04・安心と日常
日常パートとまたまた多めの設定です。登場人物が増えます。
転移水晶が配置されてあった小部屋は倉庫だった。八畳ほどの石畳の部屋で机や椅子、木箱、燭台などがあり、一番奥の壁にある小さなくぼみに転移水晶がはめられている。転移水晶以外は遺跡内部同様に朽ち果てているものがほとんどで、とても使えるような状態ではない。だが、疲労しているプレイヤーにとってはこんな場所でもありがたい。転移水晶が設置されている場所は敵を引き連れて入らない限り安全なので、こんな小さい寂れた倉庫みたいな場所であってもプレイヤーにとってはようやく安心できる場所なのだ。
部屋に入り、緊張の糸が切れたのか彼らに疲労の表情がどっと現れる。ハルトは顔を上に向け腰に両手を当てながらふぅと深いため息をつき、キーンは左手の大盾をしまい近くにあった壁にもたれかかる。ナオはぺたんと女の子座りで腰を下ろし、手にしたハンマーの頭の部分をじっと見つめ、何か抑えるような様子をしている。
だが、一番大袈裟に疲れた態度をとっていたのは黒いローブを着た女性NPCだった。彼女は部屋に入って数歩歩いたところで倒れるように地面に突っ伏し「はぁ〜疲れた〜」と仕事終わりのサラリーマンのような台詞を吐いたのだ。
最初に発見したときから変なNPCだと思っていた三人もこれには流石に驚き、好奇の視線を向けずにはいられなかった。
拠点やエリアにたたずんでいるNPCは基本的に関わったイベント関係の台詞を話すのがほとんどである。もちろん、プレイヤーが問いかけたことに対してはしっかりと対応して話すため、台詞が完全に固定されているというわけではない。そのため会話自体はスムーズだ。しかし、NPC自ら話しかけるといったことは行わず、じっと見つめたりしても何も返答しないため人間らしさは見られないのがほとんどだ。
「なぁハルト、いつものNPCってこんな自由に喋ったりしたか。こんなの初めて見るんだが。今まで通りに接していいんだよな?」
明らかに態度がおかしいNPCに戸惑いを隠せないキーンがハルトに近づき耳打ちするように小さな声で尋ねた。こういったことに何かと詳しいハルトなら何か知っていると思ったのだろう。
「いや、流石に俺も初めて……ん? ちょっと待って、もしかしてアクティブNPCかも。確か攻略ギルドの記事で人間のような振る舞いをするNPCがいるってのがあったような。いや、でも発見したプレイヤー以外見つけられなかったらしいから、あんまり話題にならなくて……それ、なのかな?」
だが、ハルトの情報もあまり芳しいものではなかった。それらしいことは知っているようだが、かなり曖昧でハルト自身も確証が持てないようだ。
キーンはナオにも同じ事を尋ねるがやはり同じように初めて見るようで何も知らないという。そして、そのまま三人は突っ伏している女性をどうすればよいのかと話し始めるのだった。
傍から見れば突っ伏している女性を横に三人が座談会を開いているようにしか見えないずいぶんと奇妙な光景が繰り広げられている。だが、三人が話し始めて少し経つと突然、女性NPCはっとしたようにがばっと立ち上がり三人に向き直って頭を下げ、
「助けてくれてありがとうございます! なんかいつの間にかこんなところに飛ばされて、周りは大量のゾンビだらけだし、道に迷うし広い部屋に入ったと思ったら上からゾンビが降ってくるし、襲い掛かられたときは本当に死ぬかと思いました。私、ゾンビすっごく嫌いで見ているのも嫌なんで、本当に助かりました! もうなんて言っていいのやら……って痛い! 腕がっ! 噛まれた腕が痛い!」
と急にまくし立てるように話し出したと思ったら噛まれた腕を押さえうめき始めた。あまりに自由すぎる行動に三人は口を開け唖然とするが、わめいている彼女を放っては置けず、ハルトが前に出て杖を取り出し掲げ、しゃがみ、祈りの姿勢をとる。フレンドヒールのモーションだ。先程はし損ねてしまったが今回は安全地帯にいるのでしっかりと発動し、白樺の杖の先端から青色の波紋が広がった。そして、波紋が広がった範囲にいる三人をその青い波紋が包み込むようにして輝き、体力を回復する。苦悶の表情を浮かべていた女性の顔は波紋に包まれると同時におさまり、きょとんとした様子を見せる。そして、ハルトが持っている杖を見て傷を癒してもらったと知ると再び頭を下げ始め、またもや、ありがとうございますとお礼を言う。
そして、ある程度収まりが付いたところでキーンは頃合を見計らったかのように話を切り出す。
「あー、すまんがひとまず自己紹介と行かないか? お礼の気持ちは嬉しいが、別に急いでるわけでもないから、な?」
そういうと女性NPCは「あ、そうですよね」とキーンの言うことに納得しそのまま被っていたフードを下ろす。そして、ふぁさっとローブの下にしまっていた髪の毛をさらけ出した。
女性NPCの髪の毛は銀髪に輝いており、そんなに明るくないこの部屋でもその輝きがよく分かる。目元はすらっとしてやや鋭さがあり、鼻や口元にもその印象が見られ端正な顔立ちをしている。ぱっと見るのであれば若く美人なのだが、先ほどの言動がそう捉えさせてくれない。
「私はマカドスのニーラ・ルッツミードといいます。ニーラと呼んで下さい。今回は助けてくれてありがとうございます。えっと、私、師匠以外の人とあんまり話したことなくて敬語とか不安なんですけど大丈夫ですか?」
「えっと、気にしなくていいんじゃないか。俺も気にしない性分だし。あぁ、名前はキーンだ。よろしくな」
「えっと、俺はハルト……です。よろしくお願いします」
キーンはすらすらと話す。しかし、NPCとしての認識を隠し切れないせいかハルトもキーンもやや距離感に困っているようで、よそよそしさを隠しきれていない。だがニーラもそれに気づいたのかすぐに付け足すように言った。
「あっでしたら、お互いに敬語は不用ってことにしませんか? キーンさんの言ったとおり私敬語苦手なんですよね。使えるようにはされたんですけど使う機会があんまりなくって」
それを聞いてハルトは更に対応に困ったような表情を見せるものの、すぐにその思いを振り切るように首を振り話し出す。
「じゃあ、それで。俺はハルト。よろしく」
それに続いてナオも切り出す。
「私はナオって言いま……ナオ。よ……よろしくね」
年が近いはずのハルトにまで敬語を使っているナオからすると、一見年上に見えるニーラに敬語を使わずに話すのは少しおぼつかないようである。
「そんな無理しなくていいよ。慣れないうちは敬語のままで。私もそういうのは全く気にしないから。じゃあ、よろしくね皆さん」
そうやってナオへ向けてにこやかに笑いながらニーラは手を振る。それを見たナオはニーラの顔を見ながら軽く会釈をする。
「うん、まぁよろしくな。なら落ち着いたところで話を進めるか。とりあえず、あんたは何であんな場所にいたんだ。今までの道からすると、どこからか侵入できるような所じゃないぞ」
ニーラの変わりようにキーンはもうすでに慣れたようで早速話を進めようとする。というよりキーンはNPCとして見ておらず普通に人と話しているかのようだ。
「うーん。それは私も知りたいよ。さっきも言ったけど、私ここがどこだかわかんないよ。どうやって来たのかって言われると……、確か師匠の部屋を整理してた時に何かの破片? 欠片? みたいなのを見つけて、それを別の場所に移動させようとして触れたらなんかいつの間にかここにいたの」
曖昧すぎる説明に困惑した雰囲気がさらに強くなった。
「はぁ。なぁハルト、このゲームの連中はどうしてこうも飛ばされる系が多いんだ?」
「いや、俺に聞かれてもな」
まるで信用していない顔をする二人を見てニーラはすぐさま反論した。
「その顔は信じてないでしょ! 本当なんだって! そうじゃなきゃ丸腰であんな場所でゾンビに囲まれたりしないってば。ねぇ信じてよ〜」
ニーラとしては真実を語っているようで自分が何も持っていないことを示すように体中をパンパンと両手で叩いた。上から下まですっぷり覆うような黒いローブではあるが、叩くたびに体のラインが浮かび上がるので何も持っていないことが分かる。
それを見てハルトは少し顔を逸らして尋ねる。
「じゃあ、ニーラはどこから来たの? 地名とか覚えている範囲でいいから何か話してくれよ」
「んーと、マカドスってところで師匠と二人で暮らしてて、半年前に師匠が置手紙を残していなくなってからは一人で暮らしで。うーん、そこからは北にエドル連山があって夏でも山頂付近に雪が残ってるのが見えるかな。東に行くとミシレイル街道があってずっと先に行くと帝都リアードがあるんだって。私はそこまで行ったことないからあんまり詳しくは知らないけどね。ん? あれ、どうしたの? なんか初めて聞くみたいな顔してるけど」
ニーラは三人の表情を見つめてそう言い放った。
ハルトは頭を抱えながらはぁと小さくため息をついた。そして小さくつぶやいた。
「ダメだ。やっぱりNPCの言うことは理解に苦しむ」
「NPCがプレイヤーに対して有益なものをもたらすとは限らない」とはよく言ったもので、専門用語やら聞いたことのない単語を連発するのはプレイヤー間でお家芸とさえ言われている。それにニーラもばっちり当てはまっていたのだ。
またしても困惑が深まりかけたとき、ナオが咄嗟にこういった。
「あの、私達、探索者であんまりそういうこと詳しくないんですけど良かったらもう少し詳しく教えてくれませんか?」
ナオが言った探索者という肩書きはプレイヤー間で忘れられているものだが、決して間違いではない。なぜなら一応プレイヤーは全てその探索者と言うものにあたり、攻略を進めているという設定があるからだ。しかし、プレイヤーには普通のRPGのように何か倒すべきものや、しなければいけないことなどがあるというわけでない。ただその肩書きがあるだけであり、そういったものは一切示されておらず、現在でもよく分かっていない。一応エリアには文明の残り香といったものが点在しており、情報を集めることはできるため、攻略=探索という図は成り立っているが、あまりにも断片的過ぎるものが多く日本語でもないため理解したくても理解できないのだ。調べている人はいるがごく少数であるため内容が出回ることはあまりないのも探索者という肩書きを忘れさせている原因のひとつだろう。
そのせいか、やはり探索者という自覚はプレイヤーに起きにくく、ナオもなんとか頭の中からひねり出したかのような言いよどみ方だった。
しかし、そんなこととは裏腹にニーラは思いがけないことを口にする。
「え、探索者……。本当に? それって本当なの!?」
探索者という言葉を聞いた途端目つきが変わったニーラに三人はやや驚きつつも首を縦に振る。まさかそこに反応されるとは思っていなかったのだろう。
「私の師匠、カリムは探索者を探しているの。半年前にマカドスから旅立った理由の一つがそれ。詳しいことは書いてなかったけど、とても重要な事だって書いてあった。皆さん何か聞いたことはある? えっと、カリム師匠は短い白髪でしわもあって見た目初老のそれなんだけど、それでもめっちゃくちゃ強いの! 格闘も武器の扱いも魔術も何でもできるすっごい人で多分勝てる人はいないんじゃないかなっていうくらい強いの。私も手合わせしてもらったことが何度もあるけど片膝すら付けさせてもらえなかった……。聞いたこと無い?」
「カリムか……聞いたことないな。おじさんとナオは聞いたことある? そんなスーパーじいちゃん」
「いや、聞いたことないな」
「私も聞いたことがないです。それほど強いNPCがいるなら多分話のの一つや二つくらい聞いたことがあってもおかしくないと思います」
プレイヤーが攻略するエリアのほとんどは打ち捨てられたような場所や荒廃した場所、手付かずの場所だ。文明の残り香はあるものの、生活感というものはとうに消え果ている。そのため、エリアでNPCに会うということは結構珍しいことであり、新しいNPCと遭遇したという情報はあっという間に拡散しやすい。もし、ニーラが言うような師匠という人物であるならばすでに話題に上がっていても不思議ではない。だが、三人は誰もそのカリムと言う人物を知らず、情報すら上がっていない。そしてニーラ自身がハルトの言うようにアクティブNPCだとすると、そのカリムと言う人物もアクティブNPCである可能性が高くなる。
「やっぱり知らないよな。アクティブNPC関連のイベントって分からないこと多すぎてどうすればいいか分からんな」
「イベント……?」
ハルトの発言を聞いて訝しげな表情でニーラは反復するがすぐに何でもないと言われ、疑問の色を残しながらも続けて話し出す。
「そう、やっぱり知らないよね。はぁ、師匠、どこに行ったのかなぁ。さっきも言ったけど私は師匠と二人暮らしなの。だからいつの間にか手紙だけ残していった師匠が心配でね……。師匠はとっても強いから死ぬようなことはないけど変な事に巻き込まれやすい人だから気になって仕方がないの。それにしても、探索者を探すって書いてあったけど、まさか私のほうが先に見つけちゃうなんてね……。せめて連絡が付けば探索者に遭ったってことを言えるのになぁ。そういえば、探索者って言うからには皆さんここを探索してたの? それだったら私は運が良かったよ。丸腰の一人じゃ絶対に助からなかったからね」
そう言いってニーラの視線は三人の装備に移っていく。どう見ても武装している三人がこんなところへ一体何の用事だといった具合だ。特にナオが気になるらしく装備から振るっていたハンマーにまで目を配っていた。
「えっと、『崖の洞窟』って知ってますか? 私達そこからここの『古代遺跡内部』という場所にたどり着いてドーム上の場所まで来ました。そこで隠れていたニーラさんを見つけたんです」
「うーん、分からないや。それにここって古代遺跡だったの? 言われて見れば確かにそんな造りしてるわね」
そういってぐるりと周りを見渡して、ふと彼女は何か思い出したような顔をしたと思ったらみるみる青ざめていった。そして、突然こう言い放った。
「そ、それじゃあ、私そろそろ帰るね! あ、本当はちゃんとお礼をしたいんだけど見ての通り丸腰でたいした物を持ってないの。ごめん。だから、これをあげる。それがあれば私にいつでも連絡が取れるから必要になったら連絡して」
そう言うと彼女は懐から鎖の付いた転移水晶の欠片のようなものを括り付けたペンダントを取り出しハルトに手渡す。
突然帰ると言い出したニーラに三人は少し驚くものの、ニーラの焦るような表情から深追いすることはできず、ペンダントの簡単な説明を話し終えるとニーラは転移水晶のところまで歩き出し、そのまま触れて消えていった。
「なんだか、変わってたな」
「ハルト君が言ったように本当の人間のように振舞ってましたね。今まで見てきたNPCと雰囲気からして全く違ってました」
「なぁ、ハルト。技術の進歩ってすげぇな」
「あぁ、そうだな」
そして、三人の間に少しの沈黙が流れた。ニーラがいなくなったことで今度こそ本当にイベントが終わり、今まで隠れていた疲れが出てきたかのようだった。
「帰るか」
そして、キーンがそうつぶやき、三人は転移水晶へと歩いていった。
拠点の空はすでに夕焼けで真っ赤に染まっていた。人民区にある高さ十五メートルほどの城壁も降り注ぐ西日で明るく照らされており少し眩しさを感じる。ゲーム内の季節だと現在は秋に当たるため、北にそびえたつ西洋風の城の向こうにいわし雲が見えるのはゲームデザイナーの趣向の表れか。
時間は現在午後四時過ぎ。たいていのプレイヤーが帰るには少し早い時間帯だ。帰還ラッシュである五時付近では城壁の転移水晶から大勢のプレイヤーが現れごった返すものだが今はその様子は見られない。
そんな静かな城壁の転移水晶付近からハルト、キーン、ナオの三人は現れた。
「はぁ、やっと拠点に着いた」
「やっと着きましたね」
ハルトは現れるなり顔をクシャリとゆるめて思いっきり背伸びをする。それに釣られるかのようにキーンは肩に手を当て、ナオも胸に両手を持っていきふぅと溜め息をつく。
キーンはメニューを開きデジタル表示の時計に目をやると少し驚いたような素振りをして、それから話し出した。
「マジか。今日は色んなことが起き過ぎたと思ったら、まだ五時になってないのか。ずいぶんと久しぶりに濃密な時間を過ごした気分だ」。
ハルトも同じようにメニューを開き、時間を確認した後キーンの後に続けて言った。
「あぁ、俺も結構久しぶりだった。だけど、もうしばらくこういうのはいいかな。新しいエリア探索ってのは発見と同時に危険も多いし。今回の件はさっさと攻略ギルドに伝えて任せるのがいいかもね」
「そうですね。今日は疲れました。そのせいか、いつもより早くお腹減っちゃいました」
そう言うナオの顔は笑ってはいるが少しぎこちなく見える。
そのとき、キーンは開いていたメニューに突然眉をひそめだし、頭を抱え大袈裟な動きをし始めた。
「あちゃー、鍛冶屋のおっちゃんから飲みの誘いが来てやがる。おっちゃん時間にうるさいから今すぐ行かねぇと。すまんが今からちょっと行って来るわ、攻略ギルドに伝えるのはハルトとナオがやっておいてくれ。酔ってしまうと文章が乱れちまうからな」
そういうとハルトのほうにすっと近寄り「落ち込んでるみたいだからフォローよろしく」とハルトにしか聞こえないように小さな声でつぶやく。
「ちょ、おじさん!」
ハルトがうろたえている間にキーンは拠点転移用の鏡に走り出しそのままどこかへ行ってしまった。
「ハルト君どうしたの? キーンさんから何か言われたの?」
ナオは急にうろたえだしたハルトに向けて不思議そうな顔を向ける。
「あ〜いや、なんでもないよ。それよりも、さっきおじさんが言った通り攻略ギルドに連絡を入れないとね。ナオはこれから時間空いてる? 覚えているうちにサクッとやってしまいたいし」
戸惑いを何とか隠しながらハルトはできる限り自然にナオの予定を聞き出した。キーンからフォローを託されてしまったため、バイバイまた明日というふうにはいかなくなったのに加え、落ち込んでいるという言葉はやはり気になるのだろう。
そんな考えを知らないナオはそのままメニューを開く動作をして予定表を確認する。
「えぇ特に予定はないですよ。じゃあ、どこへ行きましょうか?」
ナオは予定表に一通り目を通した後何もないことを確認してハルトに告げた。几帳面な性格をしている彼女にとって二つ返事は嫌いなのだろう。手馴れた様子だった。
「本当? よかった。なら……ちょーさんのお店に行こうか。あそこなら前に行ったことがあるし、今の時間なら人も少ないからね」
ちょーさんはハルトがこのゲームで知り合ったプレイヤーの一人であり、現在進行形で懇意にしているプレイヤーだ。このゲームでは珍しいことに、自前で古い家屋を改修してそれを料理店として営んでいる変わった人だ。
このゲームには誰のものでもない、朽ち果てたような家屋がたくさん放置されている。そして、それらはプレイヤーが改修を行うことでその家屋の所有権を得ることができるのだが、その改修を行うには相当な量のホロウが必要になる。
ホロウはプレイヤーにとって経験値でもあるが実はお金の一面も併せ持っており、千ホロウで金貨一枚、五百ホロウで銀貨一枚、百ホロウで銅貨一枚と換金することができる。拠点の施設や買い物を行う際はこれらの通貨が必要となっており、プレイヤー間で直接ホロウの取引を行うことはできないためこれらで取引を行っているのだ。一応、貨幣からホロウへの変換もできなくはないのだが変換率はたったの五パーセントと非常に渋い。そのため、最終的にエリアへ赴き稼ぎをしなければならないうえ、レベルアップに装備、宿代、買い物と使いどころが多いホロウをわざわざ家屋の改修に充てるという人はどうしても数が少ないのだ。
一般的に、家屋などを改修する際は複数人が出資をするのだが、驚くべきことに彼は小さい家屋ながらもたった一人で改修してしまったのだ。だが、中には攻略に貢献しない暇人と揶揄する人もおり、あまり良い目を向けられていない現実もある。しかし、稼ぎの大変さを理解しているハルトはちょーさんに一目置いているのである。
「えっと、ちょーさんって確か、色黒でサングラスをかけた坊主頭の優しい人でしたよね」
「そうそう、あそこは俺の行きつけでご飯も食べられるし、ちょーさんもいい人だしちょうどいいかなと思ってね。それじゃ、早速だけど行こうか」
ハルトがそう言うと、二人はキーンが走っていった拠点転移用の鏡へ移動し、そのまま吸い込まれるように鏡の中へ入っていった。
商業区は最も人口密度が高い場所である。ゲームが始まったとき、プレイヤーはこの商業区に最初に降り立つのだからというのもあるが、商業区と名の付くように、ここは一番流通が盛んだ。エリア攻略に装備を整えるのも、買い物するのも、食事するのも、寝るのも基本的に商業区にいれば不自由することはない。景観も比較的まともであり、道も舗装されているため自然と商業区にいる時間は長くなってしまう。だが、どれも利用するためにはそれなりの対価を支払う必要があり装備を購入・修理したり、レベルアップをして所持懐が寂しかったりすると少し居辛くなるだろう。
しかし、ちょーさんが店を構える場所は誰もが目に付くような大通りにはない。商業区でも人民区に近い場所にある小さな路地の一角にそれはある。知る人ぞ知る穴場といえば聞こえは良いかもしれないが、実際は人目が付かないそんな場所にあるのだ。店の名前は「お食事処ちょーさん」とまるでひねりがない名前だ。それでも現実では小料理店を営んでいるらしく味は確かである。
そこへ若い男女が歩いてくる。ハルトとナオだ。拠点転移用の鏡から少し離れているためここまでは歩いてこなければならない。ハルトは慣れたような足取りだがナオのほうは周りを眺めるようにしてハルトの少しだけ後ろを歩いている。
コツコツと二人分の足音が路地に響く。そして、二人が掲げられている暖簾をくぐると店の奥から声が聞こえてきた。
「おぉ、ハルト君、いらっしゃい、いつもありがとな。後ろの人は……ナオさんだったかな。前にうちに来たことあったよね。覚えているよ」
ちょーさんはそう言うとナオに向けてにっこりと笑顔を見せる。ナオもそれを見て軽く会釈を返した。
「どうも、ちょーさん。早速で悪いですけど、奥の席使わせてもらいますね」
ハルトはそう言って縦長に伸びた店内の奥にあるテーブル席を指差す。この店はカウンター席が五つに加えて、一番奥にぽつんと一つだけ四人用のテーブル席があるのだ。
「はいはい。ところで今日は早いけど何かあったのかい?」
何かと勘が良いちょーさんにハルトは今日の出来事を話しかけるが、話すと長くなると察してか言い方を変えた。
「あーいや、ちょっと攻略ギルドに伝えたいことがあって、それをナオと二人でまとめるところなんです。おじ……キーンは鍛冶屋のおっちゃんと飲みにいくってこっちに丸投げしてきたんですよね」
「ほほう、そうか、ということは攻略で何か見つけたんだ。なるほどな。じゃあ、注文決まったら俺を呼んでくれ」
ちょーさんは深追いすることはせずそのまま厨房のほうへ向かっていった。振り返ったその顔はとても微笑ましいものを見たといった感じであるのだが、後ろを向いているため誰も気が付かない。
二人は入り口で突っ立っていても仕方ないので、そのまま奥のテーブル席へと向かった。入り口を背にしてハルトが座り、向かいにナオが座った。時間的にまだ夕食の時間ではないがナオが先ほど言っていたお腹が減っているということは本当だったようで、お冷が来る前にメニュー表からすでに注文するものを選び終えており、もう夕食を済ませるといった量を頼んでいる。ハルトはメニューを知っているのか特に選ぶといったことはせず、軽いものを一つといった感じだ。
料理が運ばれ、二人は頂きますと言って食事を始め出した。そして、ある程度食事が進んだところでハルトは口を開いた。
「今日は大変だったな。新しいエリアに新しいNPC。いろんなことが目白押しだった。俺は、なんか、こう、ゲームの最初期を思い出したよ。新たな道を開いていくって感じがしたからね。そういった意味で今日は有意義だったよ」
ナオはゆっくりと箸を茶碗の上に置いた。カチャという音が小さく響く。
「あの、今日は足手まといになってごめんなさい。運良く助かったとはいえ、この調子じゃダメですね。私があんなことにならなければここまで苦労しなかったのに」
「弓の件は、ナオは何も悪くないよ。俺がもっと念入りに調べておけばあんなことにはならなかったし、狙われていた俺が少しでもモーションを遅らせていれば落ちることも新しいエリアを発見することも無かったんだから。落ち度は完全に俺にあるよ」
「仮にそうだったとしても、転移水晶まで行こうって提案したのは私です。凄く後悔してます」
いつも伏し目がちな彼女の視線は更に下へと向いている。そして、小さな間を空けてから続けた。
「……実は以前、私が組んでいたパーティーが壊滅したことがあるんです。そのときも今回のように私が提案したことが原因だったんです。私は目の前で二人が塩と灰の姿に変わっていくのを逃げる際に見てしまいました。だから、もう二度とこんなことをしないように努力すると、そう決めたはずなのに……繰り返してしまいそうになったんです」
ハルトは黙ったまま俯いているナオを見つめている。
「私は今のパーティーが好きです。だから、ハルト君やキーンさんにいなくなって欲しくないですし、これからも脳筋としてやっていきたいと思っています。だけど、今日みたいなことをまたやってしまったらと考えると、私、体が震えてくるんです」
ハルトはテーブルに置いてあるお冷に目を向ける。水面には小さく波紋が広がっていた。
「悪いこと思い出させちゃったな。ごめん」
ハルトはすぐに謝る。だが、すぐに言い放った。
「でも、ナオは凄いよ。自分のことより人のことをよく考えてる。他者のために自分が努力をするってのは簡単にできるものじゃない。ナオはただ、ちょっといろんなものを背負い過ぎているんじゃないかな。こういっちゃなんだけど、もっと自分のことを考えてくれないか。体が震えるって聞くと流石に俺も黙っちゃいられない。だから、俺やキーンをもっと頼ってくれ。自分を大切にしてくれ。ナオが言ったように俺もこのパーティーが好きだ。だからこそメンバーのことには真摯に向き合いたいんだ。それに、甘く見てたのは俺もだ。普通のエリアには見られないギミックがあそこにはあった。ボス仕様に帰還石使用不可、加えて最前線でしか確認されていない敵の大量出現。『崖の洞窟』の攻略難易度を考えるとありえないものばかりだったけど、新しいエリアなんだからもう少し慎重になるべきだったんだ。はぁ、俺のゲーマー心もしばらくは封印安定だな。……えっと、つまり、ナオは何も悪くないってこと」
ハルトはにっこり笑いながらナオをまっすぐ見る。
「だから、明日にでもおじさんに謝りに行こう。とばっちりを一番受けたのはおじさんだからね」
それに、とハルトは続ける。
「運が良くても、俺たちは生きて帰って来られたんだからそれは素直に喜ぼう。『生きて情報を持ち帰れ』って言葉の通り、俺たちが経験して持ち帰ったこの情報は必ずどこかで活かされるんだ。そう思えば少しは気が楽になると思うよ」
それらしいことを言えたからかハルトは少し鼻が上を向いている。それと同時に顔も少し赤くなっており照れていることが窺える。だが、握り締めたままの両手は開かなかった。
ナオもハルトの話にしっかりと耳を傾けていたようで、先ほどと変わらず下を向いているもののその顔は落ち込んだ様子で無く震えも止まっていた。そして、顔を上げ話し出した。
「ハルト君の言いたいことよく分かりました。じゃあ、キーンさんに謝りに行くのに付き合ってくれますか?」
「もちろん」
ハルトの返事を聞くと、硬かったナオの表情はずいぶんと和らいだようだった。残りのおかずに手を出し始めている。
ハルトは上手くいったことに安堵した様子を見せ、水滴が付いたお冷を手に取り一気に飲み干した。
食事を終えると早速二人は攻略ギルドに伝えるメールの文面を作り始めた。ナオに嫌なことをまた思い出させるためハルトはあまり気乗りしているようではなかったが、ナオとしてはこのことに踏ん切りをつけたいらしく自らしましょうと言っていた。こう言われるとハルトは無理に止めさせることができなかった。
そうこうして時間を過ごしていると誰かが店に入ってきた。しかし、作業している二人は気づいていない。長身でやや長い金髪を後ろに伸ばし、すらっとした目を持つ男はカウンター席を通り過ぎてそのまま一直線に奥のテーブル席へと向かうと突然ハルトの首に腕を回しヘッドロックを仕掛けたのだった。
「よぉハルト、ずいぶんといい御身分じゃないか。俺たちが交わした協定はどうなったんだよ」
まるで般若のような形相をした男はドスを利かせた低い声で更に腕に力をこめているようでミシミシという音が聞こえてくる。
ハルトは作業中に突然首を絞められたことでふぐぅという声を上げ、ばたついている。だが、すぐに立ち直って男の腕をむんずと掴むと引き剥がしに掛かる。すると、ぐぐぐっと少しずつ男の腕がハルトの腕からはがれていった。そして、男の腕から完全に脱出するとハルトは後ろを振り返った。
「ちょ、いきなりヘッドロックとか、やめて下さいよミョルさん! ってか協定って何ですか! 初めて聞きましたよ」
だが、ミョルは何事も無かったかのように頭の後ろで両手を組みながら悪態をつく。
「あぁあ、また逃げられたか。脳筋の腕力にはまだかなわねぇか。お前、どんだけ筋力にポイント振ってんだよ」
「そうじゃなくて、会うたびにヘッドロックとか心臓に悪いですって!」
「挨拶代わりだよ、どうせダメージ受けないしさ、そう気にするな」
拠点にいる間は基本的にどんな事をしてもダメージを受けることは無い。今回のようにヘッドロックをしても窒息することはないし、高いところから飛び降りてもエリアとは違い落下死することも無い。だが、そうはいっても当然衝撃などや浮遊感は受けるため、あまり好まれなかったりする。高所恐怖症の人を高いところから突き落としてそのまま失神させたという話もあるくらいだ。
ハルトは頭に手を当てため息をついている。さっきの様子から会うたびにヘッドロックを受けているようでかなり辟易しているようだ。
「あの、そちらの方は?」
完全に蚊帳の外状態であったナオがハルトに尋ねる。
「あぁ、そういえば会うのは初めてだったっけ。この人はミョルさんで俺が前に組んでたパーティーメンバーの一人だよ」
「どうも、ミョルって言います! ハルトとは初期の頃からパーティー組んでて、いまでも素材集めとか稼ぎのときに組んだりするので良かったら声掛けてくれると嬉しいっす! あ、フレンドコードはこれっす。何かあったらいつでもどうぞ!」
ハルトとはあからさまに違う態度でミョルはハルトの前に出てナオに自己紹介をする。その様子はまるで入社したての新入社員が先輩に挨拶をしているようだった。しかし、見た目では年の差は歴然でミョルのほうが年上である。
「は、はい、私はナオです。よろしくお願いしますね。じゃあ、私もどうぞ」
迫るような勢いのミョルに対してどう返してよいのか分からないナオは取り合えずといった感じで微笑みながら挨拶とフレンドコードを返す。
その挨拶を聞いたミョルは一瞬呆けた様子を見せたかと思うと突然くるりと後ろへ振り返り、ハルトに向かってちょっと来いと言った。二人はナオから少し離れ、カウンター席まで行くとミョルが小さな声でハルトに尋ねた。
「おいハルト、何で男の協定を破った。そして、あの娘とはどこで知り合った?」
「いやいや、そもそも協定って何ですか! そんなの結んだ記憶ないですよ」
「うるせぇ! 最前線じゃまともに出会いなんかねぇんだよ! こっちの身にもなりやがれ!」
「いやいや、いっぱいるじゃないですか! カミラさんとかミミドさんとか」
「あんな戦闘狂は女とは言わん! 俺は慎ましい女性が好きなんだ。そんなことより、ハルトが狙ってないなら俺が――」
「ちょ、声が大きいですって!」
ミョルはずいぶんと興奮しているようで次第に声が大きくなり店内に声が響き始めていた。ナオに聞こえるとまずいためハルトは強引に話を変えた。
「そんなことより、なんでこんな時間にこんなところにいるんですか? 攻略ギルドの人たちはまだ攻略してる時間帯じゃないんですか?」
「あぁ、そういや、ちょーさんと会う約束してたんだった。偶然お前がいたからついついちょっかいかけてしまった。それに、今日は攻略の区切りが良くてな、かなり早めに戻ってきたんだよ。ってか、お前達もこんなとこでこんな時間に何してんだよ」
ミョルもハルトとナオがこの時間にここにいるのに疑問を呈す。夕食の時間にはまだ早すぎるからだ。
しかし、ハルトは先ほどちょーさんから同じようなことを聞かれていたためよどみなく返事をする。
「ちょっと攻略で新しい発見があって、それを攻略ギルドに伝えるためにここで作業してるんですよ。こう言っちゃ何ですけど、ここは人が少ないのでやりやすいかなって」
「まぁ、確かにここなら人目を気にしなくていいからな……ん? おま――」
「ミョルさんはちょーさんに会うんでしょ! ちょーさんは厨房にいるから!」
ミョルは何か気が付いたような素振りを見せるが、ハルトは鬱陶しいのかミョルの話を聞かず途中に割り込む。出鼻を挫かれたミョルは「お、おう」と言って納得の行かない様子で厨房のほうへと歩いていった。
「ごめん、急にあっち行っちゃって。でも、さっきフレンドコード渡してたけど良かったの?」
「もちろん知らない人なら渡しませんよ。でも、ハルト君の知り合いですし、いい人だったので渡しても良いかなって思ったんです」
「まぁ、確かにミョルさんは悪い人じゃないし、かなり強いし、信頼は持てるかな」
「それなら大丈夫ですね。あの、ミョルさんは最前線メンバーなんですか? さっきの会話が聞こえてしまったんですけど、ミョルって名前初めて聞きましたよ」
ナオは先ほどハルトたちが話していた言葉が聞こえていたらしく、申し訳ないのと疑問の表情を浮かべる。
「あぁ、それはミョルが本当のプレイヤーネームだからね。普段はキリクって名前で潜ってるんだけど聞いたことない?」
「え? えーーっ!! あの片手剣なら現状で右に出るものがいないって言われているあのキリクさんですか!?」
これには普段驚きを見せないナオも声を荒げ驚愕といった様子だ。
「そう、あのキリクだよ。本人曰く本当の名前と偽名はギャップがあったほうがかっこいいとか言ってたけどね」
どの世界でもある程度有名人になればその人物に付きまとう者が出てくる。このゲームでもそれはあるようで、最前線を攻略している者、いわゆるトッププレイヤーにはそれは多くの人が集う。自分達のパーティーに入って欲しい者、アイドルのようにただ眺めるだけの者、いろいろ教えてもらいたい者、良からぬことを企む者と多種多様だ。しかし、彼らも人間であるため四六時中付きまとわれるわけにはいかない。そのため、最前線に近づけば近づくほどプレイヤーネームを偽装している人が多くなるのだ。そして、キリクもそのうちの一人であるのだ。
「そ、そうだったんですか……。まさか、そんな有名人だったなんて」
ナオはメニューを開き、先ほど送られてきたフレンドコードに付随されているミョルの顔写真と3Dアバターをまじまじと眺める。
「最前線のプレイヤーは頭装備のグラフィック表示をオンにしているのが多いから、気が付かなくても仕方ないよ。えっと、一応だけど、この話はあんまり言いふらしちゃだめだよ、迷惑掛かるからね」
「は、はい。分かりました」
凄く残念そうな顔をしているあたり、ナオはいい話の種だと思っていたのだろう。それができないとなればそういった表情を浮かべても仕方ないかもしれない。
「それじゃ、続きをやろうか」
攻略ギルドに伝えるべき内容を書き終える頃にはすでに暗くなり始めており、時間も午後七時になろうかといったところだ。店内にも客が入り始めており、カウンター席は埋まりつつあった。
「それじゃ、送信するよ」
「やっと終わりましたね」
「どたばたし過ぎてたからスクリーンショット撮れなかったのが辛かったな〜。撮ってればわざわざここまで書く必要なかったんだけどね」
「私も頭からすっかり抜け落ちてました」
するとハルトは両腕を頭上に持ち上げ背伸びをする。大分根を詰めていたかのようだ。そしてその体勢でナオに問いかける。
「今日は俺が奢るからまだ食べたいものがあったら頼んで良いよ」
「い、いえ、大丈夫です。もう十分食べましたから」
そういう通りナオの目の前にはハルトより多くの皿がある。
「じゃ、そろそろ出ようか。お店も大分込んできたみたいだからね」
ハルトは背伸びし終え、そう言うとナオもそれに従って席を立つ。そして、お会計を済ませてから外へと出た。
夕方の雰囲気と打って変わって、小さな路地にあるここにも騒がしい声が聞こえてくる。街灯は無いものの空に浮かぶ二つの大きな月が柔らかな光を放っているため周囲はそれほど暗くは無い。
「今日はお気遣いありがとうございました。おかげで、なんとかやっていけそうです」
少し遅れて出てきたナオがハルトの横に立って告げる。ナオの顔はその言葉通り少し吹っ切れているように窺える。
「どういたしまして。何かあったらまた相談に乗るから遠慮なく言ってくれ。それじゃ、とりあえず鏡まで行こうか」
ハルトがそういって二人は歩き出したのだった。
更新は結構遅れます。とりあえず今月中には何とか




