遅刻魔の笑い声は高らかに
前回長いと感じたので、短くしてみました(OvO)
遅刻しそうである。
今日遅刻したら三日連続の遅刻となり、担任の陽子ちゃんが黙ってないだろう。鉄拳制裁の可能性もあり得る。
もちろん殴られたくない。親父に殴られたことは一度もない。クラスの連中にはよく肩パンされるけども。唐突の肩パンはかなり頭に来る。笑っているかもしれないが、この笑顔が消えた瞬間が君の最期だと思いたまえ、若山くん。
教師陣の間では「遅刻のエース」「重役出勤の鑑」と囁かれている小、中学校と七年間野球部でベンチ張ってたどうも俺です。最初の方は二つ名かっこいい! とか思っていたけれど、ただの蔑称ですやん。
などと益体もないことを考えていたら、信号が青になったので、再びこぎ始める。
ここで残り時間の確認をしよう。デッドラインまで俺の時計で残り5分と32秒。ギリギリ間に合うか間に合わないか、そんな感じ。
うちの学校では、8時のチャイムが鳴ると同時に、担当の先生が昇降口を閉めに来る。それがデッドライン。チャイムが鳴っても担当の先生が扉を閉める前に駆け込めばセーフとみなされる。
間に合わなかった場合は、職員玄関から入り担任の先生が朝の職員会議が終わって出てくるまで職員室前で立って待機という形だ。鉄拳制裁を行われるとすれば、職員会議が終わった後というわけだ。
もちろん私はこの勝負に勝つつもりでいる。三度目の正直。一昨日と昨日は、あと数秒というところで扉が閉ざされてしまった。
今日は金曜。扉を閉めに来るのは、扉の三大守護神の一人、数学のゴトウだ。はっきり言ってやばい。守護神の一人、国語のミヤモトは、チャイムが鳴っても走って駆け込もうとする生徒を待っててくれたりする甘さを兼ね備えているが、ゴトウは無慈悲だ。
奴は、例え生徒が鼻水を垂らしながら、間に合おうとする姿を見ても一切ためらわない。最近では、チャイムが鳴る前から動き始めるという奇行に走ったりしている。寧ろ閉ざされた扉の前で立ち尽くす敗者を見てほくそ笑んでいるに違いない。その姿を形容するなら、まさに悪魔。ゴトウが担当する火曜と金曜は涙を流す遅刻常習犯が後を絶たない。
これは聖戦だ。奴が勝つか、俺が勝つか。悪魔が勝つか、人類が勝つか。そういう戦いなのだ。俺は、遅刻魔の代表として、人類の代表として、負けるわけにはいかない…!
学校のすぐそばの信号に足止めをくらって、再び腕時計に目をやる。残り1分48秒。俺はニヤリと笑った。俺の勝ちだ。ここまでくれば、余裕で間に合うだろう。ゴトウの悔しがる顔が頭に浮かんで、思わずウヒャウヒャ笑ってしまった。
横にいた自転車に乗った女の子が、その様子を見ていたのか、ドン引きしていた。
「…気持ち悪」
朝っぱらから気持ち悪いいただきました。ありがとうございます。誰かと思ったら、白織だった。




