずばっと決めてしまうのが一番なんだが、俺の中でそれがどうしてもできなくてな、お前らに頼る形になってしまってすまないと思っている。でも、お前らのおかげで踏ん切りがついた。お前らの正義感は正しい。間違っていない。だから、その正義感に俺は従おう」


 「つまり、おじさんはこの依頼を受けるんだね。分かった」


 「ナオもそれでいいか?」


 キーンはナオに尋ねた。ナオはまだ考え込んでいるようだったがやがて頷き、分かりました、やりましょうといった。それを聞くとキーンは首をゆっくりと縦に振った後、ゼルオスを呼びにいった。


 ゼルオスは席に戻るといった。


 「話は決まりましたか」


 キーンがその問いに答える。


 「はい、私達は今回の依頼を受けます。よろしくお願いします」


 「ありがとうございます。では、依頼を受けてくださった皆さんには私達検証ギルドから最大級のバックアップをさせていただきます。まずは私のフレンドコードを皆さんにお送りします。どうぞご活用ください」


 ゼルオスはそう言うとメニューを操作して三人にフレンドコードを送った。三人にフレンドコードが行き渡ると同時にハルトの目が丸くなった。


 「ギルドマスター!? ゼルオスさん、ギルドマスターなんですか!?」


 「ええ。攻略ギルドのギルドマスターの認知度ほど有名ではありませんが、一応ギルドマスターをやっています。確かに最初の自己紹介の時には言っていませんでした。申し訳ありません」


 「ハルト、急にどうしたんだ」


 キーンが不思議そうに尋ねる。


 「いや、なんでもないよ。ただ、ちょっと驚いただけ」


 キーンはそうかといい正面を向き直った。そして、ゼルオスは行き渡ったのを確認するといった。


 「では、後ほどこの件に携わっているメンバーを載せておきます。それと、今回の件は極力他言無用で漏らすことのないようよろしくお願いします。最後になりますが、皆さんの部隊名をお教えします」


 「部隊名? なんですかそれは」


 ハルトは不思議な顔をして尋ねる。


 「実は特殊エリアを攻略しているパーティーはすでに検証ギルドに一つあり、皆さんはそこと同じ役割を担うことになります。それと区別する必要があるのです」


 「へぇ、私達と同じような人たちが……。知ってる人が思いつかないな」


 ハルトは興味を示した。キーンとナオの二人もハルトと同じような様子だ。脳筋である彼らと同じような人たちと言うのが気になるのだろう。


 「そうですね、簡単に言うとあなた方と対極をなすといった感じです。しかし、彼らも皆さんと同じように重要な役割を担っている上に彼らのプライバシーにも関わるため、これ以上詳しくは教えられません」


 「そりゃ、そうですよね」


 三人の表情は少ししぼんでしまったが、相手のプライバシーに関わるのであるならばしかたないだろう。


 「では、皆さんにはこれから『特殊攻略第二部隊』として活躍を期待しています。話は変わりますが、皆さんはどうしてあの場所を攻略していたのですか。『崖の洞窟』にめぼしいものがあった記憶はないのですが」


 その問いにはキーンが答えた。


 「あぁ、それは通常攻略と指輪を取りにいってたんですよ……あっ」


 キーンが何かに気が付くとハルトとナオの顔も思い出したかのようにはっとなった。


 「……指輪、忘れてた」


 「また、あそこを攻略しなおさないといけませんね……」




 この面談が終わった後、三人は再び「崖の洞窟」を攻略したのだった。


脳筋するのは次回からになります。

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